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生きものの不思議さを感じた話

大学に向かおうと扉を開けると、家の脇の植え込みでネズミか何かが死んでいた。腹には大量の蛆が湧いていた。こういうのを見るのは本当に久しぶりだった。出身が田舎のせいか、小学生の頃は登下校の最中にしばしば見かけた記憶がある。いつから見かけなくなったのだろう。
反射的に気持ち悪いと思った。当然の反応だが、3秒くらい経つと落ち着いてきて、興味も湧いてきた。専門分野的に動物の死と接する機会が比較的多いのだが、こんな自然のなかでの出来事は別物だと思う。
たくさん生まれた彼らは一瞬も止まることなくうごめき、栄養を摂取している。神経系なんて発達してないだろうし、生まれたばかりですごいなーと単純に思う。必死に生きようとしているとも、単にそのようにプログラムされているだけとも受け取れる。大学で寄生虫学の授業を受けた時も同じような似たような不思議さを覚えた。寄生虫にはものすごい数の種類があって、その種類ごとに寄生する動物種、宿主の体内で動いていくルート、成虫になる場所が決まっている。しかも種類によっては、牛に寄生するために一度貝類とバッタを経由しなければならない、なんていうルールもあったりする。どうやって動物種やその体内での位置を判別してるんだろうと疑問に思ったが、たぶん適温だったり、柔らかい臓器だったりと、気持ちの良い方を選んでいった結果なんだろう(アカデミックなことは知らない)。春先の一瞬に全力を注ぐ桜にも、似た感覚を持つ。
湧いているそれはやっぱり気持ち悪いが、現象自体には美しささえ感じた。
学位のこと、キャリアのこと、家族のこと、つい複雑に考えて、勝手に解釈を加えてしまうけれど、結局は僕も生きものなんだから、気持ちの良い方を選べばいいんだと自分に言い聞かせる師走。

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