日本酒における「おいしい」とは何なのか?
4連休も最終日。本当であればオリンピックの歓喜に湧いているはずの東京。オリンピックどころか外出さえままならないとは、なんとも皮肉なものであります。
さて、今回は「おいしい」とは何か、という単純なようで根源的なものについて。
「美味しかったら何だってええやないか」
ええ、基本それでいいと思うんです(笑)
自分だって美味しけりゃどんなものでもいいと思いますし。
だけど、時にそれだけではまかり通らないことがあったりするので。
今回は、自分なりに「美味しい」とは何なのか?ということについて書いてみようかと思います。
美味しいとは絶対的なものではない
さきほど、時に「まかり通らないことがあったりする」と書きましたが、日本酒を飲んでいて直面するシチュエーションとは例えばこんなケースです。
出張先でぷらっと訪れた日本酒専門店。好みに寄り添おうとしたマスターに「好みってどんなお酒ですか?」と聞かれた時のこと。
美味しかったら日本酒のマトリクスで分類される爽酒(すっきり、爽やかな味わい)から熟酒(熟成され、ものすごく濃い味わいのお酒)まで、直感的に美味しい!と感じたら飲む雑食系の私。
これほど難しい質問はないな、と思っています。
いつも「美味しければ何でも好きです。」と店員さん困るやろなー、と思いつつ答えてしまう(といっても本心なのですが)のですが、、、
一方でこの時、美味しいって難しいなぁ、と内心思ってしまう自分がいてます。
というのも、自分が思ってたよりも良い意味で期待を裏切られたことによる美味しさだったり、ペアリングがカチッとハマった時の美味しさだったり。
そこにたどりついたストーリーによって美味しさ、好みって異なるのではないかな、と考えています。
お酒ではなくスポーツではありますが、似たようなエピソードがあったので引用とともに紹介したいと思います。
新人時代、投手コーチの稲尾和久に「9回裏二死満塁、フルカウントで何を投げるか」と聞かれ、ほかの選手が、ストレートなど自分の得意な球を答えるなかで、牛島だけが「分かりません。どのような経緯でフルカウントになったかで違うから」と答えたという逸話もある。
好みのお酒を投げる球だとすると、選ぶ球というのはそれまで何を飲んできたか、今目の前にどんな食べ物があるのか。誰と飲んでいるのか。
つまり好み、美味しいというのは環境に依存するのであって、絶対的なものではないということ。野球の配球のように、場面を踏まえてベストの選択をする、してもらうことが重要だと考えています。
日本酒の味わいを★で測ることへの違和感
好み、美味しいというのをどう感じるかというのは環境に依存する。と触れましたが、そんななか、違和感を覚えるのがお酒をミシュランの評価のようにように「★」という評価軸でお酒そのものを測ろうとすることです。
甘み、旨味、酸味、日本酒度など数値的に測定できるものを測ることは★で比較するのは可能ではないかと思います。
しかしながら、お酒そのものの美味しさを★で測るのはなんだか変な気がしてならないのです。(こうやってInstgramでリボン乞食しながら投稿してる人とかいますけどね。笑)
というのも、さきほど触れたように環境によって大きく味の印象は変化するから。
自分が飲んだたった一度の、それもペアリングとかを無視してお酒だけ味わって評価をつける。飲み方は人それぞれなので否定はしませんが、飲み手として無粋なような気がしてなりません。
美味しい。それは偶発的で不確実なもの
日本酒における「美味しい」というもの。それは期待通りにやってくるのではなく、思っている以上に偶発的で不確実なものだと思います。
特に、生酒なんて一期一会。同じラベルの顔したお酒でもタンクが違えば味は変わるし、開栓してからの時間でも変わる。お酒ひとつの状態で変わってしまうものだと思います。
また、お酒だけで飲んでいたらえっ、苦手な味だ、、、と思っても、料理と合わせることでお酒が最高のドレッシングになることだってあるわけです。
目の前にあるお酒の味わいを直感的に楽しみながら、どうしたら美味しくなるかな?このペアリングなら美味しくなるかな?
イマジネーションを膨らませながら、自分なりの「美味しい」を楽しんでみたらお酒がもっと楽しく、美味しくなるんじゃないかな。
そんな風に考えています。
お酒の神様が微笑む時を目指して
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