縦読み野家、深夜二時

A「これ、テイクアウト。上がりです。確認して」
B「とん汁、一つ、並、二つ、お新香、一つ、しじみ汁、一つ、あれ?しじみ、要らないです。とん汁二つです」
A「しじみ、だよね?一個は」
B「いや、とん汁ですね。とん汁二つ」
A「ちょっと、また?なんで?」
B「番号、間違えてます。伝票、それ、一個前の。今の伝票、床に落としてます」
A「かんべんしてよ、もう。鍋にパンパンなのよ、しじみ汁。俺のせい?そうだよ。俺のせいだよ。なんでだよ!」
B「なんでだよ?」
A「しじみもさ、豚もさ、同じ生き物じゃない。価値の等しい生命じゃない。豚が、しじみでもいいじゃない。なんで人は、差を付けてしまうの?」
B「かなり、遠いからですね。そこ以外」
A「つくり直すか」
B「たのみます」
A「この間にさ、悪いけど、トイレ掃除してきてくれない?」
B「当番、先輩でしょ」
A「しじみ汁、作らないと」
B「よく確認して!もう間違ってる!とん汁作ってください。しじみ増やさないで。これ以上」
A「うん…あ、うん、分かった」
B「がんばって。先輩なんですから。あ、その袋も、しじみです。ラベル見てください」
A「くやしいです」
B「散漫過ぎる。その袋は、とん汁ですか?」
A「念を押すねえ。うん、とん汁だ。おっけー」
B「性格なんですかねえ」
A「普通にやってるつもりなんだけど」
B「たいへんですね」
A「理屈じゃないんだよね」
B「かなしいですね」
A「いつか、出来るようになったら良いな」
B「わたしは、今すぐ、出来るようになって欲しいです」
A「たいへんだね。お互い」
B「ていねいに仕事して下さい」
A「よく言われるやつー」
B「見てらんないやつー開き直るなー」
A「できる限り、頑張るわ」
B「こんげつのシフトって、もう、出てます?」
A「たしか、出てたはず。え、来てない?」
B「えーっと、あ、ありました。なんか、別のとこ、見てました」
A「天然だなあ、全く」
B「なんでやねん」

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