グラブル @ 2019-05-21

グラブル界隈が今ちょっとしたホットなお祭り状態になっている。皆様なんとなく予想がつくと思われるが、悪い方向性でホットだ。まぁ、端的にいうとサーバーが落ちた。2日間で3回ほど。サーバーが落ちるなんてのはソシャゲでもネトゲでもよくあることなので別に大したお祭りでもないのだが、今回はそのタイミングがあまりにも、あまりにも悪かった。

とりあえずこんな場末のつまらんガチャ回すだけのソシャゲのことなんぞ誰も知らないと思うので、私の方からお祭りの背景を簡単に説明させていただきたい。いや、申し訳ない、簡単ではないかもしれない。多分長くなるぞ。

グラブルは3月に5周年を迎えたわけだが、その5周年アップデートから続く一連の最後のアップデートがゴールデンウィーク開始直前に導入された。その内容は「戦闘演出の軽量版を削除」というものだった。戦闘演出の軽量版というのは、戦闘時の演出が省略されてエフェクトが消えて動作が軽くなって5年前の非力なスマホでも動きますよ、というたったのそれだけのものだ。キャラのボイスも全てカット。せっかくフルボイスで声優さんが喋ってくれるというのに全て台無し、せっかく作り込まれた演出も一切流れない、2000年台初頭のガラケーソシャゲのほうがマシなレベルのそれはそれはひどい見た目のつまらないモードで、もはやスマホのパワーもネット回線も劇的に改善したのだから、違うバージョンの演出をメンテしたりQAするコストもバカにならないし、今回の軽量版廃止というのは運営側にとってまったく合理的な判断と言えよう。

何も知らない第三者から見れば。

これにグラブルガチ勢の上級者が一斉に大反対した。本気で。

何も知らない第三者からすればキチガイにしか見えないかもしれない。どうして軽量版が消えてキレているのか理解できないだろう。なんだ、グラブル上級者というのはみんな5年前のアクオスフォンとかレグザフォンでグラブルを遊んでいるのかと思われたかもしれないが、もちろん違う。彼らは基本的にPCのブラウザでグラブルをしている。パフォーマンスは問題ない。

では何故か。それはグラブルの目的が対戦型レースゲームだからである。

何を言っているのか再びわからなくなったと思うが、グラブルの本質はみんなと協力して強大な敵をマルチプレイで倒すRPGではない。正解は敵のボスが死に絶えるまでの間に、周りの参戦者よりも一瞬一秒でも速く1ポイントでも多くのダメージを稼ぐことである。なぜならこのゲームのドロップは貢献度という名前の戦闘で与えた総ダメージ量によって決定されるシステムであるからである。貢献度一位のMVPプレイヤーには確定で貢献度ドロップが与えられ、それとは別に青箱と呼ばれる一定の貢献度を稼がなければ手に入らない追加ドロップ報酬がある。そしてそれらの貢献度ドロップと追加ドロップでしか手に入らないアイテムが基本的にゲーム上絶対必須である。すなわちゲームを進めたければ、更に強くなりたければ、この熾烈な貢献度レースを勝ち抜かなければならない。そもそもこの貢献度レースで相手を出し抜くのが面白いから、グラブルにハマっている連中はみんな必死に現金を投入してガチャを回し人権キャラを手に入れ、クソつまらないエンジェルヘイローを何千回と周回して十天衆を最終上限解放するわけである。

ではそれと軽量版に一体全体何の関係があるというのか。答えは薄々見当がつくだろう。そう、軽量版のほうが演出が短い、いや演出が存在しないのだ。それに伴って、演出とともに発生する操作不能時間や遅れを全て回避することが可能なのだ。

ものすごく具体的な例を挙げると敵ボスの「真の力開放」と「体制を立て直した」が挙げられる。この2つはグラブルに登場するあらゆるマルチプレイのボスが持っている特殊行動だが、これが発生すると約5秒間ほどの間演出が発生し、一切の入力を受け付けない状態になる。たかが5秒と思われるかもしれないが、グラブルにおいて5秒あれば召喚1回またはアビ2つを実行、または攻撃ターンを1周進めることが可能だ。これはおよそ実ダメージ値に換算して数百万から一千万ダメージに相当するほどの差で、この差を普通に取り返すのはよほどの装備差かミスプレイがない限りは取り返せない。遅れが発生するのはもちろんのこと、何より実際にはボタンを押しているつもりなのに突然発生した真の力開放のせいでタッチが無効化されて操作ミスすることによる精神的動揺などによるマイナス要素が非常に大きく、全体の討伐速度に大きな影響が出てしまうのだ。

これらの要素のため、グラブルのトッププレイヤーやガチ勢天上人と呼ばれる連中は全員、軽量版しか使用していなかった。

運営がこの事実を知らなかったわけがない。運営の軽量版削除には、メンテコストの削減もさることながら、軽量版ユーザーが通常版ユーザーに対して不公平な優位を得ていたため、それを解消したいという狙いがあったに違いない。しかしながらそれまで軽量版で楽しく速度を出していた上級者の皆さまが、いきなり何の対応・改善もないまま理不尽に速度を落とされる通常版に戻されてしまうというのだから、そんなものが納得できるわけがない。まさにそれこそが冒頭に紹介した記事を執筆しているトッププレイヤー中のトッププレイヤーの人の想いだろう。

更に問題を悪化させているのが、グラブルにおいて最も上位に位置するプレイヤーのモチベーションとして作用しているコンテンツが「古戦場」と呼ばれるPvP対戦形式のコンテンツだということだ。そしてこのコンテンツこそが先程述べたグラブルを対戦型レースゲームたらしめている最大の要因で、古戦場とはいかに1秒でも速く同じボスを何度も何度も何度も何度も殺し続けるかということを競うとんでもない内容なのである。それこそ1回の古戦場で1000回、10000回、下手すると10万回近くも、1日17時間、朝の7時から夜の23時59分59秒まで、同じボスを殺し続けるのだ。気が狂っているとしか言いようがないが残念ながらそれが現実だ。それがグラブルを支えている。

そんな気が狂っているコンテンツを本気で回してくれる上位N%のガチ勢だからこそ、こんな些細とはいえ致命的な軽量版の削除に真っ向から反対しているのだ。

更に問題の悪化は続く。こんな狂ったコンテンツを真面目にプレイする、いや真面目にプレイできる精神を持った人間なんて多くはない。しかし人間ではない、機械であれば、一日に17時間ぶっ続けで同じボスを回したってなんとも思わない・・・そう、チーターだ。4月に開催された古戦場では大鉈が振るわれ、多数のチーターがBANされたのだが、そのBANがたったの一ヶ月で解除されて再びゲームに帰ってきているということが明らかになり、上位陣は更にやる気を失った。

そんな上位陣をないがしろにしているかのような変更の真っ只中で、5月の古戦場が幕を開けた。そして、その日の晩にサーバが落ちた。2回もだ。

もはや怒りは頂点をぶっ通り越したと言っても過言ではないだろう。ありとあらゆる知性の欠片もない罵詈雑言がTwitter上でプロデューサー宛だの公式運営宛に投げかけられた。傍から見るだけで精神が汚染されそうな悪夢の中、運営からは直前のパッチが原因だったので緊急修正を当てたとの連絡と、普段めったに飛んでこない詫び石が大量に飛んできた。3年ほどプレイしている私が知っている限り、古戦場でサーバーが落ちたのは今回を含めておそらく1回か2回しかない。それぐらいレアな現象だったのだ。普段はめったに落ちないサーバーが落ちたものだから、最近の不信感と相まって、「サーバーが落ちたのは軽量版が削除されて負荷が高まったから」だの「中華チーターが帰ってきて大暴れしているから」などと何の根拠もない噂を鵜呑みにして更に怒り狂う連中まで現れた。まさに地獄絵図だ。

しかし事態はまだ悪化する。予選2日目の夜、恐れていた3回目のサーバーダウンが発生してしまったのだ。しかも今度は1日目と同等規模のダウンだったにもかかわらず詫び石無し、である。もう配ったから知らぬ存じぬということらしい。おまけのダメ押しトドメに古戦場自体の中止を否定し、予選終了後1日用意されている休憩インターバルの日を削減して翌日から即座に本戦に突入するという強行スケジュールが発表された。もはやここから先は語る必要もないだろう。私にできるのは人間というのはここまで醜い生き物になれるのかと恐れおののくばかりである。

とまぁ、以上が事の顛末である。私の知っている3年間のグラブルの歴史の中でも3本の指に入る運営ミスであるのは間違いない。1番大きいのはアンチラ騒動、2番目は旧アーカルムでの緑チームのボイコットか旧ディフェンスオーダーだろうと思うが、ここ1年ほどは運営側も学んだのかほとんど問題もなく安定した日々だったので、久しぶりの熱狂だと言えよう。今後どのような流れになるか私としても注目して見守っていきたい。私個人としては来年の子年の干支キャラが出るまではグラブルが廃墟化しないでほしいと思うばかりである。出たらもうどうでもいいです。