IMG_20161013_131810_-_コピー

霜降の候

二〇一六年が誰の断りもなく、太陽暦の理に則ってラストスパートをかけている。精神的にはもう追い抜かれた頃合いである。

先日の地震もあって備えをしようと思い、非常持ち出し袋にする予定のインコ型のリュックに手を伸ばしたが、叶わなかった。
部屋が散らかっている。キャパシティを越えて、とにかく物で溢れている。今年のはじめ、片付けが終わらなかったと嘆いていた。あれから十ヶ月が過ぎようとしている。今まで何をしていた? ベルトコンベアーのような日常に寝そべり、今がいつともどことも判らぬまま今日に至っている。

なんとかしなければ。
思いながら、去年購入したスチールシェルフに積んである、私のバイブルともいえるボーイズラブ小説のシリーズを読み出した。十二巻まで出ている。何度読んでもおもしろい。
書かない作家を見守りときに叱咤する編集の深い愛が、切なくて愛おしくて、ぜひとも幸せになってほしいと願う。

隣の山は、映画のDVDだ。
世界の理を知る使命を得て、ボーイズラブの文庫本を手にしたまま、プレイヤーに手を伸ばす。
家ではおとなしい良い子だが、社会構造に憤怒を抱えた女子が、少し大人びた男と出会い、付き合いだす。邦画は湿っぽくて、ちょっとえっちなくらいが好ましい。
しかしここからが怒涛の展開で、彼が親友(同性)とデキていて、親友が嫉妬するのが愉快だったから付き合った、やっぱり彼が忘れられない、とかなんとか言い出す。
私は画面を食い入るように見つめた。
腐女子は行間の、報われない恋模様に溺れる。

書類の片付けにかかろうとして、時計を見た。
私が静止している間にも、針はあくせく働き続けていたことを知る。
今日は寝よう(※「今日も」の誤りだと思われる)。

こうして私は部屋から一歩も動かずして、進むレールの上、廻るお寿司のずり落ちたネタのように、鮮度と人々からの興味を急速に失いながら、干物女となって、部屋はきれいにならず、リア充にもなれない。

ベルトコンベアーは進み続ける。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?