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西宮ストークス観戦記#74 サイズという幻想

新加入の外国籍選手の顔ぶれから、今季の西宮ストークスの戦い方を邪推するシリーズ第3弾。実は今回が一番言いたかったことなのですが、やっとたどり着くことができました。それは「サイズ」というバスケットボールに不可分なファクターをどう捉えるかということです。

◉ストークスは「サイズ不足」か?

これまでの2回を読んで、あるいは新外国籍選手のリリースに触れて、このような感想を持った方もいるのではないでしょうか?

「そうは言っても、サイズ不足じゃない?」

うん、気持ちはわかる。ゴリゴリとインサイドで身体を張るセンターはいないし、しかもウィングタイプが2人。外国籍選手のオンザコートルールが変更され、各チームそれなりにビッグマン以外のタイプも獲得していますが、ここまで振り切るのはレアです。特にB2では、まだまだ「大きくデカイやつが強い」のが現状。昨シーズンのブラッド選手のイメージがあるから余計に不安に感じるのかもしれません。そう、だから気持ちはわかるんだ。

しかし、このような時にこそ、あえて異なる視点から考えてみるのはどうでしょう。それはつまり、そもそも「サイズ」とは何かということです。

例えば、ストークスのベンチ入り選手の平均身長はいくつでしょうか? それは西地区の他チームと比べて低いのでしょうか? それとも高い? あるいはリーグ平均と比べてみたら? そもそもサイズが「不足」していると感じる時、私たちはどのような基準に照らして「不足」すなわち足りていないと考えているのでしょうか。

というわけで、試みにこんなグラフを作ってみたよ。

■B2リーグ各チームの平均身長・体重

B2各チームの所属選手平均身長と体重を散布図にしたものです。身長も体重も案外バラつきがありますね。西宮ストークスを示しているのはどれだと思いますか? オレンジの線はそれぞれの平均値を示しています。なお、外国籍選手がまだ発表されていない青森ワッツは含まれていません。

■B2リーグ各チームの平均身長・体重

はい、正解はこちらです。どうでしょう。予想と合っていましたか? 

今季の西宮ストークスの選手の平均身長は189.5cmです。これは昨季と比べると-0.4cm。土屋選手が移籍したのが影響したかな。でも、ほとんど変わっていません。そしてリーグ平均(188.8cm)との比較ではほんの少しだけ高く、最も高いチーム(愛媛=190.5cmや茨城=190.4cm)と比べても遜色ありません。少なくとも平均身長という観点からは「不足」しているとは言えなさそう。誰だよ、サイズ不足とか言ったのは。

面白いのはむしろ体重(85.3cm)の方で、リーグ平均(88.0kg)を3kg近く下回っています。最も重いチーム(愛媛=90.5kg)と比べると5kgも軽い。これを「不足」と捉えるか、それとも「戦略」と捉えるか。

出場時間などをまったく考慮しない丸っきりの平均ですから、あまり意味がない数字と言えばそうかもしれない。ただ、一つの傾向は見えてくるわけで、つまり今季のストークスは「細長い」チームだということ。軽いから動けるというのは単純過ぎるけれど、それは前回書いた動きの量や質で上回ろうとする戦略と符合するものではあります。

◉自分たちの強みを強調して戦う

「ほら、言った通りじゃないか」
「越谷のバッツや、名古屋に移籍したブラッドにどう対抗すんの?」

ごもっとも。でも、そんなあなたに問い返したいのは「B1も含めてバッツ選手にインサイドで対抗できる選手がどのくらいいるのか?」「彼らを抑えるのに必要十分な選手の身長は何cmなのか?」ということ。誰だ、屁理屈って言ってるのは。

でもさ、冷静に考えてもまさかバッツやブラッドが1試合に20本とかシュートを打つようなゲームはしないだろうし(しないよね?)、そこまで心配しなくても大丈夫。ムボジさんのウィングスパンとフットワークがあればかなり抑えられる。そもそも外国籍選手の平均身長は上がっているし、劉選手の存在も忘れてはいけません。だいたいバーンズ先生にPFを守らせてたチームが今さら何を言ってるんだ。

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今季のチーム編成を主導したと思われるフィッシャーHCとて、こうした他チームの戦力について考えなかったわけではないでしょう。それをわかって(あるいは無視して?)この道を選んだ。つまり、昨季のようにインサイドのポストプレーを多用するバスケットをするつもりはないということ。だとすれば、「サイズ不足」はストークスの主観的には存在しない。幻想と呼んでもいいくらいです。「お金持ち」の定義を「お金に困っていると感じていない」とするのに似た話だね。

何より大切なことは、今季のストークスが自分たちの強みを強調することによってアドバンテージを作り出そうと考えているところです。そんなこと当たり前じゃないかと思うかもしれませんが、そうでもないよ。まさしく先ほど書いたように「〇〇だったら…」と相手のことを意識してしまったり、実績のある選手に頼りがちになってしまったり。そうではなく、ストロングポイントを先鋭化して相手を上回ろうとするスタイルは、Bリーグではあまりないんじゃないかな。

こうしたサイズに関する特徴を活かしてどのようなバスケットを目指しているのかは、前回書いた通りです。

この通りになる保証なんてどこにもないけど、少なくともサイズに頼るバスケットはしないはず。それはBリーグの新しいトレンドになる可能性もあって、そのトップランナーになれるのは痛快。NBAに顕著ですが、現代のバスケットボールは、リーグのトレンドを誰がどのようにつくるのかを眺めるのが面白い。そして、新しい波を起こせるチームはやっぱり強いのです。


※このnoteは単なるファンの個人的な感想であり、
西宮ストークスとは一切関係のない非公式なものです。


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