[short story]鼻血jet<paid content>について

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鼻血jet

 その名の通り我々は、鼻から血を流す事を生業(ナリワイ)とする。鼻から血が出て早600年である。6000年を超えている。敵が向かってきた時に我々はどうするか、左から来たら…?左手で右の鼻腔を塞ぐ≪その刹那、僅か6秒である≫右から来たら…?右手で脇腹を抑える。大きく息を吸って(深呼吸と呼ぶ。但し、腹式呼吸である。)―いや、鼻腔を塞ぐ前に空気を「保管」する必要があるだろう。溜めてあれば十分だ―

 ビュウ。ビュビュビュビュ。ビュビュ。ビュビュ。

 勢い好く放射する流水は鮮やかな血の色をしている(当然である。何故なら、それは血液“そのもの”だからだ)放物線―いや、そのアーチはそれ程理想的な形相を抱かない―彼と彼女たちの行先は何処だろう…?瞬間的に…?

 (あなた…?あなた。あなた…?あなた大丈夫…?)

 この放水、何に役立つ?火消し、いや、現代に於いては≪浮遊≫にその益を見出した。JET。ドローンの普及に対抗すべく、人は自らの力量によって、つまり鳥が自らの翼で羽ばたくように、己の血液を媒介として空を翔(と)ぶのである。そう、ここから先は宙(ちゅう)の世界。崖である。

 (やめて…。やめておくんさい。堪忍まし。堪忍まし。)

 厭、私は一度決意したら然様にするのが慣わし、やはりここは翔(と)ばねばならない。方法は既に理解(わか)っている。左を望むなら、速やかに≪その刹那、僅か10秒にも満たない≫左手で右の鼻腔を塞ぐ、右を望むなら、その鏡―つまり、右手で脇腹をそっと押えるのだ。私は翔(と)ぶ。まもなく―

 (力量が…、足りません。その水量ではあなた様の質量と釣り合わぬのです。)

 やめておけ。やめておけ。やめておけ。その声、俄かに響く烏(からす)どもだ。彼奴らの仕業で私の勇気は何度挫かれたことか。だが間違いない、やり遂げる。この、…

 (ああ…、貴方様…、只今浮いてらっしゃる。いけません…いけません。その力は足りません。いいでしょう、仮に貴方様の仰る通り鼻から血を発射して空を飛ぶことが出来たとします。その流れた血はどうするのです?何処にかかる?まさか、後ろにいる私にかけるおつもりですか?そんなつもりがあるのでしたら、まあ今後私は貴方様を良い男子として視る事は出来なくなるかも知れません。其れでも良いと仰るのであれば、どこへでも飛んでいらっしゃいな。)

 ああ私は今、自らの活力により宙(ちゅう)を舞っている。だが、この運動どこまで?翼を持たぬ私は極論、Rocketと同様の原理を利用して居る訳だ。何処まで≪翔(と)≫ぶだろう。烏(からす)どもは私を迎え入れる。きっと…

 ビュビュ。ビュビュビュビュ。ビュビュ。ビュビュ。

 (ああ…、もう大分高い所まで貴方様は…、そうなのですね…、それが貴方様の…分りました。分りました。実はそうして私から離れた者、初めてではありません。鼻血jet。そう、私は厭きるのですよ。貴方様の鼻腔を塞いでいるのは私なのです。ああ、高く、飛んでいらっしゃる。とても清々しい。ああ、私もいつかそのように、空高く…、この血が一滴残らず無くなるまで…。)

 憧れが拗れた私たち、風呂場の愛は奈落へ。妻の湯舟には鮮血、乳房。

近代文学こと文学先生は圧倒的な不人気に定評があります。本人は認めませんが、非常に嫌われています。あと、髪の毛がぼさぼさで見ていると嫌になります。何より骸骨と並ぶと見分けがつきません。貴方がコインを落とそうとするその箱はつまり、そういう方にお金を渡すことになります。後悔しませんか?