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Vol.22「死亡届」

死亡診断

葬祭業者が遺体を取り扱えるのは、法律的に死亡が確定した後、すなわち医師が死亡を判定した時点からです。それを証明するのが医師によって発行される死亡診断書または死体検案書です。それ以前には「遺体」の取り扱いはもちろん、「遺体」に対して何らかの処置を施すこともできません。
死亡の連絡があった場合には、必ずこのことを確認してください。

死亡診断書(死体検案書)

人は亡くなった時、医師にその原因を特定してもらわなければなりません。
死亡診断書死体検案書)は、人の死亡を医学的・法律的に証明する重要な文書であり、我が国の死因統計作成の資料としても用いられます。

医師は、自らの診療管理下にある患者が、生前に診療していた傷病に関連して死亡したと認める場合には死亡診断書を、それ以外の場合は死体検案書を発行します。

医師が臨終に立ち会えなかった時は、死亡後に改めて診察し、診療していた傷病に関連した死因と認められた場合のみ死亡診断書を交付することができます。医師の最終診療から24時間以内であれば、医師は死亡後に改めて診察しなくても死亡診断書を作成することが出来ます。(医師法第20条)

死亡届

医師が交付する死亡診断書(死体検案書)の左半面が、『死亡届書』になっています。死亡届は、届出義務者が死亡の事実を知ってから、7日以内に提出しなければなりません(但し、国外で死亡した場合は、その事実を知った日から3ヶ月以内)。届出の期日が役所の休日の場合は、その日以降の最初の開庁日まで可能です。

もし期間内に届出が出来なかったときは、5万円以下の過料に処せられます。(戸籍法第135条)

届出義務者には、次の優先順位があります。
1.同居の親族
2.同居している親族以外の同居者
3.家主、地主、家屋管理人および土地管理人

届出義務はないが、届出資格がある者
・同居していない親族
・後見人、保佐人、補助人、または任意後見人

届出には先順位者がいても、後順位者が届出をすることはできます。また、届出ができる親族は6親等内の血族、3親等内の姻族までです。(民法第725条)

届出人が後見人、保佐人、補助人、任意後見人の場合、その資格を証明する後見登記事項証明書または裁判所の謄本が必要となります。

単身者が病院で亡くなったときは、病院長が届出人になることができます。
この場合は「家屋管理人」になり、届出人住所は病院施設の所在地でも良いと特例で認められています。

「公設所」とは公立病院や刑務所のことです。

届出ができる場所は、
・本人の本籍地(戸籍法第25条)
・届出人の所在地(戸籍法第25条)
・死亡地(戸籍法第88条)
いずれかの市区町村役所(役場)です。
死亡地が明らかでない時は最初に発見された場所で、列車など交通機関の中で死亡した場合はその死体を交通機関から降ろした地で、航海日誌を備えない船舶の中で死亡した場合はその船舶が最初に入港した地で、死亡の届をすることができます。

死亡届に「職業」と「産業」欄がありますが、これは国勢調査が実施される年の4月1日から翌年の3月31日まで記入します。(強制ではありません)
ちなみに今年2020年は国勢調査の年です。

戸籍

死亡届が受理されると、次のような手続きが行われます。
・戸籍への記載、住民票の抹消
・火葬・埋葬の許可
・税務署への通知

死亡届を提出すると、戸籍に死亡の記載がされ(日本国籍のみ)、住民票が消除されます。
ただし、死亡届がすぐに戸籍に反映されるとは限りません。特に本籍地と死亡届の届出地が異なる場合は、一週間以上かかることがあります。

火葬埋葬許可証

死亡届が受理されれば、火葬許可証が発行されます。
大阪市の火葬場では前日までに許可証を届け、入場時に火葬料を支払います。火葬許可証の届け方や火葬料の支払い方法自治体により異なるので注意が必要です。火葬が終われば、埋葬許可証に変わります。
埋葬許可証は納骨の際に必要になります。

税務署への通知

死亡届を提出すると、相続税法第58条に基づいて翌月末までに税務署に通知されます。死亡した人が所有していた固定資産の内容やその評価額も通知されることが一般的です。
税務署は様々な情報をもとに故人の遺産総額を大まかに判断し、相続税が発生しそうな方には『相続についてのお尋ね』を送ります。相続税の申告・納税の期限は、相続の開始があったことを知った日(死亡日)の翌日から10ヶ月以内です。

死亡届で預金が凍結される!?

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「死亡届を提出すると口座が凍結されて預金が引き出せなくなる」
とおっしゃる方が多いですが、これは誤解です。
死亡届が提出されたことは、銀行など金融機関には通知されません。

遺族が銀行に行った時に話してしまったり、死亡広告や時間紙などを見て銀行がその死を知ったりした時点ですぐに凍結され、入出金や引き落としが出来なくします。
故人の預貯金の残高は、相続人全員の持ち物になるためです。

2019年7月の民法改正により、預貯金の仮払い制度が創設されました。
この改正により、相続人であれば、「死亡時の預貯金額×3分の1×法定相続分」を引き出せるようになりました。(一つの金融機関の上限は150万円)

死亡届のコピーをし忘れた!

死亡届を役所に提出すると、原本は手元に戻りません。
それまでに必ず医師が書いた死亡診断書(死体検案書)のコピーをとって、遺族に渡しましょう。もし忘れた場合は、死亡診断書を発行した病院で再発行の手続きが必要となります。

役所でも「死亡届記載事項証明書」を発行してもらえますが、請求できる事由が限られているので注意が必要です。

死亡届の欄のコピーは不要です。記入した内容の覚えとして渡すのは構いませんが、死亡届は役所にしか必要がありません。本籍等、個人情報が記入されているので、取り扱いにはくれぐれも注意しましょう。

死産届

死産届とは、妊娠12週以降に母体内で胎児が亡くなった場合に必要となります。(流産、中絶を含む)医師・助産師が発行する死産証書(死胎検案書)をもとに、死亡地もしくは届出人の居住地で7日以内に手続きをします。

死産届を提出すると、死胎火葬許可証が発行されます。
通常の葬儀と同じく、火葬場を予約しておく必要があります。
妊娠24週以降の死産児は、24時間経過しないと火葬ができません。

死産届には、死産児の名前を記入する欄はありません。戸籍に記録されないからです。「死産した」という記録は残りません。

出産した直後に亡くなった場合は、出生届と死亡届の両方を提出します。死亡届なので、戸籍を作って除籍されます。戸籍上では出生と死亡が記載されます。

ペットの死亡届

飼い犬が死亡した場合には、狂犬病予防法に基づき死亡届の提出が必要です。飼い犬が死亡してから30日以内に、大阪市の場合は各区保健福祉センターへ届出します。

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飼い猫には必要ありませんが、環境省が指定するトラ、タカ、ワニ、マムシなどの特定動物(危険な動物)は死亡届が必要な場合があります。

本籍不詳のデメリットはありますか?

死亡届に本籍を書く欄があります。
わからなくても営業時間内であれば役所が調べて、火葬許可証に記載されます。夜間や休日窓口であれば当直当番が記載されたまま転記され、記載がなければ「不詳」と記入されます。

本籍とは、その人の戸籍がある場所のことです。
「戸籍」は本籍が記されている書面です。
本籍は、実は筆頭者が自由に決めることができます。
日本国内であれば皇居でも、大阪城でも、富士山の頂上でも構いません。

戸籍謄本・抄本といった戸籍関連の証明書を取得するには、基本的に本籍の役所に交付申請する必要があります。
戸籍謄本は、相続の手続きにおいて必ず提出を求められます。

本籍を調べるためには、以前は運転免許証に本籍が記載されていましたが、2007年以降にICチップが導入されてから、免許証に本籍の記載はなくなりました。住民票の写しを請求すれば確認できますが、火葬・埋葬許可証に記載されるのであれば、遺族が本籍を調べる手間が省けるわけですから正確なものに越したことはありません。

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表紙イラスト きむら

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