Outer Wilds - 本当のレビュー @ 2020-06-03


以下蛇足

まず最初に、この記事にたどり着いてしまったあなたへ警告だ。もしあなたが本作Outer Wildsをプレイしていないのであれば、またはプレイはしたものの自力でエンディングにまでたどり着いていないのであれば、今すぐブラウザのタブを閉じてほしい。それか、もしOuter Wildsに本当に興味があるなら以下の記事に遷移して読んでもらってもいい。

上記の内容までであれば安心して読むことができる。その後、万一気が向いたのであれば本作を買ってみて、自分で最後まで結末を見届けることができるだろう。もし最後までたどり着けたのであれば素晴らしい体験ができると思う。

しかし、そのためにはそれなりに苦痛を乗り越えなければならない。それだけは先に言っておく。本作は金出してガチャ回して人権キャラを引いてひたすら周回を繰り返せば誰でもいい気持ちになれるゲームではない。本作は何万発打たれても死ななくなるイージーモードなど存在しないし、誰がプレイしても無双できたり楽しくクリアできたりするゲームでもない。途中にそれなりの苦痛が待ち構えているし、それなりに頑張って考える必要があり、それなりに理不尽極まりない展開に耐える必要もある。しかしそれらを乗り越えられたのであれば、まぁ、なかなかいい気分にはなれるゲームだと思う。おすすめできる。私から言えるのはそんなところだろうか。

さて帰った帰った。



・・・



以下蛇足の蛇足

あなたはまだ残っているのか。

そもそも私はここで何をしているのかという話だ。簡単だ。自慰行為だ。

本作をクリアしてやることもなくなったし、また明日からGTA Vの続きでもプレイするわけだが、その前にムラムラしてるので一発気持ちよくありのままのすべてを吐き出してやろうというわけだ。

要するにネタバレだ。私の体験のすべての。


これは強烈だ。もし本作をクリアする前に見てしまったら、あなたは二度と本作を楽しむことができなくなる。ある意味人生・・・というか人生の一部・・・を奪うのに等しい行為だ。そもそもおっさんのオナニーなんか見て楽しいやつが居るわけがない。なのでできる限り誰も見ないことが望ましい。しかし一方でこんな誰でも見れるところでオナニーしているから気持ちいいんだという露出狂的な楽しみもあるし、本作をプレイしたい人の人生の一部を破壊して気持ちよくなりたいという歪んだ性癖もある。全く私はどうしようもない存在なのだが、どうせここは極論、私が気持ちよくなるために作り上げたものだ。そういうわけでたまにはシコシコさせていただきたい。

しかし被害者は少ないほうがいい。そういうわけで、本当にクリアしていない人はこのあたりで帰ってほしい。申し訳ない。明日以降は普段どおり、ちょっとは真面目に全人類に少しでも貢献できる内容を書かせていただきたいのだが、今日一日ぐらいは自分の満足のために使わせていただきたいのだ。


でも、一つ言えることがある。これは多分、私だけではない。

本作をクリアしてしまうと、みんな色々喋りたくなるんだ。間違いない。本作はそういう作品なんだと思う。



・・・



わかった、じゃあ始めよう。

ここから私は本気を出せる。以下の文章にはあらゆるネタバレが存在する。すべて何もかも自由に書き散らかして気持ちよくなれるというわけだ。そういうわけで一切の遠慮はしない。思う存分やらせてもらおう。

ここから先が、私の本当のOuter Wildsのレビューだ。長いぞ覚悟しろ。すでにクソ長いが、多分全部で1万文字ぐらいは書けるんじゃないかな。



【量子】

本作のテーマの一つに量子力学と量子的振る舞いというものがある。偶然かな、本作の真なる評価はこの量子に例えるのが最もふさわしい。あるものが観察したときにはこれまでに前例のない全く新しいゲームの境地を切り開くがごとき振る舞いを見せるし、あるものが観察したときには怒り・絶望・吐き気・発狂・敗北感・無力感・・・あらゆる負の感情を湧き起こす。あるものが観察したときには量子の振る舞いの法則や時間の因果を捻じ曲げるブラックホールとホワイトホールの関係を利用した至高の謎解きパズルを楽しませてくれるし、またあるものが観察したときにはほぼノーヒントに近い状態から理不尽極まりない正解を導き出し、そのために楽しくもないアクションを行わさせられる拷問を与えられる。

その全ての可能性が重なり合っているのが本作だ。

普通、ゲームというのは、最初はどっちつかずの評価だったり、良い点と悪い点が両方存在したとしても、最終的にはどちらかの評価に倒せることがほとんどだ。なぜなら我々は人間だからだ。人間は短所に慣れ問題点に適応する事ができる存在であり、逆に長所を忘れ愉しむべき点に飽きてしまう存在であるからだ。すなわち、問題点に適応してしまい良作に感じられる様になるか、飽きてしまって駄作に感じられてしまうか、というわけだ。

しかし、最初から最後までプレイして断言できる、本作は違う。最初から最後までプレイしても、常にかたや神ゲーの片鱗を見せ続け、かたやクソゲーの片鱗を見せ続けてくるのである。タイトル画面で新しくゲームを開始するボタンを押した瞬間から、エンディングにたどり着く直前の最終入力の瞬間まで、だ。

これは本当に比喩でも冗談でも誇張表現でもない。そもそもゲーム開始直前のコンフィグ画面からして私に言わせればクソゲーの片鱗がある。デフォルトのFOVが低すぎてあっという間に3D酔いしてしまうだの、会話中に時間進行を止めるオプションがデフォルトでOFFになっているせいでじっくり村人と会話していると最初の打ち上げの前に超新星爆発が起きてしまうだの。エンディングも同じだ。何が面白くてエンディングで「謎が解けなくてクリアできないかも・・・」と思わなくてはならないんだ。同僚の旅行者メンバーやNomaiのねーちゃんを探す場面で本気で迷いかけたぞ。ここで万一迷ってクリアできなかったらどうするつもりなんだ。また一からあの苦痛極まりない行程をやり直せというのか?ここまでホスピタリティの概念が存在しないゲームはなかなか見られないし、それが修正されずに今でも残っているあたりを見るに問題とも感じていないようだ。ゲーム開発者の苦痛に対する不感症の末期的症状である。普通ここまでホスピタリティのない問題点はQAの工程などで排除されるのだが、おそらく本作はニッチなインディーズゲームゆえ、そういった問題点をなんとも思わずクリアできてしまうレベルの高いプレイヤーだけがテストプレイしてしまったのだろう。

ここまでは量子的振る舞いのクソゲーの面にフォーカスしたが、しかし逆に神ゲーの面についても当然触れなければならない。

大体の人間は本作がループものであるという知識を持って本作を開始することになる。ストアページに開発者が堂々とそう書いているのだからまず買う人間はそれを読むだろう。つまりゲームを開始して最初に思うことは「どうやって本作はループするのか、いつ世界が滅ぶのか」である。村人との会話も気が気ではない。なにせしばらくしたら世界が滅ぶという知識をプレイヤーは知っているのだ。のんきに会話して世界を知りたいという思いと世界が滅ぶまでにシャトルを打ち上げなければならないという思いが交錯する。こんな体験は本作の1周目ならではである。

で、あの像だ。正直心臓が止まるかと思ったぞ。頼むからホラー要素があるなら先に行ってくれ、年寄りにはつらいんだ。最悪、真夜中にプレイするのを避けるから。しかしあの像でもう完全に私はこの世界に引き込まれたと言っても過言ではないだろう。ゲーム内の主人公もあの瞬間にループに囚われるわけだが、私もこのゲームの世界をプレイし続ける中毒ループに囚われてしまうことになるわけだ。ここから楽しく抜け出すには自力で本作をクリアする以外にない。まさにゲーム内の主人公とゲーム外の私の体験が重なる。こんな体験、神ゲーでなくて何だというのだ。

画像1

それから飛び上がって、とりあえず目の前にあった最寄りのアトルロックに飛んで、そこですぐにこれから何回も何十回も聞かされることになるあの滅びのテーマが流れ始めて、最初は何が起きているのかわからなかったのだが、その曲調がただごとではないのを感じ取って太陽のほうを振り返ったら、ドーン。最高だ。最高の1周目だ。超新星爆発童貞卒業だ。この体験は本当に二度とできない。以降、このテーマが流れるたびに嫌な思いをすることになる。諦観と絶望と滅びとそういう負の感情そのもののテーマだ。なんていい曲なんだ、クソッタレが。

さぁここからが私のOuter Wildsの本番だ。レビューと言うよりプレイ日記みたいになってしまうのだが、私のたどった足跡と感想をそのまま記述していきたい。

アトルロック

最初にたどり着いた場所だし、特に重要なものもない場所だ。したがって記憶にある印象は薄い。しかしアトルロックにたどり着いたことで、私は本作の宇宙というものをある程度理解することが出来た。それはすなわち、私が知っている他のいかなる宇宙ゲームよりも、小さくて、速くて、変化に富んでいるということだ。普通、宇宙というのは、広くて、遅くて、永遠に変化しないようなものなのに、その常識をそっくりそのまま破壊してしまった。

多分、これこそが我々が本当に必要だったNo Man's Skyなのではないかと今では思っている。宇宙というのは元来人間には手が負えないのだ。Outer Wildsは、宇宙を人間の手に負えるものにした。ただし、その代償としてプレイヤーに強靭な三半規管を要求するようになってしまったが。アトルロックの観測台から星の動きを見ているだけでゲロ吐きそうになってしまった。

脆い空洞

脆い空洞には随分と長い間お世話になった。この惑星こそが私にとってのOuter Wildsそのものであるといえる。全ての惑星の中でダントツ一番のお気に入りだ。この惑星には探索の面白さを教えてもらった。世界が22分の中で常に変化し続けているということも教えてもらった。Nomaiの生活の片鱗も教えてもらったし、ブラックホールに落ちるという宇宙そのものに対する恐怖体験も教えてもらった。そして何より、このゲームが昭和センスで作られたジャンプアクションを要求するゲームなのだという知りたくもなかった事実もまた同時に教えてもらった。

具体的に言おうか。脱出ポッドの裏の通路が崩れるようにした担当者、出てこい。1発全力で殴らせろ。いや2発だ。2回落ちたからな。1回目で学習して今度は落ちまいと探査機を使って表面完全性をチェックしながら慎重に移動したにもかかわらず表面完全性100%の床が突然崩れだし、慌ててジェットブーストしようとしたにもかかわらずクソ操作性に阻まれブーストが入らずそのままブラックホールに落ちたからな。2回も。だから2回だ。2回殴らせろ。またはお前も2回ブラックホールに落ちろ。

画像2

いいこともあった。北の空中都市を調べている最中に北極からの隠し通路を見つけた時の話だ。これは本当に本当に感動した。それまでいちいち嫌がらせのように崩れる通路を通って空中都市まで通ってきていたのだが、この知識のおかげで安全かつ高速に戻れるようになったのだ。この体験のおかげで私はこのゲームの本質を学び取ることが出来た。このゲームは最初からすべての場所にアクセスを提供しており、知識によってのみ実際にアクセスできるかどうかが決定されているということ。知識があればそれまでより遥かに効率的に楽に移動できるようになるということ。そして何より、本当に大事な情報・・・この隠し通路・・・は船のログに残らないということだ。以降、大事だと思ったら躊躇なくスクリーンショットを残すようになった。

この星にはOuter Wildsのすべてがあった。今でも大好きだ。

軌道探査砲

ある日、朝起きて(?)脆い空洞へ出勤しようと発射台にダッシュをキメたときにふと気づいたのだ。目が覚めた瞬間、必ず目の前に巨人の大海があること、そしてその軌道上で何かが光り、何かが発射されているように見えることだ。何回か観察してみた結果、明らかに何かがあり、光り、発射され、直後に破壊されている。巨人の大海に行くのは後回しにする予定だったのだが、気づいてしまったからには行くしかない。

この場所で学んだのは、船のログに残っていなくても興味のある事象を見かけたら行ってみることが大事だということと、本作の0G機動はクソ極まりない体験だということだ。というかこんなもん0G機動じゃない。コリオリの力と近傍天体からの重力の影響が大きすぎる。Spaceキーで静止した状態を維持できない(静止になった瞬間にキャンセルされてしまい押しっぱなしにできない)。問題点があまりにも多すぎる。というか最後の点は本作の操作系を開発した人間のミスだ、なめてんのか。そんなに簡単にクリアされるのが悔しいのか。

砂時計の双子星

Outer Wildsで最も嫌いな場所だ。できれば二度と行きたくない。

画像3

この場所の全てが嫌いだ。天文学的特性も地形も外見も流れ落ちる砂も貯まる砂も何もかもが嫌いだ。太陽に近いため公転速度が速い、自転速度も速くてコリオリ力が強い、天体が小さいため重力が弱い、二重連星なので伴星からの重力影響があったりぶつかったりろくなことがない。洞窟だらけでどこも真っ暗で気味が悪いし、サボテンがどこに行っても生えていてムカついてくるし、砂が落ちてくる音がどこに居ても聞こえてきてザラザラザラザラ耳障りだし、だんだんせり上がってくる砂に飲まれて押しつぶされて死ぬ体験は最高に背筋が凍るし、潰された瞬間の音も無駄にリアルで耳に残る。用事があって立ち寄るたびに気が重くなる。世界に地獄という場所があるならこういう場所だ。そのくせこのゲームで最も重要な場所であるため一番立ち寄ることになる。この砂時計の双子星を設計したやつは人間のクズだ、性根がネジ曲がってなければこんな設定のこんな場所を作ることなんて到底出来るわけがない。このゲームのクソゲー要素と悪意すべてがこの場所に詰まっている。

しかしOuter Wildsは常に量子的である。すなわちクソゲーと悪意が存在するのであれば、そこには必ず神ゲーと感動が重なり合って存在するのだ。初めて高エネルギー研究所に到達して時間の因果を逆転させる実験を目の前で体験した瞬間の感動は言葉に言い表せない。その場に居合わせたであろうNomai達もきっとこういう気分だったんだろう。

他にも何か色々あった気がするが、思い出すだけで吐き気がするのでさっさと次に行こう。

侵入者

Chertのキャンプで砂が減るのを待っていたとき、近くまで彗星が来ているのを見かけたのでせっかくだからと立ち寄ってみたのだが、幽霊物質の迷路がクソかったるくて死ねばいいのにと思う以上の感想は何もなかった。

画像13

画像14

このパンドラの箱がいつ開かれたのかは知ったこっちゃないが、こいつが開かれた瞬間に幽霊物質が満ち溢れ、Nomaiは全滅したんだろうなということだけはすぐに理解できた。なにせ他の場所の死体も見てきたのだが、「日常感がありすぎる」のだ。子供の死体がアンコウのそばに落ちている地点で何かがおかしい。まるで遊んでいる最中に突然痛みを知らず安らかに死んだかのようだ。Nomai全員が北斗有情拳の使い手だったわけもないので、つまりこいつが開かれた瞬間に全員一瞬で全滅したんだろう。そう考えるのが一番筋が通る。

あとから分かったのだが、この読みも正解であった。逆に言えば特にそれ以外の収穫もなかった。探索の苦痛だけはそれなりに大きかったが。幽霊物質に対抗する方法とかが残されていれば気分も良くなっただろうが、そんな魔法はどこにも記されていなかった。

巨人の大海

実は印象が薄い。というかその前に散々苦しめられた砂時計の双子星がクソすぎて全ての印象がそちらに持っていかれてしまっている。竜巻がゴーゴーしてようが、島がぶっ飛ばされようが、特に感動が得られなかった。後から冷静になって考えてみたのだが、この巨人の大海はプレイヤーの視界に最初に入っている惑星だ。しかも真っ直ぐ飛ぶだけで簡単に到達できる。つまり、おそらくなのだが、開発側はこの惑星に最初に来ることを想定してゲームを組み立てているのではないだろうか。その証拠に、先に脆い空洞や砂時計の双子星の後にここに来て新しくわかった情報が非常に限られていたのだ。それに旅行者の中で唯一自分と同様にループしているGabbroに出会えるのもここだし、瞑想コマンドを教えてもらえるのもここだ。そういう意味だと私のプレイ順序は少し失敗していたのかもしれない。とにかく中ダレして平凡でつまらない時期だった。

1つ特筆に値する体験をしたのは深海だ。ここに来るまでの間に竜巻の秘密をすでに調べてあったので、早速試してみるとあっさりと深海に到達することができた。しかしご存知の通りここからが問題だ。中心に電気のバリバリが存在するのだが触れるとダメージを受けてしまう。しかし他に何もないのも不自然で、落下しているはずの探査モジュールが見当たらないことを考えると、おそらくだがこのバリアを突破しなければならないのだ。

すぐに方法は思いついた。何匹か存在するクラゲはいともたやすくこのバリアを突破している。他に何も見当たらないし、本作はどこか別の箇所でスイッチを押したらバリアがなくなるといったタイプのゲームではないというのもわかっている。このクラゲを使えばいいのだろうということはすぐにわかったのだが、しかしそこからが苦難の始まりであった。上に乗ってみてもダメ、下から行っても放電する足に阻まれて弾き返されてしまう。慎重にリトルスカウトを飛ばして調べてみるも、やはり足が帯電していて跳ね返されてしまうようだ。それなら帯電していない個体が存在するのではと思い星が滅びるまで探索を続けたのだが、明らかにすべての個体は帯電している。ひとまず現状はどうしようもないと判断し別の箇所に行くことにした。

闇のイバラ

入る

不気味で暗い

なんか赤いから行ってみるかぁ

入る

ガオー

という大体のプレイヤーが一度はやるであろう初見殺し罠に引っかかったところで真面目に攻略に取り掛かる。地球に転がっている闇のイバラの破片にリトルスカウトを投げ入れてから闇のイバラ本体に向かい、あとはリトルスカウトの方に向かって舵を切ればFeldsparの元にたどり着くであろう、という作戦をすぐに思いついた。私にしては冴えている。果たしてそのとおりであっさりとFeldsparに遭遇できた。同じ手法を使えばこの空間に落ちているであろう3つ目の脱出ポッドと船本体にも遭遇できるだろうと思い探索を続けたところ、あっさりと脱出ポッドに到達。しかしながら船本体に向かうためにはどうしてもあの赤い出落ちアンコウ地帯を突破せざるを得ないようだ。なんとかしてアンコウ対策を考えなければならない。そういえば私の大嫌いな砂時計の双子星にヒントがあるとかないとかログに残っていたな・・・またあのクソ惑星かよ・・・

画像4

何回か砂に埋もれ、死ねこのクソゲーと悪態をつきながらも無事アンコウの秘密を暴くことに成功した。といってもなんてことはない、単に「アンコウは目が見えない」というだけだ。このヒントは正直本当にセンスの欠片もないヒントだと思っていて、どうして会話の上で子どもたちに「目が見えないならどうすればいいの?」「音を聞いて探すんだよ」と一言言わせなかったのだろうか。たったのこれだけでこのヒントの意味を理解できるプレイヤーの数が増えるではないか。これだけ苦労して到達してヒントを得ても謎解きが終わらないなんてどう考えてもプレイヤーを馬鹿にしている。実際私の知り合いは「こんな意味のないヒントでどうすればいいのかさっぱりわからなかった」と愚痴をこぼしていてそこでプレイを止めてしまっていた。この手のヒントを正確にゲーム内で拾って読んで掴んでいるにもかかわらず記述内容がお粗末で正解に至れないケースがこの先無数に出てくる。

まぁ、アンコウのそばをスラスターを切って慣性移動ですり抜けるのはなかなかスリリングで良い体験だった。これは私の思う存在してもいいアクション要素の一つだ。意味がある。知識によって解決できる。要求されるアクションが比較的に簡単。素晴らしい。

船?まぁ予想通りだったなという程度の感想しかない。すでにこの地点でどうやってゴールすればいいのかは完全に予想がついていたのだが、壊れたコアとコアを差し替えられるインタラクション表示の存在、そして行き先を入力するであろう装置を見て予想が確信に変わった。ここから先はつまらない作業になるだろうなと思ってもいた。

量子の月

少し前の話になる。どこで見つけたのか完全に忘れたのだが(多分高エネルギー研究所だと思うのだが)、こんな碑文を見つけた。

画像5

画像6

画像7

画像8

正直この碑文が本作のゴールであると言っても過言ではない。ここに本作のすべての謎の答えがそのまま書いてあるからだ。すなわち、超新星爆発のエネルギーにより時間の因果を捻じ曲げて22分前のホワイトホールに物体を送り出す。その結果タイムループが起きるし、22分後ぴったりに超新星が爆発する。この地点では何をワープさせているのかはまだわかっておらず、軌道探査砲をまるごとワープさせているのかもしれないし、はては量子の月を送り込んでいるのでは、などと推理を巡らせていたのだが、これについてもその後訪れた巨人の大海の像の島で無重力状態でのみ読むことができるログに残らない碑文の内容で明らかになった。送り込んでいるものは記憶、すなわち記憶の像だ。要するに本作は単なるシュタインズゲートだったのだ。電話レンジ(仮)を使うか超新星爆発を使うかの違いでしかない。

この地点で私の推理祭りはだいたい終わってしまった。しかし同時にこの程度で本作が終わるわけがないとも思っていた。なにせ10年に1度と謳われているのだ。こんな私でも思いつくような答えが正解なわけがない。最後になにかどんでん返しがあるに違いないと思っていた。

そこでとりあえずまだ未到達の量子の月に行くことにした。こんな明らかに重要そうなオブジェクトに何の意味もないなんてことはありえないからだ。

そして何を隠そう、この量子の月への巡礼が、本作で最も全会一致で神ゲーであると断言できる箇所である。量子的振る舞いを利用したパズル、特に量子イメージングと量子もつれを利用したパズルは最高にエキサイティングだった。巨人の大海の試練の塔で得た知識を元に量子の月の写真を取り、そのまま量子の月に突っ込んで、「地面に衝突した」時にの感動を私は永遠に忘れないだろう。宇宙船は大破したがそんなことはどうでもよかった。毎回毎回あれだけ苦汁をなめさせられた月への着陸がこんなにあっさり成功するなんて。そしてこのギミックは「知識」だけで隠されているという事実。知っていれば誰でもいつでも着陸できるという事実。本当に本当に鳥肌だった。こんなに美しいパズルが他にあるだろうか。

量子もつれ・・・余談だが量子の祭壇に書いてある量子もつれの説明が間違っていて、量子イメージングになっている。最悪・・・その量子もつれの法則については実はきちんと試したわけではなく、偶然色々試している最中に思いついて成功してしまったというのが正しいのだが、それでも成功したときはこれまた鳥肌が止まらなかった。「観測されていなければ塔が勝手に動き回るのだから、逆に回りから観測されない状態になったら塔と一緒に勝手に動き回れるのでは」と思いたってドアを閉じてみたが何も起きず、そのうち「地面と計器類が観測されているから動き回らないのでは」とひらめいてライトを消した次の瞬間、私は第6の地点に飛ばされていたのだ。

画像9

恐る恐る歩き回って、とうとう目の前でSolanumちゃんが動いているのを見たとき、私はもうこのゲームこれがクリアでいいのではと心の底から思ってしまった。それぐらい、良かった。砂時計の双子星で味わった地獄の苦痛のことなんかすっかりどうでもよくなっていた。ここで終わっていれば100点満点だったかもしれない。

だが、ここで終わらないんだよなぁ。本作は。忘れてはならない、本作は史上稀に見る神ゲーであると同時に、史上稀に見るクソゲーでもあるのだ。

太陽ステーション

量子の月がこのゲームで最も美しい場所なら、太陽ステーションがこのゲームで最も醜い場所だ。嫌い、なのは砂時計の双子星だが、この場所はただ単に醜い。存在する価値もない。Nomaiが失敗したように、このステーションは存在そのものが本作にとっての失敗だったのだ。

理由はこれだ。これに尽きる。

画像12

何回私がこの飛び移りに失敗して太陽に落ちたり、遠心力で双子星までふっとばされたと思う?なぁ?

何回私がこの意地悪くクルクル回って漂っている橋の欠片に衝突して発狂しながら太陽に落とされたと思っている?なぁ?

何回私が飛び移りを諦めて直接飛行で乗り込もうかと思って太陽に落ちたと思っている?なぁ?

飛び移りがあまりにも美しくないからやっぱりワープじゃなくてシャトルかなにかが存在するのではと思って探してみたけど存在しなくて、あまりの怒りと絶望に屈してついにネタバレサイトに手を出して調べてみたら「頑張って飛び移るのが正解」だったときの俺の落胆がわかるか?なぁ?

その後も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も失敗してついに成功して、それで乗り移った先に書いてあった内容が「太陽ステーションは失敗しましたメンゴ」「その他は君の想像していた通りの展開だよ、特に面白い情報はないよ」「ちなみにこのステーションは1分後に燃え尽きますバァーイ」だったときの私の気持ちがわかるか?

お前も同じ回数太陽に落ちろよ、なぁ?

お前も全世界のプレイヤーが被った苦痛の合算に等しいだけの苦痛をここで受ける義務があると思うんだよ、なぁ?違うか?

なぁ?

冥土の土産だ、ちょっと真面目な科学の話をしようか?この飛び移りさ、なんで私が太陽方向(下)または回転方向(左)に移動するときと、太陽に逆らう方向(上)または回転に逆らう方向(右)に移動するときでスラスターの推力が違うんだ?なぁ?理論的にはだ、私は飛び移る対象の太陽ステーションと全く同じ速度を持った状態で飛び出して、空気抵抗もなし、かかっている重力も向心力もステーションと私で全く同じはずだろ?普通に考えて、この状況なら、スラスターは加速度を更に追加で与えるだけなんだから、どっち方向に動こうが全く同じように加速するはずだろ?なぁ?外から宇宙船でここにやってくるときに大変なのはわかるんだよ、この太陽ステーションは相当な速度で回っているはずだから、そこまで加速しないと落ちて死んでしまうってのは理解できるんだよ、なぁ?じゃあどうしてだ、太陽ステーションと同じ速度を持っているはずのプレイヤーキャラクター自身が太陽に引きずり込まれたり遠心力の影響を受けたりするような動きをするんだ?

なぁ?????

申し訳ないんだが、お前の作った物理エンジン、ゴミと違いますか?なぁ?

このゲーム、太陽に近づけば近づくほどクソになるな、こうして見ると。太陽を担当した開発者をクビにすれば良い開発チームになるんじゃないのか?

深海

正直もうこの地点で私にとって本作はかなりどうでも良くなってきていた。手がかりはほぼ全て調べ終わったが、私が推測している通りの展開が正しいことを補強する情報が上がってくるばかりだ。残されたのは「深海」と「灰の双子星プロジェクト」だけ。そして私のモチベは太陽ステーションと共に灰になって燃え尽きている。正直深海もどうでも良くなってきたので、さっさとネタバレに手を出すことにした。

結果、私の最初の推測がやはり正解だったことが明らかになった。

ダメだった理由は一つしかなかった。パッチだ。最新の1.0.6パッチで変更が入り、宇宙船ごとクラゲに入ろうとすると弾き飛ばされるが、「生身の状態で」「真下から」入ろうとすればクラゲの中に包まれて安全に突破できるように変更されたらしいのだ。

なぁ、もう怒る気力もないんだが、一応言っていいか?

画像10

画像11

この無能さぁ、一言でも「真下から」「生身で」接近すれば、「電気でしびれている触手があっても安全に」クラゲの中に入れるって言ってたか?

それとも無能に何言っても通じないか?そうだな?すまんすまん。私が悪かったよ。この程度も推測できない私のほうが無能だバーカって言い返したいんだろ、なぁ?

もうどうでもいいわホンマ。無能に付き合うと疲れる。現実でもゲームでも同じだ。

灰の双子星プロジェクト

すでにプレイしている理由は一つしかない。私が推測している通りなら、あとは「灰の双子星プロジェクト」に行って、そこに安置してある「先進型ワープコア」をひっつかんで「船」に向かい、先程入手した座標コードを入力して船を作動すれば第6の場所すなわち眼に到達してそれでクリアになる。つまりもうほとんど終わっている。だから完全に終わらせるだけだ。そこまではやろうと思ったのだ。

灰の双子星プロジェクトに移動する方法も消去法的に一つしかなくなった。実は量子の月に存在しますということもない。間違いなく灰の双子星のど真ん中に行くしかない。しかし推測されるゲームクリアの方法から考えて、22分以内に中に入って外に出て闇のイバラの船まで移動してコードを入力できる時間の余裕のある場所でなければならない。したがって砂が落ちるのを待つという可能性は絶対にない。残された選択肢はテレポートしかない。この太陽系に存在するテレポーターは一つの例外を除いて全て灰の双子星の塔にしかない。そして、私が、唯一、テレポートに成功していない、テレポーターが、都合よく砂時計の双子星担当の塔に、ある。

あとはこれをどう使うかだ。しかし意外にも私はネタバレに頼らず、すぐに方法を見つけ出すことができた。リトルスカウトだ。リトルスカウトは壁に張り付くのでクソ砂嵐の影響を受けない。これを床に配置して本当にテレポートするかどうか、したなら中の映像を送って正解かどうかをまず調べようと思ったのだ。そしたら目の前にブラックホールがフッと出てきて、消えるまで時間がありそうだったので急いで飛び込んだら私も入れてしまった。こんな思いつき、最初っから試せばよかったな。

中は別段、大したことがなかった。遠隔装置越しに見ていたときのようなゼーレ感も思ったより薄かった。私の考えていた筋書きが大正解でしたおめでとうございます~的なネタバレメッセージが大量に並んでいただけだ。もはや感動する心すら破壊されてしまったのかもしれない。

エンディング

しかし、しかしだ。実はこの灰の双子星プロジェクトに移動する方法を考えている最中に、一つ、たった一つだけ、このゲームが最後の最後に私にどんでん返しを突きつけてくる可能性を、思いついてしまったのだ。

これから私がやろうとしていることは、こうだ。

1. 灰の双子星プロジェクトに入る。
2. 中に安置されている先進型ワープコアを取り出して持ち出す。
3. 闇のイバラに移動し、船までアンコウを避けてたどり着く。
4. 船に先進型ワープコアを設置する。
5. 艦橋に眼の座標を入力して、ワープする。

一方で、今このOuter Wildsの世界で起きている現象は、こうだ。

1. 太陽が超新星爆発を起こす。
2. その際に発生するエネルギーを灰の双子星プロジェクトが受け取る。
3. 先進型ワープコアが発動し、超新星爆発が起きる22分前に、これまでのすべての記憶を格納した像を転送する。
4. 転送された像が、ペアになっている対象に対して、保持している記憶をすべて上書き保存する。これによって、22分前の対象は、それまでのすべてのループの記憶を持った状態になる。要するにシュタゲ。
5. 新たなゲーム=新たなループが開始する。

ここでだ。もし、もしだ。仮に先進型ワープコアがない状態で超新星爆発が起きてしまったら、どうなるだろうか。

1. 太陽が超新星爆発を起こす。
2. その際に発生するエネルギーを灰の双子星プロジェクトが受け取る。
3. 先進型ワープコアが発動し・・・ない。何も起きない。
4. 像は転送されない。
5. そして誰もいなくなった。
?. 新しいゲームループは?

興味がある。試してみようか?と思った次の瞬間、またもう一つの考えが浮かんできた。すなわち、例のDownwellの作者が「Undertale」を引き合いに出していた点だ。

Undertaleをご存じない方のために非常に大雑把な説明をすると、Undertaleには3種類のエンディングがある。その中で最もプレイヤーが残虐なプレイを行った場合・・・ジェノサイドエンドと呼ばれているのだが・・・なんとゲームそのものが破壊され、セーブデータが非可逆的に破壊され、ゲームが再開できなくなるという、前代未聞の衝撃的なエンディングが待っていたのだ。もちろんその後「ゲームに頼み込む」ことで再びプレイ自体は再開できるのだが、再開されたゲームはこれまた非可逆的に破壊されており、一部の要素が変わってしまって真のエンディングに到達できなくなってしまうのだ。

Undertaleというのはそういうとんでもないエンディングをやらかした歴史に名を残すゲームだ。そして彼はそのUndertaleを引き合いに出したのだ。

そしてここまでのところ、私自身とゲーム内のプレイヤーキャラクターは完全にシンクロしている。私自身の知識と主人公キャラの知識はリンクしているのだ。

もっと言おう。本作はゲーム開始直後の一周目からでもどこにでも移動できることがここまでのところ証明されている。私が考えているエンディングへの道が正しいのであれば、それこそ一周目からでも狙える。・・・例えば、セーブデータが何らかの理由で消されてなくなったとしても、プレイヤーが覚えてさえいれば、すぐに再度挑戦できる程度には、簡単に。

・・・まさか。このゲームは。まさかとは思うが、私がループできない最中に何らかの理由で死んでしまった場合・・・いや、ありえる、なにせ引き合いに出したのがあのUndertaleだ。それぐらいやってくれなければ困る。むしろそこまでやってくれるなら、確かに10年に1度の神ゲーを名乗れる大逆転ホームランだ。

俄然やる気が出てきた。失敗してすべてが失われてもすぐ取り戻せるだろうが、それでも私はこういう場面では失敗したくないのだ。一発で成功するしかない。入念に事前準備をして、いざ先進型ワープコアを取り出す。

画像16

曲が消える。無音。

外に出る。

刹那、あの曲が。

何十回も何十回も、親の小言より聞いた、あの滅亡のテーマが。滅亡のテーマのアレンジ曲が、急に流れ出す。

思わず太陽を振り返る。大丈夫だ、ワープコアを取ったから超新星爆発なんて理屈の合わないバグじゃない。ただの良い演出だ。焦らせてくれるじゃねえか、クソ野郎!

冷静に闇のイバラに戻る。アンコウ対策も完璧だ。何回食われて学んだと思っているんだ。滅亡のテーマが流れ焦る中、ゆっくりとアンコウの間をすり抜けていくのはこれまで以上に焦燥感があるが、なんてことはない。

船に到着、焦らずゆっくりコアをセットして、例の座標を一つずつ丁寧に入力して、スイッチオン・・・

画像15

どうやら、勝ったようだ。


エンディングそのものの演出については実はそれほど思うところはなかった。エモくて嫌いじゃないし、こういう終わり方はこのゲームにふさわしいと思っているのだが、別にこういうエモいエンディングは他のゲームにもある。今では珍しいものじゃない。むしろエンディングに入ってまで謎解きさせられるのかよと辟易したぐらいだ。建物に囲まれたギターが拾えなくて本気で焦ってしまった。諦めて一度キャンプに戻ろうと振り向いたら建物が消えた。そうだった、ここは量子の眼だったな。まったく。

さてクリアしたんだからもう大丈夫だろうとネタバレサイトを開く。

お楽しみの答え合わせタイムだ。もし私がループできない状態で死んだら、何が起こるというのだ?


・・・単にGame Overで終わりだった。あっ、はい・・・そうですか・・・


結局、最後の最後の瞬間まで、このゲームは神ゲーと凡作とクソゲーの量子的振る舞いをやめることがなかったというわけだ。

以上

15000文字の一大スペクタクル、ご読了ありがとうございました。