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たぶん、今日じゃない

燃えるゴミの日はいつかなってカレンダーを見たら、翌日だったんですね。
その日の私は、それだけで生き延びることができたんです。
〈音楽ナタリー津野米咲インタビューより〉

明日も生きようと思えるのって、明日やることが決まってて、その意欲に沸いてるかに懸かっていると思う。明日よりその先の来週や来月、はたまた年末や来年。そしてずっと先の予定を楽しみにしているから生きられる。そこが枯れてしまっていて、ふとした時に突如として眼前のライトが消されて何も見えなくなったら、明日どころか今日これから何をするのかさえも不鮮明になる。人が足を止めたくなる時は、そんな感じだ。

昨夜、ふとスマホのSNSアプリを開くと『赤い公園』のギタリスト津野米咲が亡くなったとの報が飛び込み目を疑った。先の三浦春馬氏の件と同様に、その文字ははっきり読めているのにまったく理解でなくて、ナゼ?と脳内がテレビ裏のケーブルのようにこんがらがる。もうこの世に存在してないなんて…あり得ないだろ。

津野さんの活動を熱心に追っていた訳ではないがSMAP「Joy!!」、モーニング娘。'16「泡沫サタデーナイト!」、遠藤舞「MUJINA」等の楽曲提供で広く才能が知れ渡っていたし、曲がりなりにも音楽を志す身としては、この人には一生敵わないといえる存在で、この人のようになりたいと思っていた。今後はもっと、スペクタクルな音楽を作るんだろうなと、信じてやまなかった。

なのに、なんで死んじゃったんだよ。意味わかんねえよ。掴んだ栄光の先は闇だらけなのかよ。人に感動や興奮を与える曲をどんなに作っても、無駄なのか?顔もわからんやつのストレスの捌け口として食い潰されるだけなのか?どれだけ音楽を愛しても、絶望しかないのか?可笑しいだろそんなの。だったら君の音楽に心を揺さぶられた俺は、ここから何のために進めばいいんだよ。教えてくれよ。

ゆっくり、人と違うペースでもいいよ。ゆっくり、生きるだけでいいんだよ。辛くなったらまた休めばいいじゃんか。死ぬことを選択肢に入れないでくれよ。急にいなくなったら、寂しいよ。

「もう許してくれ、もう十分に生きただろう」って思うことがしばしばあって。
死ぬのをためらう理由が見つからないくらい。
歌詞にもあるように「若いままの私で終えたいな」とも思っていた。

冒頭に載せた『赤い公園 / きっかけ』の歌詞についてのインタビュー。何を楽しみに人生を全うするのか、人それぞれだとは思う。女性だと、結婚して子供を育てることに生きがいを見出したり。でも彼女にとってはもう十分!ここまで!と線を引きたくなる程やり尽くした感があって、後はボーナスステージ。余生を生きるかの感覚でこれまでやってきたんだろう。そして、刻がきたと。

でも、そんなのは何の美学でもない。自分の人生の終わりを自分で決めることは何にも美しくない。最後まで命を尽くして走ることの方が、絶対美しい。歌詞の通りここで人生を終わせることになった? …ふざけんな。周りの人間や俺たちに残されたこの感情はどうしたらいいんだよ。もうさ、生きてりゃいいじゃん。今の環境が嫌なら逃げたっていいんだよ。アイドルのグループ卒業、スポーツ選手の引退、会社の定年退職がそこで人生終わりじゃないように、音楽から離れても君の価値は変わりはしないから。

たしかに今こんな世の中だし、見えてるもの意外にも怯えることが多くなったんだろう。俺だってそう。言葉ではこうして鼓舞することは出来ていても、実生活は仕事やら将来の生活の不安やらで終日気が滅入ったまま。分かる、分かるよ。俺にはよく分かる。あれだ、電話相談だかカウンセラーだか知らんけど、「気持ちは良く分かります。気にしないことが1番です」なんてクソみたいなこと言ってくる奴がいるけど、お前病みに病んで人生のドン底見たことねぇだろ!と。机上でのうのうと情報だけ集めて分かった気になってんじゃねぇ!気になるから辛いんだろうが。思えば俺は、そういった他人への反骨心でこれまで生きてこれたのかも知れない。

だから俺は、これから何があっても生き続けるよ。だって、これまでどうしても生きたくても生きられなかった人、今何かを抱えて懸命に生きてる人に申し訳ないもんな。だからさ、本当に今にもこの世から消えたくなるほど辛いなら、一呼吸おいて、明日やるべきことが自分にとって必要なものなのか、それを我慢しても暫くやり通せるのか、全部投げ捨てて休む方が正解なのか、来週までの宿題として少し考えてみよう。そしたら数日経って目覚めた時に「あぁ、あの時死ななくてよかったな」と思えることもあるから。俺がそうだったように。だからどうか、思いとどまってほしい。君が死んだら、俺は辛いよ。

もう何の言葉も届かないけど、津野さんには今までよくがんばったね、と伝えたい。素敵な楽曲の数々をどうもありがとう。天国でもギター弾いててくれよ。曲、いつか聴かせてくれ。どうか安らかに。心から、冥福を祈ります。

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