『ヒトラーを追跡せよ! 浮かび上がった亡命説』を見た感想

ヒトラーを追跡せよ! 浮かび上がった亡命説』というタイトル通り、ヒトラーの行方を追うという趣旨。

 本当はもう少し早く公開しようとは思っていたのだけど、すっかり忘れてた。9月2日だったし丁度いい機会かなと思って頑張って思い出して、是非これは面白いのでみんなも観よう、といったところ。ところでナチというのは、UFOだとか宇宙人だとかUMAだとか超常現象だとか、そういったやつの仲間だと思われている節がある。ナチがUFOを作ったという話もあるし、まあ、あながち間違いでもないのだろうけども・・・
 かなり蛇足かも知れないが、この手の番組には「なんでそんな事知ってるの?知ろうと思ったの?」と思うような専門家がわんさか出てくるのも結構楽しい。

 ヒトラーはベルリン包囲戦の際、地下室で自殺したというのがいわば定説になっている。ヒトラーが映画やドラマで扱われる場合は大体この説に準拠している。
 でも本当に地下室で死んだのかな?という事を検証するのがこのドキュメンタリー。実はヒトラーが死んだ事は誰も確認できていない。なんかこの辺り伝説上の人物に近い部分がある。伝説上の人物であるとは言わないが、たとえばキリスト。1世紀頃のパレスチナに実在していたとされる人物なのだが、本当に実在していたのかはわからない。いたとも証明できないし、いなかったという証明も同様だ。実在したかどうかとともかく、聖書の記述にある人物は実在したという前提でキリスト教は成り立っている。
 ヒトラーの死因もこれに似たような物だというのが、作品を見ればわかる。キリストとヒトラーをあたかも同列かのように扱っているのはアレな気もするのだが、ともかくそういう事になる。
 このドキュメンタリーの核の一つはこれだ。我々が「なんとなく」そう思っている出来事を、科学的な方法でしっかりと検証しよう、と言う視点だ。例えるなら、「なんとなく地球の周りを太陽が回っていると思ってるけど、ホンマかいな?」といった感じだろうか。

 若干内容が前後するがこの番組、作品紹介にもあるように、機密解除された文章が鍵になっている。何十年か経つと、機密指定だった文章が開示されるという奴だ。とはいえやはり全てが表に出てくる訳でもなく処分される文章もある訳で、有名どころでいえば「Mkウルトラ」のようなヤバイ実験に関わる文章などは残ってなかったりもする。このあたりは全く詳しくないのだが、大体はこんな感じだ。この文章を基に今までの「定説」を疑い、実はヒトラーは赤軍によって包囲された1945年のベルリンから密かに脱出し南米へ逃亡していた、というの仮説を証明していく過程がこのドキュメンタリーの内容になる。
 話の内容をあまりひけらかすのは良くないので、調査方法に少し注目してみよう。


 調査方法といえばこれ、聞き込み調査。探偵も警察もやっているであろう、最も古典的な方法だ。現地の人々、時には大戦時に子供だったお年寄りにまで話を聞き、当時の状況や雰囲気を把握している。
 とまあ、聞き込みをするのは当たり前なのでさておき、注目したいのは地中探査機やドローンなどの機材だ。ドローンのような方法で空撮するというのは、しばらく前までは選択肢に浮かんでさえも来ないような方法だったろう。作中ではドローンが新たな発見に貢献している。
 地中探査機はドローン程のインパクト、というよりかは流行にある訳ではないが、持ち運びができる程度の大きさにあるというのは大きいだろう。いちいち掘り返す訳にも行かない。このような機械の存在によって、過去に何らかの施設であったらしいが現在は物置みたいになっている空き地の地下調査ができる、というのも技術の進歩の賜物だ。
 こうした物理的なもののみならず、膨大な量の文献から重要な部分を切り抜くだとか、人物関係を整理するというのにもある種のテクノロジーが一役買っている。
 ドローンや地中探査機に限らず時系列を現在より過去にずらして考えれば、今我々が使っているパソコンや携帯、ドキュメンタリーを撮影するのに用いられる機材というのも相当に技術の進歩の賜物だ。とはいえ、建物などの状況証拠は劣化して消えゆく運命にあるし、時代の証言者とその記憶も薄れて行く。これらは技術ではどうしようもできなさそうだ。タイムマシンでも開発できれば別なのだろうが、さすがにタイムマシンは無理なんじゃないかと思う。

 最後に、ヒトラーは結局45年のベルリンで死んだのかどうか、筆者の意見を言うと、死んでないじゃないかなーと思う。もちろん死んでたかも知れないから、断定はできないけども。

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