狂乱

<登場人物>
上山…高校バスケ部一年生、小柄で童顔
中川…高校バスケ部二年生、平均的サイズ
下仁田…高校バスケ部三年生、強面
高井戸…高校バスケ部三年生、強面

明転。
舞台奥、身長高のロッカーが、いくつか並んでいる。
上手に椅子。上山がジャージを着て座っている。バスケットボールを両手で抱え、Official髭男dism『TATTOO』を口ずさんでいる。
下手より、リュックを背負った制服の中川が入ってくる。

上山(以下、上):あ、中川先輩、お疲れです
中川(以下、中):うーす

中川、ロッカーを開けて、バッグを置き、服を脱ぎ始めた辺りで、動きを止める。

中:え?
上:え?
中:あ、え?上山?
上:はい、何でしょう
中:いや、なんでも
上:はい

中川、服を着直しながら、バッグを持ち、ゆっくり下手に移動。

上:あの
中:なに!?
上:始まりますよ、練習
中:うん、分かってる。トイレ

下手より、中川、出る。以下、下手袖奥幕裏での会話。上山は聞こえていない体で居る。

下仁田(以下、下):うーす
高井戸(以下、高):うーす
中:あ、下仁田先輩、高井戸先輩、お疲れです
高:中川お前、何してんの?こんな外で
中:いや
高:あ、お前、なんで試合来ねえんだよ
中:それは、すみません。あの今、それどころじゃない
下:いいよ。中、入れよ。始まんぞ
中:その、上山、来てます
下:は?
中:中にいます
高:まじか

上山、立ち上がり、その場でボールを操り始める

高:お前、聞いた?
中:LINEに来ました。二年グループの。なんか昨日の試合で、あいつ問題起こしたって
高:そう。ファウル出しまくり、相手にフリースロー与えまくり
下:まあ、それで崩れていって結局、みたいな
中:あいつ、試合、出たんすか?
高:んなわけねえだろ
中:一年でも、偶にいるじゃないですか
下:いや、あいつ、恐ろしい程バスケ下手だから。ドリブル、二回が限界だから
高:観客席に居たらしい。こっちが3ポイント決められた瞬間、急に暴れ出して、隣の客殴って、止めに入った審判殴って、テクニカルファウル二個下:退場
中:え?
高:で、監督殴って、相手チームのチアも殴って四個
下:ダブル退場
中:なんで?
高:その後も暴れ続けて、会場は騒然としてた
中:化け物なんだ。あんな顔して
高:どんな感じだった?今
中:上山ですか
下:反省してた?
中:髭男、歌ってました
高:舐めてんな
下:きつめにいかないとダメか
中:そういうの、止めときましょう
高:俺たちも、したくないけどな
下:締めるところは締めないと
中:怖く、ないんすか
高:一年だろ。ビビる事ねえ
下:入れよ
中:はい

下手より、中川、震えながら入る。下仁田、高井戸、震えながら後ろについて続いて入る。下仁田の頭には包帯が巻かれ、高井戸は松葉杖をついている。

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