真VVengeance発売前ノート

以下「真ベジ」

キーワードは蛇神

カディシュトゥ(捧げられたもの)

真ベジで登場するあらたな勢力「カディシュトゥ」とはアッカド語で「捧げられたもの」を意味するらしい

「捧げられた」
いったい誰に?
対象はどこなのだろうか
もしもそれが、各神話における主神たちだとするならば、カディシュトゥの面々は「それぞれの神話上で敵対していたものたち」にまつわる存在と考えられる

鍵となるのは「蛇神」とのこと

追記分:4月5日(PV第2弾が発表されました)

キーワードは「誰か」という客体なのかもしれない

「別の視点」を象徴するもの

第2弾PVで登場したシーンで「凶鳥グルル」が登場していた
「グルル」は「インドのガルーダがスリランカにおいて悪魔とみなされた存在」だ
このシーンは、グルルを通じることで「別の視点」をほのめかしているのかもしれない

「別の視点」が意味するもの

加害者と被害者という「二つの存在」

なぜ「別の視点」なのか
それは「復讐」という概念が「加害者と被害者」という「二つの存在」を必要とするものだからだ
「誰か」という「別の視点」がなければ「復讐」は存在しえないのだ

「新たなナホビノの姿」が意味するもの

「復讐の女神編」は「誰か」に寄り添って物語がすすむ?

新たなナホビノの姿はどこかニンジャめいている
また「パートナーのパーティ参戦」も「復讐の女神編」では重要な要素になっていくのかもしれない
「忍」を「主に従う影の存在」とするならば、新たなナホビノの姿は「みずから創造をになう」のではなく「誰かの目的のために尽くす」存在になっていくのかもしれない
その究極は、PVでリリスが言ったように「自らを捧げる」自己犠牲という名の献身に行きつくのではないだろうか

追記分:3月21日(発売日が前倒しになりました)

発売日が早まったことに加えて、カディシュトゥそれぞれの名前となぞの獣型悪魔の名前も明らかに
「ナアマ」
「エイシェト・ゼヌニム」
「アグラト・バト・マラト」

そして「グラシャラボラス」

公式サイトより
公式サイトより

ユダヤに由来する悪魔

光輝の書「ゾーハル」に記述あり

カディシュトゥの悪魔はいずれもユダヤ教神秘主義の書「ゾーハル」に登場する

ナアマ

Wikipediaより

エイシェト・ゼヌニム

Wikipediaより

アグラット・バット・マハラト

Wikipediaより

セフィロトと永遠の生命

ユダヤ神秘主義と関わりが深いのが「生命の樹」とも呼ばれるセフィロトだ
セフィロトに由来した要素は「真・女神転生Ⅱ」にも登場し、魔界の土地名にそのままセフィロトを構成するセフィラの名前があてられていた
「真・女神転生Ⅴ」における「ダアト」もまたセフィロトを構成するセフィラのひとつだ

そしてセフィロトと関連するものが「永遠の生命」だ

Wikipediaより

赤い蛇サマエル

カディシュトゥの悪魔それぞれと関わりが深い悪魔が「赤い蛇」とも呼ばれるサマエルだ
カディシュトゥのいずれの四体もがサマエルの妻になったとされている

Wikipediaより

サマエルと葡萄の木

サマエルには葡萄の木にまつわる話がある
葡萄はそのままワインの原料にもなるが、もともとワインをたしなんでいたのは当時都市生活を営んでいたメソポタミアの人々だ
ユダヤの民はもともと飲酒をしなかったとされている

イエスの再来と葡萄

にも関わらず、キリスト教ではワインはイエスの血として神聖なものとされている

イエスの復活はメソポタミアの「タンムズ神話」に由来するもので、タンムズ神話と関わるのが「真の木の主人」を意味するメソポタミアの神ニンギシュジダだ
ニンギシュジダは対偶神に「命の木の女主人」を意味するゲシュティンアンナをもつ
そしてこの「命の木」とは葡萄を指しているそうだ
さらにニンギシュジダは、図像において蛇を肩から出している神であり、サマエルとの共通点が多い

葡萄と関わる蛇サマエルと、カディシュトゥ
それらを「蛇神」という要素でつなげたとき、導き出されるのは「永遠の生命」になるのではないだろうか

小林登志子「古代オリエントの神々」より引用



蛇がもつ神話的役割

蛇は多くの神話において永遠の生命を象徴する動物であるとともに「本来ヒトが得るはずだったもの」を喪わせる役割を持っていることが多い

その一つに挙げられるのが「ギルガメシュ叙事詩」における不死性にまつわるエピソードだ
ギルガメシュが持ち帰った若返りの植物を、蛇は持っていってしまった
これにより、ギルガメシュは若返りないしは不死性を得ることができなかった

人間のたどるもう一つの道筋

DLCからの類推

ここでさらに興味深いのがDLCの存在だ
追加されるDLCには、それぞれダグザとコノハナサクヤヒメが登場する
いずれも神話において「不死性」にまつわる要素を持っている

ダグザは聖杯伝説のルーツにもなった魔法の大釜をもつとされる
また、コノハナサクヤヒメは皇室及び人間の寿命にまつわる、いわゆるバナナ型神話のエピソードをもっている

これらの点から考えると、真ベジのテーマには「不死性」があるのかもしれない

なぜなら、真Ⅴの「創造の女神編」が「死と生による宇宙のサイクル」を描くものであるならば、その対立項として描かれるのは、循環による生命ではなく、完結としての「不死」にまつわるなにかと考えられるからだ

カディシュトゥが掲げる「復讐」の先にあるものはなにか
創造の対極にあるものは破壊だが、破壊も創造も宇宙のサイクルにおいては表裏一体のものだ
破壊を志向するだけでは復讐になるとはいえないだろう

だが、宇宙の循環を超えた、不死による「完全な完結」が訪れたとしたら?
対立し、斃され、踏みつけられられたものたちが望む復讐は、生々流転という大宇宙のシステムそのものの停止なのではないだろうか

カディシュトゥの神話的背景

ルーツは「海の民」か

真Ⅴのストーリーはラーやバアルといった、キリスト教以前の神々の覇権をテーマにあつかってるが、これは紀元前の中東およびメソポタミアの歴史と深く関わっている

その中で、いっとき勢力を持ちつつも次第に消滅していった存在として「海の民」が存在する

「海の民」はエーゲ海方面からエジプトや中東に侵攻し、略奪を行っていた部族全般を指す
かれらの襲撃はヒッタイトを滅亡させるほどのものであり、そうした「海の民」はアフロディテと関わりの深いキプロス島やフリギュアのキュベレなど「戦いを司る女神」との関わりも深い

紀元前1200年の分岐点

大規模な変動と鉄器時代の節目

「海の民」と関連する歴史に「紀元前1200年の変動」が挙げられる
この頃、製鉄技術を独占していたヒッタイトが「海の民」の襲撃によって滅びたことで、製鉄の技術は各地域に伝播していったという

蛇神とは少し遠くなるが、金星や豊穣・戦いを司る女神と「海の民」そして紀元前1200年の節目となった変動は、カディシュトゥの動向とも関わる神話的背景を持っているのではないだろうか

蛇神のルーツは

冥界を行き来する神

真ベジの「復讐の女神編」で鍵となるのが「蛇神」
神話における蛇神のルーツを辿っていくと、メソポタミアにおけるエンリル神の息子であり冥界神でもあるニンアズ神を挙げることができる
ニンアズ神は同じく冥界神であるネルガルの兄弟にもあたる

そしてニンアズ神は「エンリルとニンリル」と題された神話において「本来冥界に降るはずだった月神の身代わりとして冥界に降ろされた神」でもある
ある意味において、身代わりという形で「犠牲となった神話」を持つ神でもある

ニンアズ神の対偶神はニンキリウトゥ
天を支配するエンリルに対して地上世界――厳密には地下にあたるアブズを支配するエンキの娘にあたる

ニンアズと習合した神

死んで復活する神ドゥムジ

冥界神であるニンアズは、後代においてイナンナの夫であり冥界に降るドゥムジと習合していく
ドゥムジはタンムズとも呼ばれ、タンムズ月と呼ばれる夏至を境に冥界に降り、冬至のころ再び地上に戻ってくるという
これはメソポタミアの季節と関わっており、タンムズ月を境にメソポタミアでは乾季が訪れ、冬に雨季がやってくる事と関係している

ドゥムジが冥界に降る神話は「イナンナの冥界くだり」という神話に描かれており、イナンナの身代わりとして冥界に降るドゥムジは、姉であるゲシュティンアンナのとりなしによって1年の半分をそれぞれ冥界と地上で過ごすことになる

ゲシュティンアンナの対偶神はニンギシュジダといい、先に挙げたニンアズの息子にあたる
蛇神の系譜はニンアズからニンギシュジダ、ニンギシュジダの妻にあたるゲシュティンアンナから弟のドゥムジへとつながっていく

また、イナンナとドゥムジの関係性はギリシアにおけるアフロディテとアドニスの神話へとつながっていく

ナホビノは冥界へと降るか

根の国のスサノオから冥界のドゥムジへ

復讐の女神編のストーリーは、中盤以降大きく変化するという
予想だがサホリとラフムの接触を機にストーリーは変化していくだろう
もしもタオがサホリの復讐を支持したのならば、ラフムとの戦闘は回避されるかもしれない
そうなったとき、創造の女神編で辿るはずだったストーリーは変化していくだろう


3/21以前に書いた部分

予想と違ってた部分

それぞれの神話における「蛇」

カディシュトゥは四人の女魔からなる
判明しているのはカディシュトゥ・リリス
リリスを除いた、それぞれのデザインから考えると、ギリシア・北欧・エジプトにまつわるものではないかと予想できる

金髪の悪魔はギリシアのゼウスのような、二面性を感じさせるデザインになっている。襲撃のシーンで従えていたライオンのような悪魔から類推するに、アフロディテ、あるいはアフロディテと同一視されたアシュタルテだろうか

黒と白を基調に金色をあしらった魔女のような悪魔は、かつてオーディンたちアース神族と対立していたヴァン神族の魔女グルヴェイグ、ないしは同族のフレイヤが考えられるが「蛇」という観点や骸骨めいた手のデザインから考えるとヨルムンガンドの兄妹にあたるヘルの可能性もある

メデューサやヘカーテの可能性も?

もうひとつ、ギリシアで「蛇」といえばエキドナやメデューサも上げることができる
とりわけメデューサは、海神であったポセイドンとの関連もあり、復讐を望む女神としての資質も充分にありうる

また、アルテミスの側面であり魔女の始祖ともいわれるヘカーテも可能性として大いにありうるだろう
ヘカーテは「蛇」をシンボルに持っているところや、魔女という関連からいえば、先に上げたデザインはまさしく魔女を想起させるものといえる

太陽を喰らう蛇アポピス

最後に、黒い仮面のような顔立ちの存在はエジプトのアポピスが予想できる
一説には、アポピスはかつて太陽神であった地位をラーから追い落とされたことを恨み、日食や月食の原因になったとも言われている

あるいはアポピスではなく、ヌンの子であり両性具有とされたアトゥムである可能性もある
アトゥムは本編にこそ登場しなかったが、アブディエルが作中において言及していたアクマでもある

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?