Dota2 @ 2021-01-17


以下蛇足

独身貴族のおっさんが拗らせる趣味の代表格は数多いが、その中の1つに料理が挙げられることには各自異論はないと思う。無論、私も料理を趣味としている。食うのも飲むのも好きであるが、自ら作るのも大好きだ。しかし何より最も愛しているのが、料理の薀蓄を見ることである。

例えばウィキペディアでビールの歴史を調べながらギネスを開けるのも楽しいし、日本酒を買ってきたら栓を開けるより先に酒蔵のホームページを調べるといった有様だ。ここ一年はディスカバリーチャンネルの有料放送に申し込んで海外の料理番組などを片っ端から眺めて楽しんでいたのであるが、残念ながらこのディスカバリーチャンネルの有料放送サービスが今年の1月で廃止になってしまい、後継の新たなサブスクリプションサービスは米国限定で日本からは申し込めなくなってしまった。おかげで今年に入ってから私の料理薀蓄欲がとんと満たされないままであった。

そんなある日に偶然見つけたのが以下のウェブサイトである。

青天の霹靂であった。まさに私にとっての桃源郷そのものがウェブサイトの姿かたちに顕現したような、そういう存在とでも言おうか。記事の内容も、テーマも、文章力も、考察も、参照する資料も、何もかもが桁違いであり、読めば読むほど引き込まれる。私もこのウェブサイトに感銘を受け、ますます日々の料理に手間暇試行錯誤をかけるようになったのである。これがとにかく楽しい。歳を重ねると身体衰え何を試すのも億劫になり面倒になり過去の自分が見つけた最適解を繰り返すだけの存在になりがちなので、このような新しく挑戦してみたいと思わせてくれる体験は無常の喜びである。


さて、長々と料理の話を書いてきたのだが、それと本記事のタイトルに挙げたDota2に何のつながりがあるのだろうか、と言う話になる。それはDota2がプレイすればプレイするほど新たに手間暇試行錯誤を挑戦したいと思わせてくれるゲームである、と私が考えているからである。

Dota2をプレイするたびに思うのであるが、LoLは浅いのである。

浅いなどというとLoLを楽しんでいる全世界のプレイヤーを敵に回すことになるかもしれないのだが、しかしこれは間違いのない事実だ。LoLは個人にできるスーパープレイの上限が非常に低いのである。LoLにできるOutplayの範疇などせいぜいがFlashまでだ。チャンプ同士の相性も固定的で何をどうやっても覆せない。

代わりに、LoLはチームで連携することに重きを置いているといえるのだが、私のような野良でソロプレイする人間にとって、チームで連携を取ることに重きを置いているようなゲームバランスなどというのは苦痛以外の何物でもない。自分がどれほど努力しようが他のレーンがしくじったら負ける。ジャングラーが寄り付かなければ負ける。ADCが育たなければ負ける。敵のMidレーンが勝ちまくったら負ける。プッシュするべき場面でプッシュしないチームメイトしか居なければ負ける。LoLの体験はこのようなものである。どれだけ自らが最善を尽くそうが、味方がカスなら終わる。みなさまもそのような経験が無いだろうか。

ところがDotaは随分と話が異なる。もちろんHero同士の相性もある。正面が相性の悪い組み合わせなら一方的にやられることになる。しかしDotaにおいては、相性の悪さを簡単にひっくり返せるほど凶悪なアイテムの数々やスキルの数々が用意されているという点が大いに異なる。射程1200から一瞬でワープできるブリンクダガーは言うに及ばないし、2.5秒間相手を宙に打ち上げたり、自分自身が2.5秒間無敵になることもできれば、通常攻撃を一切受け付けない状態になることも、逆に魔法攻撃をほぼ全て無効化、シャットアウトすることもできる。どれほど凶悪に育ったキャリーでも視界の外から一瞬で飛び込んできてスタンロックされてしまえば何も出来ずに死ぬしか無いし、逆にそのようなスタンロックに対処するアイテムも用意されており、HPが25%まで減ると数秒間完全無敵になりハメ殺しができないようになる。誰でも簡単に視界に映らないよう透明化することもできるし、逆にいつでも透明状態の相手を見られるようにするアイテムもある。あらゆる場面のどのような的に対してもカウンターするアイテムが用意されており、更にはそのように凶悪なアイテムに対してもそれまたカウンターが用意されているのである。そのため相性はたしかにあるが、相性が悪いからといって何も出来ず味方に任せるしか無い、といった事態はLoLより圧倒的に少ない。

つまり、Dotaにおいては、味方がカスだから自分には何も出来ない、などという無力感が非常に少ないのである。もちろん味方がカスで負けることはあるが、LoLより圧倒的にマシである。特に私が遊んでいるTurboモードは一瞬でカネと経験値が貯まるためよほど彼我の差がない限りは完封されて何も出来ないなどということはない。自らの努力次第でいくらでも事態は改善されるのである。LoLにおいては似たようなモードであるARAMでもURFでもそのようなことは発生しない。貴方がADCなら、ADCにできる範囲のことしか出来ない。貴方がタンクなら、たとえ何をしようが敵のタンクを一瞬で溶かすことはできない。

Dotaはアイテムビルドの試行錯誤の幅も広い。LoLはサポートがどれほどADCの装備を持とうがADCには到底かなわないのであるが、Dotaはサポートヒーロであったとしてもキャリー装備をすれば(もちろん純粋なキャリーには敵わないのだが)キャリーに匹敵する戦闘力を発揮できる。例えば攻撃速度を上げたい場合でも、相手の回避を貫通するべくMKBを持つ場合もあれば、自分の生存性を高めるべくButterflyを持つこともあり、Bloodthornでバーストダメージを狙うこともあれば、ライフスティールを行いつつ一時的な超強化で相手を圧倒するタイプならMask of Madness、ファームに使うならMjollnirだし、もちろんタンク寄りのキャリーならAssalt Cuirassという手もある。これだけ持っておけば良い、と言う選択肢はなく、同じヒーローでも対面の構成に合わせてほぼ毎回ビルドを変更して適応していかなければならないのである。対するLoLはどうだろうか、自らがADCであって、相手の対面に合わせてZeal派生アイテムの種類を変える場面なんて何回あるだろうか。ほぼ無いと断言していいだろう。プロの試合ですらしない。

随分と力説してしまったが、こういうところが料理に通じるところである。料理も同じだ。可能性は無限大であり、1つのビルド=調理法だけ繰り返せば良いというものはなく、その場の状況=冷蔵庫の中身だとか財布の中身だとかスーパーに売っている食品だとかに合わせて臨機応変に対応しなければならない。何より自らの研鑽の成果が目に見えて現れ、他の誰のせいにもできない、それこそが料理の面白いところであり、転じて私がDotaを愛しているところであると言える。


以下蛇足の蛇足

以上のように私はDota2をLoLよりも好んでいるのであるが、しかし意外なことに私は他人にDota2を一緒にプレイしようと積極的に勧めることはほぼ無い。

理由は2つある。ひとつ、異常にとっつきにくい。ふたつ、マッチングが壊れている。

異常にとっつきにくいというのはDota2の奥の深さの裏返しでもあると思うのだが、それにしてもはっきり言って狂っている。たとえばゲームメカニクスをまとめたWikiページですら、なんとこの大ボリュームである。

しかもここに書いてある内容の半分程度は覚えないと全く戦場に出られないも同然である。LoLだって深いメカニクスは多数あるだろうが、Dotaの場合その中でも必須とされるものがあまりにも多すぎるのである。Denyすら知らないと何が起きているのかさっぱりわからないまま相手に一方的に経験値を吸われてしまってイラつくばっかりである。

あまりにもとっつきが悪いため、初心者はまず勝てない。勝つどころかマトモに楽しむことすら出来ないだろう。100戦程度してようやく取っ掛かりが見えてくるであろうレベルであり、それまでひたすら相手に何をされているのか理解すら出来ず延々とボコられるクソ体験を経なければならない。こんなゲームが流行るのはロシアと中国ぐらいなものである。

2つ目の壊れたマッチングであるが、まぁ散々私が声を大にして述べているものだ。先日も突然何の前触れもなしに全くゲームに接続できなくなった。マッチングはするのだが、試合が始まらないのである。Dota2を再起動してもダメで、Steamを再起動したら動作するようになった点を見るにSteamのネットワークまたは認証またはVACが壊れているのではないかと勝手に推測しているが、まぁとにかくネットワーク周りに関してみるとLoLの圧勝である。しかも対戦相手が少ないためマッチングにかかる時間が長いのだ。

更にもう一つ付け加えるなら、LoLに比べればDota2は味方依存度が低いという話はしたが、それでも相手のサポートがきちんとStackingを行いワードを撒きジャングル管理をするような良サポで、一方此方のサポートが不必要にレーンでキャリーの経験値を吸い取ってしまう(必要性もないのにレーンに近寄っている)ようなアホでは、何をどう頑張っても此方のキャリーは稼ぎ負けることになるだろう。