誕生日と缶コーヒー

年下の彼氏は、いつもお金がない。
お金を出すのは、いつも私だ。
でもそれが嫌だなんて思ったことはない。出会った時から彼はお金がなかったし、応援しようと思ったのは自分だからだ。
もちろん、お金を稼いでほしいと思わないわけじゃない。ただ、今の彼を好きになっておいて、仕事しろだの、なんだのと言うのはお門違いだなと思っているだけだ。付き合う前に彼は言った。

「恥ずかしいけど、俺はバイトする気もないし、夢だけ追いかけるからさ。割り勘とか、そういうのも無理だから。だから、付き合わないほうがいいよ」

ズルいとも思う。私が彼の事を好きだってことに気付いている上での言葉だからだ。そう言われて、引けるわけがなかった。
付き合って5年間、彼が財布を出したところを見たことがない。少なくとも私といるときは出させるつもりもない。
クリスマスや、そういった記念日も彼は興味がない。
そんな彼が今年、私の誕生日に缶コーヒーを買ってきてくれた。

「はい。これ。誕生日おめでとう」

苦い、ブラックコーヒー。
私は、彼に別れを切り出した。
この気持ちを、私は自分で自分に説明ができない。
嬉しかった。初めてのプレゼントだ。
でも、別れようと思ったのだ。

私は、何故彼と別れたのだろう。
誰か教えてほしい。

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