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西宮ストークス観戦記#51 @仙台2

東地区首位の仙台89ERSを相手にGAME1は辛勝。アウェーで貴重な勝利を手にした西宮ストークスでしたが、連勝を狙ったGAME2ではリズムを掴めず大差で敗れてしまいます。1勝1敗とはいえ群馬に続いてタイブレーカー(勝ち数で並んだ場合のホーム開催優先権)を落とし、これで西宮のプレーオフホーム開催はほぼ消えたかな。同地区内カードばかりになるこれ以降、仙台・群馬の両チームを西宮が勝ち数で上回る可能性はかなり低い。

改めて観直してみたのですが、案外内容は悪くないんだよね。いくつか決まってもいいシュートが外れてリズムを奪い返せなかったけれど、シュートのシチュエーション自体はそれほど酷いわけではない。審判の判定への不満などもあって、1戦目を落とした仙台の迫力に勝てなかったということでしょう。だから戦い方というよりは集中力の問題だったり。

◉PNRをめぐるあれこれ

さて、個人的に注目していたのは仙台のエリック・ジェイコブセン選手でした(対戦相手かよ)。というのも、GAME1ではなんだか不完全燃焼という印象で、中途半端なポジショニングでプレーエリアがよくわからなかった。それは仙台のチームとしての迷いだったのかもしれないけれど、とにかく振り切れていない感じ。後半は持ち前のフィジカルを活かしてガツガツやっていて、それが終盤にもつれた要因となった。それがいわば「ヒント」になったGAME2では、どう変えてくるだろうと思っていたのでした。

すると1Qは最初からジェイコブセンのPNR祭り。むしろなんでGAME1ではやらなかったんだろう。スクリーンをしっかりかけて、ディレイ気味に走り込むやつは強力。GAME1ではスクリーンをかわされるのでつい動いてしまい、ファウルを吹かれていましたが、GAME2ではそこも修正。B2だとビッグマンはポストプレーが多いから、PNRからしっかりフィニッシュできる選手ってあんまりいない。日本人アタッカーの多い仙台のカラーともマッチしていて合理的。なんでGAME1から…以下同文。

とはいえ、試合を観返してみるとまた面白くて、やられまくったイメージの西宮もPNRに対しては無策というわけではありませんでした。

■仙台 PNR 1_a画像1

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これは序盤の仙台のPNR。ジェイコブセンがしっかりとスクリーンをセットし、ガードをブラッドさんに守らせることに成功しますが、走りこもうとするジェイコブセンを谷口選手がカバーしています。

■仙台 PNR 1_b
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これはその次かな。ロールするジェイコブセンを谷口選手がカバーする形は同じ。西宮はティルマン選手にミドルを打たせることを選択し、シュートは外れます。これはシュートが外れたから成功ではなく、ミドルを打たせるマネジメントに意味がある。

2つのシーンに共通するのは西宮の谷口選手のナイスカバー。そこで、仙台はPNRの使い方をアレンジしてきます。

■仙台 PNR 2_a
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ジェイコブセンがやすやすとレイアップを決めたこのシーンは、序盤の2つのプレーどこがどう変わったのでしょうか?

■仙台 PNR 2_b
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続いてもう一つ。リプレーかと見間違えるほど、同じようにきれいにPNRが決まっています。教科書に載ってそう。

パターン1との違いはおわかりですね。そうです、ハンドラーのディフェンス(=ジェイコブセンがスクリーンをかける選手)が谷口選手だということ。金城選手をハンドラーにすることで、前の2つのプレーでナイスカバーを見せた谷口選手をターゲットにし、ロールするジェイコブセンをフリーにしようとしたわけです(たぶん)。

変わってるのはティルマン選手のポジションくらいなのですが、西宮にとってはそこは離せないわけで、結果としてインサイドにスペースができる。もうちょいバーンズが絞ってもいいと思うけどね。あと、ボールマンに対しては最初のドリブルに対して道原選手が行ってることは行ってるけど、あくまでもスタント気味で、コーナースリーの方をケアしています。

■仙台 PNR 3_a
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今度は西宮が修正する番。ジェイコブセンのロールについてはブラッドが下がって見ることにして、ハンドラーに対してはヘルプで止める作戦。実はピックを使ったガードのアタックを守るのは上手い西宮。熊本戦で石川選手のドライブを封じたみたいな。​

■仙台 PNR 3_b
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これも似たような形で、ジェイコブセンにはパスを入れさせないという守り方。谷さんがヘルプに来てます。もちろんコーナーが空くのは織り込み済みで、きちっと追える位置を計算して前に出ている谷さん。シュートは外れ。

この時間帯はティルマンがベンチ。それはバーンズ先生がお休みだったということなのですが、西宮がディフェンスの運動量を発揮できるラインアップだったこともあり、仙台の攻撃を封じて西宮がリードを奪った時間帯でもあったのでした。だから、キーマンはティルマンなのかもしれない。いや、バーンズ先生をディスってるとかそういうわけじゃないわけじゃないよ。

■仙台 PNR 4
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これは後半。PNRに合わせて外に開いたティルマンを経由することで、インサイドでジェイコブセンがポジションを取れる。この時点で勝負あり。

単純なPNR(1)とそのアレンジ(2)から、それをきっかけとしたプレーへの展開(3)、そしてさらにそのアレンジ(4)へと、同じプレーでもディフェンスとの駆け引きによってさまざまな変化が見られるのがバスケットボールの楽しみの一つではあります。

◉敗因はそこじゃない

ただ、試合を決したのはこういう戦術的なレベル、言ってしまえば些末な部分ではないはず。2Qあたりからギアを上げてフィジカルな戦い方を挑んできた仙台に対し、西宮はガード陣が高い位置でボールを失ったり、オフェンスリバウンドを献上するなど、気迫の面でホームの勢いに呑み込まれてしまいました。

とは言いながら、仙台にそういう戦い方を選ばせたのは、1Qの西宮の戦術的なアジャストがあったからかもしれないわけで、チームとして戦うのは上手い西宮。でも、それが相手の個人技やフィジカル勝負といった能力差を前面に出す戦いを招来してしまうこともあるわけで、信州戦のことを思い出してみたり。まあでも、今節は信州ほどの実力差は感じなくて、ほんとにあと1本シュートが決まったり、ファウルが吹かれたりしただけで、違う結果になった可能性も高い試合だったと思う。


※このnoteは単なるファンの個人的な感想であり、
西宮ストークスとは一切関係のない非公式なものです。

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