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堺の名物店が挑戦する、お餅の新たな可能性「カロリモチ」

浜寺餅 河月堂(堺市西区)

阿倍野駅からチンチン電車で約45分、阪堺電車「船尾駅」を降りてすぐの旧紀州街道沿いにある「浜寺餅 河月堂(はまでらもち かげつどう)」。
あそこの餅はほんまもんでめっちゃうまい、と評判の店の主、前田昌宏さんが豊かな発想で生み出す新たなお餅の商品とは。

めっちゃうまい、と評判の餅づくりを見学

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浜寺餅河月堂は地元の人はもちろんと遠方からも買いにくる人がいる和菓子の老舗。名物の「河月焼き」に、みたらし団子...とたくさん並ぶ商品は、多くの人の心をつかんで離しません。

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大阪中央卸売市場から直接仕入れた季節の味を楽しむフルーツ大福。

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豆大福は丹波産の黒豆がたっぷり入っていて豆率が高め。蒸したものではなく炊いた豆が使われています。

河月堂の菓子に熱心なファンが多い理由は、糖度低めであっさり控えめな甘さの特製の餡と、産地直送餅米100%の杵つき餅。雨の日も風の日も毎朝つきたてのお餅を提供しています。「餅の味がちゃんとしている」「少しくらい高くても味で納得できる」と評判の餅づくりを見せてもらいながら、おいしさの秘密を発見したいと思います。

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原料は佐賀県産の肥沃餅米。
目安の蒸し時間は決めているものの、その日の気温や湿度、餅米の状態などさまざまな条件によって火加減や時間を変えます。

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蒸した米を餅つき機で、

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ついて

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ついて

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さらに、つく。

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おいしそうなお餅ができました。

餅屋は10月から新年にかけてが一番忙しく朝から晩までフル稼働します。
昔は自分の店は持たずに全国を渡り歩く餅づくりの職人がいたそうです。

「まるでお酒の杜氏さんのように、職人が餅屋を流れ歩くんです。忙しい時期になると来て終わると去っていく。渡り鳥のようやったね」

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熱々の餅を手早く丸めていきます。

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どんどんできていく。

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どんどんどんどんできていく。

丸めながら、前田さんがお話ししてくれました。

「餅まきとか行ったことはありますか?最近は少なくなったね。昔はお祭りや年末になると紅白餅を配って回ったり、だんじりを新調した時に紅白餅を撒いたりしていました。
昔はなんでも餅だった。何かイベントやお祝い事があればとにかく餅を配ってた。どこにでも和菓子屋さんがあって、おはぎはここ、あん餅はここ、どら焼きはここのように決まっててね。それだけ餅屋さんが地域に根づいていたんでしょうね。

和菓子屋さんは街に一軒くらい必ずあり、冠婚葬祭でその地域に最低一つは必要とされていた。そういうところが一生懸命、店々で独自に特色を出しながら、お団子でも味も工夫して変えながら生まれてきた。しかしそんなお店がどんどん衰退していったのは悲しいですね」

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次に作るのフルーツ大福。みかんの果実が丸々入ったこぶしほどの大きさの大福と、マスカットのかわいらしい大福を手早く丸めていきます。

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大福で使うのは餅米ではなく餅粉です。

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皮をむいたみかんまるごと一つが入った餡です。

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大福の生地をぎゅっと絞り出して

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あんを包む。

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おいしそうなみかん大福が出きあがりました。

店の大きな絵に込められた、父と餅への思い

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前田さんは料理の専門学校を卒業後、製菓衛生士の資格を取得し職人の道へ。そして、お父さんから家業を受け継ぎました。

「親父が体調不良で倒れ、兄もいたんですけど若くて一番フットワークが軽く帰って来られるということで、学校を出て外に出てた私が戻って継ぐことになりました」

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お店の壁に掲げられた大きな絵には、近くにある浜寺と街道が描かれています。
「この絵は、昔の紀州街道のイメージでお付き合いのある画家さんに描いてもらいました。『河月堂 幸せの餅 運び候』のキャッチコピーは僕が考えたんですけど「勇(いさむ)」は父の名前です。ちょうど親父が元気になったタイミングでこの絵ができあがってきたので、父の名前にさせてもらいました。自分の名前があるのを見て親父が喜んでくれたから、少し親孝行できたのかな、と思いました」

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つきたての餅を食べて欲しい、という思いからはじまった

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周りの和菓子のお店がなくなっていったり、餅を食べる場面が減っていく中、職人として餅づくりに身を捧げることになった前田さんは、全国でこのつきたての餅を食べて欲しいと考えるようになります。
「従来の餅だと西日本へのお届けは大丈夫なんですけど、関東には中一日挟むと餅が固くなってしまうんです」

そんな時に「不凍たんぱく質」の記事を目にします。

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「深海の魚であったり、雪の下に埋まっているカエルやトカゲがなぜ凍らずに生きているか、ということです。そこで調査がありそれらの生き物には不凍たんぱく質という成分があることがわかりました。工業用として昔は車のラジエータの不凍液とか昔から工業利用はされていたんです。公害の時代には大量に生産していたんですけど、やはり食用には使えない。食用にしたくても原料が魚であったり爬虫類であったりで、生臭さが消えなかったんです。

原理や物質は判明していたけど食用としては実用化できていない時代がしばらくあり、関西大学の河原教授が調べた結果、大根の中に不凍たんぱく質という成分があり、大根は天然由来なので食用に使える、ということで開発が始まりました。しかし冬場は大根も不凍たんぱく質がありますが、夏の大根には不凍たんぱく質の成分が含まれていないことがわかりました。大根も生き物なので同じ品種、同じ場所で育った大根であっても不凍たんぱく質の量が安定しなかったり、何より大根は食材としてその年の出来で価格が高騰する時もあります。

食用として安定供給するのが難しいということで、同じ大根の仲間であるカイワレ大根に着目し調べてみたところ、カイワレ大根の中にも不凍たんぱく質あったんです。価格も安定し育てるのも簡単ということで、カイワレ大根から抽出した不凍たんぱく質が食用として適していることがわかったんです」

情報源は、堺市に分校のある関西大学の広報でした。共同開発の話が進む中「いつでもつきたての餅を全国に」という前田さんの思いが、やがて餅の可能性を広げていくことにつながります。

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「糖質オフについてあまり知られていませんが、体の中の糖質を落とすことで体の中の筋肉も一緒に落ちてしまうことなんです。体重は減るけど変な痩せ方をします。体重も減るけど一緒にバストの筋肉量も落ちるということになってしまいます。

運動するにあたって必要最小限の糖質を体に入れ、脂肪分だけをうまく燃やしていく。そんな時に餅は最適な食べ物だ、と思いました」

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カイワレ大根から抽出された不凍たんぱく質を使えば、冷凍庫に入れておいても自然解凍でいつでも柔らかくおいしいい餅が食べてもらえる。元来持っていたパワーフードとしての餅の価値が引き出され食べてもらえる機会が増える、と気づいた前田さんは「アスリート向けの餅」をコンセプトに、関西大学と新商品を共同開発。スポーツが盛んな大学であることも幸いし、アメフトをはじめとする運動部に協力を依頼し、味や名前、価格なども意見を取り入れながら決めていきました。

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そこで生まれたのが「和neチャージS(ワンチャージエス)」という商品です。

関西大学の多くの運動部の協力してもらい、試作品を食べてもらいました。
「胃の粘膜にへばりついて消化していくのでスタミナが長持ちする」という意見や「プレッシャーでご飯が喉を通らない時に一膳のご飯は食べられないけど、餅一個だと同じだけのカロリーを吸収できるので重宝する」という選手もいました。

大学と共同開発した「アスリート餅」は多くのメディアで取り上げられ、好調な売れ行きを続けています。

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「さらに、有り難かったのは分析数値をいただけたこと。配合するものや混合率、加工にかける時間などあらゆる条件で行なったテストのデータを取得できました。そのデータによって餅の性質を見える化できましたし、こちらのすごく知識も引き出してもらいました。不凍たんぱく質が効果的な餅とそうでない餅があるとわかり、次へのチャレンジにつながりました」
と熱心に語る前田さんは次なる餅の新商品を開発中です。

ダイエットのために糖や炭水化物をどんどん取らないでおこうという風潮が進む中、少量でカロリーを取得できて余計な間食がなくなりダイエットのお手伝いもできるということで、新商品のターゲットは女性に設定しました。

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「3時のおやつをつまむ代わりにオフィスで餅を食べてもらうと、腹持ちが良くなり晩御飯を食べる量が少なくて済みます。スポーツクラブから帰ってきてお腹が空いて、がっつりご飯を食べてしまうと何しているこっちゃわからへんでしょ。ところが和neチャージSを持っていって、トレーニング前にちょっとお腹に入れてトレーニングして帰ってきたら、それなりに満腹感もあるので、健康的なダイエットになるというお話を聞けました。それをヒントに今度は女性向けの餅を考えています。

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不凍たんぱく質のベースは共通で、黒糖を混ぜていたものを普通の白ザラのお砂糖に変え白い餅に仕上げたり、女性が大好きなクランベリー、サルタナレーズン、くるみなどのドライフルーツを入れました。がっつりトレーニングするよりもファンスポーツをしているようなライトな人にも食べてもらいたい。見た目もサイズ感も女性向けにしていく予定です」

日本の伝統食からヘルシーフードへ、進化を遂げる餅を

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「お店やイベントで餅を焼いてたら、その匂いで皆さん買いに来てくれたりもします。それだけ家で焼いてる餅は見ていないんだな、と実感しました。我々が子供の頃は、一昔前は家の中や学校にストーブがあってその上に餅を置いて焼いてみたり、もっと前だと火鉢があったり。冬場だと暖をとりながら、餅を焼いていましたからね。

お客さんと話をすると、今の時代の人たちはすごく餅を食べる機会が減っているな、という気がします。和菓子業界という中で、和スイーツは繁栄していますが、こと餅に関してはやはり隅に追いやられている感があります。日本のソウルフードでもあるわけだし、アスリートにとってはパワーフードでもあるので、もう一度、餅の良さをもっとしっかり伝えていきたいですね。

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パワーフードからヘルシーフードへしなやかに進化を遂げつつある河月堂のお餅。その可能性に次々と挑戦する前田さんの次の新商品を楽しみに待ちたいと思います。

オシャレにお餅を食べよう!
カロリモチ

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詳しくはこちら

社名:浜寺餅 河月堂
住所:大阪府堺市西区浜寺諏訪森町1-80-3
連絡先:072-261-1534







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