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西宮ストークス観戦記#59 エナジーとその沸点

西宮のハート&ソウル。谷口選手といえばエナジー。エナジーといえば谷口選手です。いや、さすがにそれは言い過ぎか。試しに「エナジー」でググると予測検索の1位は「ドリンク」でした。つまんねーよ。

では、谷口選手の今シーズンのスタッツを昨シーズンと比較する形で見てみましょう。

■谷口淳選手のスタッツ
      
出場試合(先発)   MP    PTS    FG%(3FG%)    TRB
2018-19  57試合(6試合) 12.3分  3.1点  35.4%(26.0%)  1.6本
2019-20  46試合(36試合) 19.9分 4.4点 38.5%(36.1%)  1.9本

大きく変わったのは、今シーズンはスターターを任されるようになったこと。出場した試合のほとんどで先発を務めました。そのため出場時間が大きく増えています。これは谷口選手自身の変化というよりも、スターティングSFである谷選手の負担を減らしつつ、1試合を通してチーム力を落とさないようにするための意図があったように思います。

ミスター・ストークスとも言うべき谷選手をスタメンから外すのは合理的ではないようにも思えますが、谷選手がベンチにいる限り、ストークスは余力を残して戦えることになり、相手チームにとっては案外プレッシャーになっているはず。スタートで躓いても挽回できるしね。

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話は少し逸れますが、ベンチスタートには向いている選手と向いていない選手がいます。試合の途中でいきなり入るのはやっぱり難しくて、いつ試合に出ても自分のプレーができるメンタルの選手の方が有利になります。ゲームの流れを読む必要はあるものの、大差でリードされている時なんかは、むしろ空気を読まずにガンガン攻めるインスタントスコアラーが求められることもあるでしょう。岸田選手や浜高選手は向いてるんじゃないかな。

じゃあ谷口選手はどうかと考えると、途中で出てきて流れを自分でどうにかするタイプではないよね。エネルギッシュなプレーでチームを鼓舞してくれることも多いけれど、それはあくまでチーム全体が好調な時に、さらに勢いを与えるというもの。自らプレーをクリエイトすることは少なく、周りに活かしてもらうタイプだけに、チームが停滞気味の時にはその空気に埋もれてしまう。「エナジー」が気負いになって、空回りしがちだしね。だったら最初から出しておこうというのがフィッシャーHCの考えなのかもしれません。

NBAでもルーキーや若手選手がいきなり先発したりすることがありますが、スタートって意外にプレッシャーがかからないという考え方もできます。どんな試合でも必ず最初は「0-0」から始まる。余計なことを考えず、伸び伸びとプレーできるという点では、谷口選手のような真面目かつ気持ちが先走りするタイプには結構向いているのかもしれません。そう言えば、昨シーズン、浜高選手が特別指定選手で加わった最初の試合(ホームの群馬戦)はスタメンでしたね。

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◉スタッツは「スリー&ペイント」

そんなわけで、その沸点を上げるにせよ下げるにせよ、やっぱりキーワードになるのは「エナジー」。ところが、今シーズンの谷口選手の成績をさらに見ていくと、それとは真逆の変化がありました。

その兆しは3FG%に現れています。もともとケレン味のないフォームでシューター適性はあったと思うのですが、今シーズンは36.1%までジャンプ。ここ2シーズン取り組んでいるポジションアップを成功させつつあります。

これは単に「スリーが上手くなったね」という話ではありません。谷口選手の1試合平均のシュート本数は4.2本。そのうち2.6本がスリーポイントで、残りの1.6本が2点シュートとなります(=4.2-2.6)。そして、谷口選手のペイント内シュートの平均アテンプトは1.3本。要するに2点シュートはほぼペイント内で打ってるということ。言い換えればこれは「スリー&ペイント」。なんだよ、むちゃくちゃ現代的じゃないか。

この動画はストークスの公式さんがアップした谷口選手のハイライト動画ですが、期せずしてそれをよく表しています。谷口選手が決めたのはスリーポイントとレイアップなどゴール下のプレーばかり。そして、レイアップもスリーラインで待ち構えていたところからのバリエーションとして選択したプレーです。ポストプレーなど、身体を張ったプレーはありません。「エナジー」はどこ行ったんだ? 

このようにスリー&ペイントを徹底するようになった今シーズンの谷口選手にふさわしいのは、「エナジー」というより「スマート」。オフェンスでの役割は基本的にコーナー待機で、ボールが回ってくればスリーを狙い、打ち切れなければリングへアタック。同じサイドでブラッド選手がポストアップすれば逆サイドへ流れ、ハンドラーの動きに合わせてポジションを変えながら、キックアウト先としてパスの逃げ場をつくります。オフェンスでの仕事はとても限定的で、それはいわば仲間のために引き立て役になることだったりします。

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◉「エナジー」はどこへ?

それを言い当てるかのように、1試合平均のシュート本数(4.2本)をチーム内で比べると、平均出場時間が15分以上の選手の中では最も少なくなっています(俊野選手を除く)。あまり意味がないと思いつつ、全選手の出場時間を30分として換算した数字で比べても最下位だったのはちょっと驚いた。そう言えば、内藤選手や土屋選手は、谷口選手よりもずっと出場機会は少ないものの、出ればほぼ必ずシュートを打っている。逆に、谷口選手は長い時間出てるのにシュートはあまり打たないということ。これも今シーズンの特徴です。

これってかなり大変だと思う。自分が主役ではないオフェンスの中で、味方のためにスペースを提供しながら、いつ回ってくるかわからないボールを待ち続け、パスが来ればスリーを決めることを要求される。クールに状況を見つめながら、プレーをするのは一瞬。「エナジー」なんて言ってる暇はありません。

何が大変って、集中力を保つのが難しいと思う。出場時間がある程度長いからこそ、余計にそうかもしれない。谷口選手を見ていると、なんだか集中していないように見える時がちょくちょくあったのですが、そもそもが集中しづらい使われ方だったということ。だって、ほとんどの時間をボールから離れた場所で過ごしてるんだからさ。その結果のスリーポイントが36.1%なら上出来と言うべきでしょう。

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「エナジー」が売りだったはずの谷口選手の今シーズンを紐解いてみると、それを発揮するようなシチュエーションは数字上は実はほとんどなく、浮かび上がってきたのは「スマート」や「クール」といった正反対のキーワード。これを成長と見るか、プロとして生き延びるためのロールプレーヤー化と捉えるかは、人によって意見の分かれるところかもしれません。

ただ、谷口選手に関して言えるのは、アンダーサイズのPFではまずやっていけないということ。ステップアップの方向性はこっちしかないとも思う。スリーの精度をさらに高めてチームの武器として確立させられれば、また違った未来が拓けてくるかもしれません。


※このnoteは単なるファンの個人的な感想であり、
西宮ストークスとは一切関係のない非公式なものです。


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