Dyson Sphere Program @ 2021-01-23

【優】全国八百万のFactorioファンに告ぐ。躊躇せず、直ちに、本作を購入されたし。しかしながら、最初の1時間、貴方は本作の不親切なUIや独特な操作系に翻弄され、何だこのクソゲーは、Factorioと比べたらゴミ以下ではないか、などと憤慨してゲームを辞めたくなってしまうかもしれない。しかしそこをぐっと我慢してほしい、思い出せ、Factorioだって5年前のバージョンは大したことがなかっただろう、不親切なところもあっただろう、最初の1回目のプレイはレシピを覚えるのにもプログレスを考えるのにも頭をひねる事になっただろう。全く同じことだ。そして2時間も経つ頃に貴方はこう気付くのだ。何だこの面白いゲームは、Factorio以来、こんなに面白いFactorioみたいなゲームは初めてじゃないか、と。

長所
・キャッチーなテーマ。工業系ゲームにおいて現在人類が想像しうる最も巨大な人工建造物であるダイソン球をテーマに宇宙を股にかけて星系全土を工場にする、というテーマが面白くないわけがない。しかもそれが企画倒れではなく、実際に正しく動作するように実装されているのである。本当に惑星間を飛び回り、複数の惑星間で物流ネットワークを作成できることを実際のゲームプレイで確かめることが出来たのだ。私の環境においてはフレームレートの低下やクラッシュなどのバグもなく大変快適であった。結局約束した内容を何一つ実装しないままリリースした某パンク2077などとは比べるべくもない。
・グラフィック。Factorioの美麗な2Dグラフィックも素晴らしいし、Satisfactoryの写実的な一人称視点も美しいが、やはり我々日本人・東洋人の感覚にとっては明るい色合いでわかりやすい三人称視点の3Dゲームが最も受け入れやすいのである。三人称視点であるがためSatisfactoryと比べて圧倒的にプレイしやすく、3DであるがゆえにFactorioと違い高さの概念のある工場が作れ、両者の良いところをうまく融合させる事ができている。
・ゲームプレイ。少しグラフィックの節でも話したが、Factorioのグリッド状に建物を並べる2Dゲームのわかりやすさや良さ、スケールのさせやすさと、Satisfactoryの持つ3Dにしか出来ない立体的なビルドやグラフィック、そして宇宙への移動といったダイナミックさをうまく掛け合わせて良いところを引き出すことに成功している。
・ボリューム。本作に早期アクセスのタグが付いているのが全く信じられない次元のゲームコンテンツが用意されているのである。というか、試していないのでおそらくだが、普通にダイソン球を組み立ててゲームをクリアするところまで、要するに本作の製品版で想定されているコンテンツのほぼ全てがプレイできると考えられる。もしそうだと仮定すると、現在の私の進捗から見て最低でも50時間はプレイできるはずで、これは私のCyberpunk 2077の総プレイ時間に等しいのである。巷に溢れる早期アクセスを言い訳にゲームにすらなっていない電子産業廃棄物を平然と客に渡して有料βテストをやらせる開発者全ては本作の爪の垢を煎じて鼻から飲め。
・翻訳。一部中国語が残る、などと言われていたためどうせ例の修仙シミュレータと同じ程度の英語翻訳だろうと高をくくっていたのだが、私の全ての英語力を持って誓っていう、本作の翻訳はほとんど完璧にネイティブ英語に近く、全編を通して違和感のある翻訳は極めてゼロに等しい。一切の抵抗なく英語版を遊ぶことができる。ダイソン球絡みの科学技術用語や宇宙用語に至るまでほぼ完璧なのには驚愕を禁じ得ない。
・価格。Factorio初期のα版と同じ価格であるが、本作の現状の完成度とボリュームを考えると、定価2050円は最早窃盗に等しいレベルの安価である。きのう紹介した大したことがないパーティーゲームより10倍の時間遊べて100倍楽しめてその上安いのである。

賛否両論
・液体輸送がベルトによって行われ、パイプの概念が存在しない。液体はUPS的に難しい要素であるし、全てのアイテムがベルトで移動できるという方が簡単でとっつきやすいというのには同意するが、しかしやはりパイプとベルトのパズル的な面白さを削いでしまっている。そのくせ、「液体」と言う概念自体は存在するらしく、コンテナタンクに入れられるのは液体扱いのアイテムだけで石炭や鉄は入れられないのである。内部的には液体扱いの概念があるのに、どれが液体かわからないためなおさら混乱する。
・戦闘要素が無い。個人的には無いほうが圧倒的に嬉しいためいらないと思っているのだが(Factorioもほぼ常時Peacefulでプレイしている)開発元は戦闘要素を追加する予定があると明言している。
・Factorioの持つ奥の深い配置パズル的な要素が希薄。その最大の原因として挙げられるのがインサーターが存在せず、変わりにベルトコンベアの上に直接配置するSorterと呼ばれるアイテムを機械に引き込んだりアイテムをベルトコンベアの上に落としたりする装置が存在することである。インサーターの最大の面白さが1マスを専有し、腕の長さが決まっており、長いインサーターはアイテムの輸送速度が落ちてしまうため考えて使わなければならない点であったのだが、しかしこのパズル的要素こそが奥深さをもたらしつつも初心者を遠ざけていた原因であることは否定できない。更に言うなら本作にはあの悪名高いLogistics BotもBeaconも存在せず、究極的に極まったFactorioの最適解、すなわち「Beaconに囲まれた生産台に無数のLogistics Botを群がらせる」という最高につまらない行動が取れないようになっており、私はこれを大いに歓迎したいと思っている。
※もちろんUPSの観点からすれば最適解ではないが、「UPSの観点」などというのが一部の熱狂的なマニアにしか通用しない概念なのは間違いなく、私はそれを手放しに優れていると歓迎するのは間違っていると思っている。

短所
・不親切なUI、首を傾げたくなるデフォルトのキーバインド、全体統一のまるで取れていないUX。本作に問題点があるなら何処か、と問われるならここで、後ほど例を挙げるが間違いなく統括UXデザイナー的な存在がおらず各自開発者がてんでバラバラ適当に自分が思う好きなような実装をしました、と言われても否定できないようなひどい有様である。単位系が場所によって異なる、同じホットキーを押したときの挙動がコンテキストによって全てまちまちになる、枚挙にいとまがない。プレイしていて慣れるまで猛烈に違和感と怒りを覚える。
・最初の1時間のユーザー体験。上記内容のため、特に直近までFactorioをプレイしていた人ほど、本作を受け入れるのが難しくなる。本作には「意図的にコンセプトとしてFactorioとは異なる」点と単に作ってる人間の頭がパッパラパー故にそうなっている箇所が玉石混交入り混じっているためなおさら問題が悪化する。
・本作最大のユニークポイントである別の惑星や別の星系への移動が可能になるまでにそれなりに時間がかかる。ある程度長い時間プレイしないと本作のテーマに触れられない。Satisfactoryがこの問題を解決するためにプログレスの序盤に軌道エレベーターを建てさてるというような手段を用いているが、そのような工夫が何も見られない。作っている人間のセンスが無いと酷評するに値する。
・Factorioにも存在する「意味のない研究」問題が解決していない。これは一度自動でビーカーを出せるように設定したら、あとは研究を脳死したままキューに突っ込んで放置するだけで、何もしなくてもすべての研究が終わってしまう問題である。この問題のせいで、Factorioも本作も、実質5回しか研究をする必要がないのである。即ち青・赤・黄・紫・緑の5回の研究ビーカーを作るときだけ、である。Satisfactoryはこの問題に正面から取り組むべく、一つ一つの研究に必要なリソースを全てバラバラにし、かつ研究の数を少なくする代わりにひとつあたりの重みを増し、ある研究の結果得られるリソースを使わなければ次の研究が進められないように調整してあるのであるが、本作の研究システムは悪く言えばFactorioを脳死して丸パクし同じ問題を引き継いでしまっただけにすぎない。
・マルチプレイは存在しない。
・MODサポートも現段階では存在しない。

このように、本作には少なくない数の短所が存在することは一切否定できない。そのためそれらの短所に体が馴染み慣れるまでの間は本当に大きな苦痛を背負うことになる。特に今の何もかもが快適で最適化されている理想のゲームであるFactorioに比べれば、本作のUIUXは終電の床に散らばっているゲロみたいなものであるため、つい最近までFactorioを真面目に遊んでいたプレイヤーほどギャップに苦しむことになるだろう。しかしながら本作にはそれらの無視できない短所を覆い隠すほど見事な要素がこれまた無数に存在し、我々を魅了してくるのである。これほどの作品をスルーするのはあまりにも惜しい。現段階でも相当遊べるゲームなのであるから、早期アクセス期間中にこれらの床のゲロが片付けられることになれば、今年のGotYは早くも終了ですね、と言わざるを得ない。


さて、本作の魅力をスクリーンショットで語る前に、まずは本作のUIUXがどれほど腐臭漂う残飯ゴミに混じった魚の骨のようなものかを先に説明させていただきたい。特に開始1時間で遭遇するものが中心となる。

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開始5分の地点である。この地点ですでに無数に問題点を挙げることができる。画面が暗すぎ(何故ロボの周囲に明かりをつけないのか理解できない)、Eキーを押しただけでは右側の生産メニューが表示されずFキーを押さなければならないのだがFキーをもう一度推すと右側のメニューだけが消えて左のインベントリが残り続けて発狂するほどウザい(両方閉じるにはEキーを推さなければならない、何故Fで開いてEで閉じるのか?)、生産ボタンがボタンなのかアイコンなのか全くわからないアイコンの上の10もさっぱりわからない(一度押したら10個まとめて生産されるように見える)、Construction Modeと言う概念がさっぱりわからない(なぜか何も建造物を手に持っていないにもかかわらずこのモードに切り替わることがある、手に建造物を持っているときだけモードを切り替えるのならまだ合理性がある)、といった具合だ。文字で説明してもなぜ私がこれほど発狂しているのか理解できないと思うのだが、実際に貴方がプレイしてこの画面を開いてみればわかるのである。この床にゲロをぶち撒けた酔っぱらいのカスは誰だ、そう問い合わせたくなる、そういう実装である。慣れるまで延々とこのような些細であるが苛つかされるするポイントに苦しむことになる。

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私の友人たちが苦しんでいたのがこれ。いわゆるLab、研究施設なのだが、本作の研究施設はビーカーの生産モードとビーカーを消費して研究するモードを切り替えられるようになっている。それ自体はまぁ良いのだが、問題はこのUIの何処をどうすればモードが切り替わるのか全くわからない点だ。開発元もおそらく問題に気づいているのか、Tipsとか言って読めないほど小さい文字で説明書きを書いているのだが、説明書きを読ませなければ理解させられないUIなどその地点で失格である。友人は結局手でビーカーを作り研究施設にビーカーを食わせるゲームだと認識して早期アクセスだから仕方ないよね、などと言っていた。本当に気の毒である。

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Sorterと呼ばれるインサーターもどきの挙動もこれまたストレスの種である。これでは配置できないのに・・・

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これなら配置できる。違いは何だ言ってみろ。このような事態、Factorioでは絶対に発生し得ない。もっと言うならこの0.75 trip/sという謎の単位は何だ。

単位の話をすると・・・

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Sorting Speed欄の1.5trip/s/gridという単位がまず意味不明で何を言っているのか何一つわからないのも、Idle Consumptionがワット単位なのにWork Consumptionがキロワット単位なのも意味不明(キロワットに統一しろクソボケ、9.0キロワットじゃねえか、つまりアイドル状態でも作動状態の半分も電気を使うのである、これほど大事な事実が全く伝わってこない)であるが、それ以上に注目してほしいのが一番下のレシピ表示である。これはFactorioと同じで、素材と生産にかかる時間が表示される形式になっている。

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ところが実際に生産を行う生産機械のUIはこうで、なんと60.0/minすなわちSatisfactoryと同じ毎分単位になっているのである。単位がズレまくっているのであるから、これでは100%無駄なく生産を行わせるための計算など到底出来やしない。私は心底、怒髪天を衝く勢いでキレた。キレ散らかした。Discord上で延々5分は喚き散らしたはずだ、このUIを考えた○○人の○○○共は所詮パクりしか出来ない○○○の集団で、なぜならこのUIを作った人間はSatisfactoryを脳死してパクリ、レシピ表示を作った人間はFactorioを何も考えずパクり、その結果この様になったのだ、やはり○○人は○○しかいない、とかそういう類の場所が場所ならそのまま処刑されかねないような内容であったが、しかし私の言いたいことも少しは理解していただけるのではないだろうか。本当に徹頭徹尾、本作のUIUXというのはこのようなものなのである。

これを見て確信に変わったのだが、日本人も中国人も、もっと言うなら韓国人もだろうか、我々アジア人はマトモなUIを作る能力が欧米人に比べて劣っているのではないだろうかという考えを抱くようになった。とにかく隙あらば各自が温泉街にネオンを置いてピカピカ光らせるような真似ばかりをし、全体の調和を取る気が全く無いと言わざるを得ないのである。大変嘆かわしい。


さて、ここまで小言を延々と述べてきたのだが、それでも私が本作を絶賛する理由が当然存在する。本作の魅力を感じとったならば、どれほどUIUXに問題があろうが、まこと些細なことである。

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やはり、本作の最大の魅力であるテーマ、惑星や星系を股にかけて移動しそれぞれの惑星で超大規模な工場を作る、これより魅力のある存在は考えられないだろう。ゲーム開始から5時間弱といったところだろうか、いつになったら頭上に見える星々めがけて飛び立てるのだろうか、早期アクセスだからまだ無理なのではと諦めかけていたところ、Sailと呼ばれるテクノロジーを得たことで、とうとう星から飛び上がり別の惑星に移動できるようになったのだ。この火星のような惑星に足をついたときの感動は本当にひとしおであった。この星には母星には存在しないチタニウム鉱石が大量に存在するため、この星からチタニウムを持ち帰って母星で使用するか、またはここで加工して送り込むか、それとも逆にこちらに母星から資源を持ち込んで開発するか、などなど、一気に可能性が広がったのである。

それからもう一つ、地味だが本作が極めてユニークであると思える点を紹介させてもらいたい。それは本作の舞台が球体の惑星であるということである。ピンとこないかもしれないので、軽く説明させていただきたい。

球体であることにより発生する事象として、まず地表面に極と赤道が存在することになる。当然赤道面のほうが太陽光を受けるという意味では有利になるため、太陽光発電を行いたいなら赤道付近に並べたい、ということになる。これだけでも面白いのだが、それ以上にユニークなのが、これだ。

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非常に暗くてわかりづらくて恐縮なのだが、よく見てほしい。おわかりだろうか?地面のグリッドが、そしてそれに沿うコンベアベルトが、歪んでいるのである。

そもそも、三次元の球体を、二次元の平面グリッドに完全に投影する方法がないというのは有名な話である。本作も例外ではない。つまり、本作の地面は、北極南極に近づけば近づくほど、歪むのである。

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その結果が、これだ。これは私の母星の北極だが、これほどまでに地面のグリッドが歪んでいるのである。これほどまでに歪みがあると、もはやまっすぐコンベアベルトを通すことが出来ず、その結果建物をうまく並べられず、つまり工場として機能するものが配置できないのである。熟慮の結果、私はこの北極に風力発電機を並べることにした。こうして、球体の惑星であるがゆえの土地の制約という面白い要素が本作に追加されることになったのだ。

最初にこの要素のせいでうまく建物が配置できなかったとき、私は例によって5分間罵詈雑言を放ちながらキレ散らかすことになったのだが、しかし5分後に我に返って冷静に考えてみて、このあまりに先進的で例がない工場建設ゲームとしての環境に身震いするほどの感動を覚えた。このゲームを作った連中は本当に頭がいい素晴らしい開発者だなどと褒めちぎり、そのさまはまるで手のひらで天元突破ギガドリルブレイクを繰り出す勢いであった。球体であるメリットは他にもある。すぐに思いつくのは、一周することができるという点だ。右と左のバスの終端ががつながっている配置など、他のゲームでは到底出来ない。他にも無限の可能性を秘めていると言えるだろう。

他にも語りたい内容は無限に存在するのだが、こんなクソ記事を書いている暇があったら1秒でも長く本作をプレイしたいため、本日はこのあたりで筆を置くこととする。読者諸兄におかれましてもこんなクソ記事を読んでいる暇があったらとっととSteamで本作を購入し明日一日の休みをすべて捧げて楽しんでいただければと思う。