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西宮ストークス観戦記#75 期間は限定かつ不明

西宮ストークスはアレクサンダー・ジョーンズ選手との期間付きの契約を発表しました。

おやっと思った人もいるかもしれません。すでにストークスは3人の新外国籍選手と契約を交わしており、空いた枠はないはず。しかも「期間付き」と来ています。これにはもちろん事情があります。すでにご 存じの方も多いと思いますが、一応説明しておきましょう。

◉Bリーグによる「特例」

新型コロナウイルスの流行がなかなか終息の気配を見せない中、日本では海外の指定された地域からやって来る人々に対して厳しい制限が設けられています。ありていに言えば日本に入れないということ。Bリーグの外国籍選手たちももちろん例外ではなく、日本でプレーするために必要なビザがなかなか下りない状況なのです。このあたりの事情はこちらの記事などが参考になります。

少しずつではあるものの条件は緩和されているようで、昨シーズン終了後、一時帰国する際に再入国の申請をしていた選手はぼちぼちと入国が認められ、チームに合流しているようです。このペースでいくと、昨シーズンも日本でプレーしていた場合はなんとか開幕に間に合う選手が多そう。それでも、入国が認められ、チームに合流するまでにはさまざまなハードルがあり、間に合わない選手も出てくるでしょう。さらに、初めて日本にやって来る選手の場合は入国までの道筋すら示されていません。

つまり、日本に来ることができる選手とそうでない選手、あるいは来るのが遅れる選手が出てくるということ。このまま開幕してしまえば対戦チーム間に外国籍選手数の差が生じてしまいます。Bリーグでは外国籍選手の影響力が大きいため、この状況では著しく公平性を欠き、プロスポーツとしての意義を問われかねません。そこでリーグが持ち出した苦肉の策が、契約を結んだもののコロナの影響で入国ができない(遅れる)外国籍選手がいる場合に限り、追加で外国籍選手と契約してもよいというルールです。

これを受けて、ストークスが白羽の矢を立てたのが、昨シーズンは八王子(B3)と越谷と茨城でプレーしていたビッグマンのアレクサンダー・ジョーンズ選手でした。今季で日本でのプレーは8シーズン目となる実績十分の選手で、チームのリリースによれば開幕にも間に合うようです。新たな4人目の外国籍選手との契約にはこんな背景があったのです。アレクサンダー・ルオフとデクワン・ジョーンズを足してアレクサンダー・ジョーンズとか、そういうトム・ブラウンのネタみたいな話じゃないよ。ナカジマックス!

ところで、この「救済策」については反対意見も見られます。その理由は追加で契約を交わした選手の立場が極めて流動的だというものです。このルールでは、すでに契約している選手(西宮ならルオフ、ムボジ、ジョーンズ)がチームに合流してプレー可能となれば、速やかに契約を解除しなければなりません。カッコよく言えばピンチヒッターだけど、悪く言えば使い捨て。

また、契約期間も非常に不透明で、どの時点で解除となるのかが読めないのです。契約済みの選手がすぐに合流できればあっという間にサヨウナラ。契約済み選手が新規の場合は入国がかなり遅れそうなので、ある程度の期間はチームに帯同しそうだけど、それだって例えばせっかくチームに馴染んで来た頃にお役御免になるわけで、やっぱり切ない。

短期契約の選手はどのシーズンもあったし、お互い納得しているのならいいんじゃないのという考えもありますが(私もそれに近い意見)、活躍すれば延長契約の可能性がある場合とは異なり、今回のルールではどんなにパフォーマンスがよくてもそれは望めないからね。

細かいことを言えば、例えばストークスの場合は3人全員が新規契約なわけですが、このうち誰か一人でも入国できたら(追加で契約した方の)ジョーンズ選手は解除になるの?とか、いろいろ不明な点が多いのも不評の理由だったりします。救済策とは言いながら、結局は契約選手を増やす=お金がかかるわけで、球団に負担を強いることになるし。

まあリーグとしても何もしないわけにいかず、考え抜いての結果ではあるのでしょう。本当に公平性を追及するなら開幕を遅らせないといけなくなるし、下手をするとシーズンごとアウトの可能性だってある。あるいはいっそB2の昇格をなくしてしまう(順位の意味づけをなくす)という考えもあるけど、それも結局「だったらもう止めれば?」になってしまうわけで。

例えば最低額のサラリーや契約期間に基準を設定するとか(1ヶ月は契約解除できないなど)、追加契約選手は開幕後3ヶ月以上在籍した場合は契約解除できないとか、そういう付帯条項を設けてもよかったかなとも思うけれど、後知恵であることは否めない。すでに契約が存在している以上、追加のルールがそれを縛るというのもなかなか難しい。

ともあれ、リーグからこうした特例的措置が出てくるということは、開幕に間に合わない選手がいるということほぼ確実です。一体、このシーズンをどのように楽しめばいいんだろう。そう言えば観戦ルールも発表されてたけど、大声を出したらダメとか、そんなことよりよっぽど大きな問題という気がする。

◉期待しかない新外国籍選手

という感じで、正直、新しいシーズンへの期待が急速に萎んでいるのですが、それはそれでジョーンズ選手へのリスペクトを欠くことになります。先行きの見えない中、西宮へやって来てくれたジョーンズ選手についても触れましょう。

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昨シーズンは3チームでプレーしたジョーンズ選手。下記は最も試合数の多い茨城での成績です。

アレクサンダー・ジョーンズ 2019-2020(茨城)
出場時間|31.9
得点|19.2(FG7.6/13.1=57.5%)
リバウンド|12.1(ORB3.9)
ファウルドローン|6.1

言うことなし。素晴らしい選手です。昨シーズンのブラッドさんと比べてもスコアリングの能力は遜色なく、リバウンドはむしろ圧勝。インサイドプレーヤーとしての印象が強いものの、ハイライトなどを観ているとけっこう外寄りでプレーしていることも多く、シュートレンジはショートミドルまではあり、得点のパターンはそこそこあります。驚異のファウルドローンが示すようにインサイドで身体を張ることを厭わず、精神的にも安定していて、プロフェッショナルな姿勢を好むフィッシャーHCとも相性が良さそう。スクリーナーとしてもきちんと仕事をしてくれるので、ハンドラーの豊富なストークスにはフィットするでしょう。正直、期限付きで来てもらうにはもったいないくらいの選手です。

個人的には、今オフの動きに照らすと、ちょっと「重い」かなという印象。正直、もうちょっと走力のあるアスレチックな選手を選ぶかなと思っていた(ナイジェル・スパイクスさんとか)。ストークスとしてはB1昇格のために勝負を賭けたシーズンであり、新外国籍選手3人が日本に来られないからと言って投げ出すわけにもいかず、フィッシャーHCの理想とするバスケットを目指すより、とにかく目先の勝ち星を拾いにいくという選択でしょう。むしろ「負ける試合を減らす」という感じかな。

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日本人選手のレベルを考えれば、ストークスにとっての外国籍選手は、得点面よりもデイフェンスやリバウンド、リウプロテクトなどの「汗かき仕事」ができる選手でいい。その意味では、今オフの補強は完璧だったし、一つあるいは二つ上のステージのバスケットを目指してもいました。しかし、不幸にもそれが開幕の時点では叶わなくなっただけでなく、いつそれが可能になるかわからない状況に陥っているわけです。つべこべ言っていられない。理想からは外れるにしても、アレクサンダー・ジョーンズという計算のできる選手を加えることで、プレーオフに望みを繋げてなんとかワンチャンを狙う。そんな射程距離の長い視点でシーズンを見据えての決断でしょう。

現実問題として、新外国籍選手3人の合流はいつ頃になるのでしょう。早くて年内というのが私の読みです。根拠は例によってありません。そうなると、とりあえずの照準がプレーオフ進出になるのは致し方ありません。プレーオフ圏内に残り続けるためにジョーンズ選手を必要としたわけです。西宮が不利な状況でシーズンインすることは避けられないでしょう。しかし、もしこのプラン奏功してプレーオフに滑り込めれば、ある意味では、レギュラーシーズンを上位通過したチームにとっては、こんな迷惑な話はない。だって、せっかく頑張って1位や2位でレギュラーシーズンを通過したのに、プレーオフでいきなり優勝候補と当たるんだぜ。

というわけで、ジョーンズ選手の加入は現時点では申し分なく、短い時間の中での動きとしては完璧であるとも言えます。昨シーズンも対戦のあったチームの選手であるわけで、オフの動きを主導していると思われるフィッシャーHCのお眼鏡に叶ってのチョイスなのであれば、心強いことこの上ありません。

ただし、問題はこの「期限付き契約」の期限が今のところ不明という点です。ジョーンズ選手ありきでのチームを完成させるべきなのか(その場合、追加は1人でいいの?という懸念もある)、あくまで後からやって来る(はずの)3人を待つべきなのか、悩みの深いシーズンの開幕はすぐそこに迫っているのです。


※このnoteは単なるファンの個人的な感想であり、
西宮ストークスとは一切関係のない非公式なものです。


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