Mashinky @ 2020-01-21

【秀】近年発売されたTransport Tycoon系ゲームの中で最もゲームとして面白い作品と言っても過言ではないだろう。操作性のよい2Dクオータービュー的な建設モードと、リアルで鉄道模型的に見ていて楽しい3Dビューモードを切り替えられる点や、現金以外の資材を使う必要があるトークン型経済システムといったユニークな要素が最高に楽しませてくれる。またEA開始時から休むことなくアップデートが続いている精力的な点も見逃せない。この調子で行けばきちんと正式リリースまでこぎ着けてくれるだろう。

長所
・鉄道模型を眺めるように楽しむための3Dモードと、線路を配置するのに便利な2Dモードを自在に切り替えられるゲームシステム。3Dだと線路の配置が面倒で、2Dだとグラフィックに問題があり全方位から見られないという2つの問題を同時に解決する画期的なシステムだと思う。
・完全にユニークな経済システム。最大の特徴が資金だけではなく木材、石炭などの資材もトークンいう形でゲーム内に登場する点だ。例えば一部の列車は資金ではなく木材がないと生産できない。性能の高い蒸気機関車はアップキープコストとして資金ではなく石炭を消費するため、石炭を生産できていなければ運行が停止してしまう。つまり全ての産業をきちんと網羅しなければゲームそのものが成り行かないようになっており、ちょっとお金を稼ぐドル箱路線が完成したらそれをメンテするだけになってしまう一般的な資金オンリーの経済システムとは完全に一線を画している。最初から最後までチャレンジ続きでずっと楽しめるというわけだ。
・さらに「時代進化」の概念がある。このゲームは時代が5Tierに分かれており (最初は2Tierしかなかった、最終的に7Tierになる予定) それぞれのTierごとに新たな産業と新たな資源トークンがマップ上に登場する。Tierを進化させるたびに新たな挑戦が生まれ続けるため最初から最後まで飽きることが一切ない。
・駅や生産施設の拡張システムが最高に優れている。資金や木材、石炭などの資材トークンを消費して、駅や生産施設に拡張建物を配置することができる。例えば木材生産施設であれば木の生産ペースを上げてみたり、木炭を同時に生産できるようにしてみたり、製材所であれば石炭を消費することで更に製材の生産効率を高めたり、逆に木を売って資金トークンに変える設備を置いてみたりと、縦横無尽にカスタマイズが可能。
・非常に初心者に優しいUIと操作性。線路の配置も2Dベースで簡単、信号の配置も面倒なChain Signalだのなんだのを自動的に判断していいようにやってくれるモードがデフォルトで有効になっており、嫌なら設定からオフにしてハードコアに楽しむことができる。
・最近鉄道だけではなく車両も追加され、更に遊びの幅が広がった。将来的には船舶と飛行機も追加予定があるらしい。
・車両の運転席に乗り込むカメラモードも存在しており、鉄道模型を楽しむみたいに車窓の景色をのんびり楽しむこともできる。将来的には自分で運転するモードすら作る予定らしい。
・8人でのマルチプレイヤーも将来のロードマップに入っている。ここまでのところ1年間確実にロードマップを遵守しているため、これも期待できる。
・当然のようにSteam Workshopに対応しており、他人が作ったブループリントや列車、マップやModを取り込むことが出来、無限に遊べる。もちろん新幹線だってあるぞ。

短所
・グラフィックに関しては所詮個人が一人で開発しているレベルである。見られない次元ではないが、最高に美しいわけではまったくない。
・線路や建築物の配置は2Dクオータービューに準じており、細かいカーブや線形にこだわることはできない。配置は簡単だがその分底が浅いとも言える。
・資金トークンが稼ぎやすすぎるため、地形の起伏を簡単に平らにできるし、橋をかけるのもたやすく、トンネルも簡単。資金の厳しい中、険しい地形の合間を線形を崩さないように可能な限り安価に線路を引いて最速で輸送するというような楽しみは一切得られない。
・旅客輸送についても高速到達ボーナスのようなものが見受けられず、ただの貨物扱いであり、また旅客に目的地の概念も現状ないので需要があればどこの街でも問題ない。特急を通す意味すら無い。旅客については簡単すぎてリアリティの面から見ても満足できない人が多いかもしれない。
・資金以外の資源が非常に重要になるため、木・石炭・鉄・石油・鋼といった、すべての産業に絶対に手を出さないとならない。マップを眺めて儲かりそうな産業を進める、というような楽しみは一切ない。すべて、やることになる。そこが非常に良い点でもあり、人によっては最悪な点にもなりうる。

このゲームを調べても、日本語どころか英語圏でも情報が殆どないのが全く残念でならない。これほど楽しめ、しかも進化を続けているTransport Tycoon系のゲームは他にまったくない。おまけにSteam Workshopに対応していて、日本語化さえされている。これで鉄オタ大国の日本で流行らない理由がないだろう。私も微力ながらこの隠れた名作を激推しさせていただきたい。

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これが一番小さい128x128マップの広さだ。これでも十分に広いが、最大で512x512までサポートする。個人的には狭いほうがこのゲームらしいプレイが楽しめると思う。

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3Dモードではこれぐらいの車窓を楽しめる。上質とはけして言えないが、見てがっかりするほどでもない。強いて文句があるとすれば風景が東欧っぽい (実際東欧の人間が作っているので東欧である) ためやや我々には馴染みが薄い点であろうか。

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2Dの建設モードではこんな感じで、私はこのゲームの殆どの時間をこのモードで過ごしている。列車のステータスも細かく、機関車の重量制限やプラットフォームの長さの制限を考えて編成を組む必要が出てくるだろう。編成のスケジューリングについてはもちろん一般的な鉄道ゲームらしくきちんと自分で組んでもいいのだが、本ゲームの編成は極めて賢く、適当に編成を作って自動でそのまま走らせればなんとなくいい感じに駅間を動き回って貨物を運んでくれるのだ。最初は十分これで通用するため非常に楽ちんである。もちろん時間が経過して線路が複雑になり列車の数も増えてくると不満が出てくるので手動に切り替えてマネジメントしていく必要が出てきて面白い。

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これが目玉の一つのExtension機能だ。工場や駅、資源置き場など、あらゆるマップ上のオブジェクトにExtensionが用意されている。こちらのスクショは製材所であるが、Employee Quartersを購入すれば丸太から材木への変換効率が改善できるし、Toyshopを導入すれば丸太が材木ではなく資金に変換されるようになる。こうして自分好みの工場をデザインしていくことができるというわけだ。一箇所にアップグレードを集約したほうが当然資源効率は良いが、その分一箇所に資源を集中させる必要があるため駅や線路があっという間に混雑してダイヤが複雑になってしまう。分散させると効率が下がる。このあたりのさじ加減が非常に難しくて本ゲームの面白さのキモになっていると思う。