見出し画像

カードゲームの物質性

ここでのカードゲームという語は主に、いわゆるトレーディングカードゲーム、TCGを想定している。このTCGも、実物のカードがあるものとないものとの二つに分けられるが、特に前者について述べたい。

TGCにも様々に種類があるが、商品であることは全てに興共通する。やや広くカードゲームという語を用いるのであれば、トランプや花札の類をここから除外できるが、「トレーディング」カードゲームとなると殆ど全てが商品である。トランプや花札が商品ではないというのは、それらの成立がそもそも商業から外れていることを意味する。ゲームとして遊ぶにあたって必要とされる道具の類が有料であるということであって、ゲームそのものが商品なのではない。

TGCで用いられるカードは、物理的に存在することが殆どだ。メーカーがそれを販売する方法は、専ら運を伴うもので、根本的にガチャと同等だ。メーカーからの購入にあたり、欲しい物を選んで買うことは一般的ではない。「トレーディング」の要素には、これを補完する側面もある。カードショップ等を利用して、運を通じて市場に供給された後、目当てのものを入手することは可能である。こうした商業的に特化した存在が、つまり友達なり知り合いなりとの間での交換以上の存在が最初から想定されていかのかはともかく、「欲しいものを手に入れる」こと自体は可能である。

TGCの多くでの運営からカードの供給される方法は、運が介在する、いわゆるガチャと同様のものであると述べた。これはTGCというよりかはコンピューターゲームに対して強く当てはまるのだろうが、ガチャが問題であるという意識は、一時期と比べ、非常に希薄になりつつあるように見える。TGCの場合は、特にスマホゲームにおけるガチャと比較しても、問題とされる場面が極めて少ないように思える。この差には、実体のあるものが対象であるかが少なくないだろう。実体があるということを指し、カードが実在する、と呼びたい。

カードが実在することは、ルール上の勝利を争奪する場たるゲーム以外の領域に対して、より大きな意味を持つ。TGCのタイトルをゲームとして遊ぶにあたって、カードが絶対に必要であるかというと、そうではない。それが良いのかどうかをひとまず措いておくと、厚紙にカードの名前を書いておいたものでもゲームの進行を再現できる。物理的にカードが実在していないとしても、例えばデータ上での存在であっても、「紙」の場合と同様の競技は可能だ。いわゆるエラーカードを巡る判定において、紙に対するルールの優越が確認できる。

ゲーム以外において紙として実在することは、まず流通にあたって必要とされる。流通ないし販売における制約から、運が入手を支配するような形態がある、というのも少なくないだろう。
現在ではデジタルカードゲームの類が可能であるにしても、天地開闢以来そのようであった訳ではないし、デジタル方式が物理的なTGCを駆逐してもいない。そして、装飾品というか嗜好品というか、そうしたコレクションの要素をもまた含む。この側面において、転売や盗難などの諸問題が現れる。
ゲームバランスに関わるカードの評価、平たくいえば使えるのか使えないのかを、特に部外者が適切な判断を下すことは難しい。これに対し、市場における経済的価値は部外者にも明白である。ゲームのルールすらおぼつかないとしても、カードの取引に参加することができる。そうした経済的な利益のみを目的とする参入から、最も被害を受けるのは真面目に遊んでいるプレイヤーではないだろうか。さらに、コレクターと呼ばれるような人もいる訳で、そうした層も「真っ当な」タイトルとの関係にあるとできる。

このうち、少なくともルール上の勝利を決定する過程に対しては、例えば廉価版(というのかはともかく)を用意するなど、供給を強化する必要が少なくないように思える。商業的な利益はまた別なのだろうが、ルール上の勝利を決定する場(≒ゲーム)においては、プレイヤーの実力とルールの範囲にある運との両者ではないいかなるものも、その影響力が最小であることが望ましい。経済力も当然、それらの外側にある。TGCがそもそも商業の一環である以上、経済のことを頭から消し去ることは不可能である。であるにしても、ゲームであるという建前を重視する―このことは消費者ではなくプレイヤーを想定しているかどうかと言っても良い―のであれば、イラストなりデザインなり装飾が違ったものをいくらか刷るだとか、そうした配慮が必要であろう。こうしたゲームに対するものと比べると、コレクターに対する配慮は難しい。投機の対象として捉えている人と、純粋なコレクターとを区別することは難しい。物体に対して価値を見出しいていることを区別することは、殆ど不可能であるためである。そうした物理的な存在に対する価格の高騰ないしは暴騰の発生をどうにかすることは、善悪はともかく、如何ともし難い。

https://twitter.com/osadas5 まで、質問などお気軽に。