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再会

 追っているわけではないが、書店で見かけたら買う、という作家がいる。ファンというには不真面目で、あちらとしては迷惑極まる買い方であろうが、寡作なひとであり、追うために追うのにはいささか疲れてしまって、ほどほどのお付き合いをさせて頂いている。

 所用で出かけた東京の蔦屋書店で偶然にもこの人の本を見つけ、手に取った。奥付を見ると2019とあり、その間に一度も見かけなかったのは不思議なことだと訝しみながらも、それを購入して旅の帰りの無聊を慰める旧友として迎え入れた。

 本を開くと、忘れかけていた文体の馴染み深さに、思わず瞑目する。読書とは人の文章という、外在する思考を頼りに自分がそれを俯瞰しつつ追体験することでもある。
 よく知った文体はそれだけで、旧知の友との時を超えた語らいであり、恩師の叱声であり、別れた相手との睦言のリフレインである。

 勿体ないと思いながら、一篇一篇をゆっくり読む。豊かで、贅沢な時間だ。

 春の花びらが、旧友を連れてきた。
 また、うれしからずや。

 いつか、自分の書くものも、誰かにとっての友との語らいになれば良いな、と大それたことを思う。

 

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