爆破FPS戦術入門

攻撃は絶対、防衛は相対と言える。
攻撃側は自主的に動いてプラントをしなければならない一方、防衛側はプラントをしにくる攻撃側に対応するように動くからだ。
つまり爆破FPSにおける戦術とは基本的に攻撃側の「プラントを成功させ、所定の時間防衛する」ためのプランのことを指す。これを理解することで攻撃側はもちろん、防衛側の基礎戦術も理解することができる。
攻撃戦術はプラント前とプラント後の2つのフェーズに大別できる。それぞれ解剖していこう。

さて、まずプラントをするために必要なことは何だろうか。
なんとなくポイントに接近し、なんとなく撃ち合い、たまたま有利になったからプラントにいき、なんとなくその周辺で射線を抑える…そういった出鱈目な立ち回りは作戦とは言えない。駆け引きも学びもあったものではない。
第一、その戦い方では勝率がいずれ安定しなくなる。
節冒頭の提起に戻ろう。
答えは非常にシンプルで「ポイント(設置エリア)から敵を排除し、防衛側の妨害に対処しつつ設置時間を確保する」だ。
それがプラントじゃないかと言われそうだが、この具体的な認識こそが最重要だ。これがわかっていないと実際の試合中での動きを考えることができない。
このプラント前フェーズのゴールに向けて、何をすべきかを考えていく。防衛側を設置エリアから排除する方法は2つある。
1つ目は単純に殲滅、つまりキル。
これが一番確実にプラントを通せるし、プラント後の有利にもつながる。ただし、キルするためには撃ち合う必要や殺傷系スキル、ガジェット等を使用する必要があり、何らかの形でリスクを背負わねばならない。そのリスクをなるべく確実なものにして被害を抑えるためには、ポイント内に対し複数人でクロスを敷く必要がある。これが、ポイントへの入り口や射線を複数確保しなければならない理由だ。
2つ目は、防衛側を引かせる「圧」だ。
圧は、よく誤解されている概念だ。単に枚数をかけることを圧とは呼ばない。防衛側に「あ、俺は今のままだとデスするな」と思わせ、そのポジショニングを変更させるような動きが「圧」だ。だから相手が気づかないようなリソースの割き方、例えばスニークなどは圧にはならない。引かせる判断をさせるところに圧の本質はある。また、殲滅ではなく圧をかけるにとどめるメリットは、やはり撃ち合いのリスクをそこまで背負わなくてもいいという点だろう。
この2つの方法のいずれか、または両方によって攻撃側の制圧済みエリアが前へと広がり、防衛側の支配するエリアは減っていく。
こういった制圧状況の最前線のことを私は「ライン」と呼んでいる。つまり以上のことをまとめるならば、「プラントのためには防衛側のラインを押し下げる必要がある」と言える。
さて、設置エリアは確保した。しかしここで終わりではない。プラント中にプランターを守らなければならない。設置エリアが取られたとあらば、防衛側は高台や裏取り、リテイク、ローテート(配置変更)によってプラントを阻止しに来る。防衛側にとって、プラントされないに越したことはないからだ。カバーの人員を配置したり、スモーク等によって射線を切ったりといった手法で対処し、プラントを通そう。
ちなみに、設置エリアの確保とプラントを同時に行える場合も往々にしてある。十分に訓練された連携が必要だが、スピード感をもって攻めることができるので、防衛側の対処を遅れさせることができ、非常に強力である。

次はプラント後の動きだ。
当然、制圧した設置エリアを防衛側に取り返されてしまうと解除されてしまうのでマズいわけだ。これを防ぐような動きをしなければならない。シンプルに攻守が入れ替わったと考えれば、攻撃側のタスクが見えやすいと思う。
防衛側は2つの動きを展開してくる。それぞれ対処が必要だ。
1つ目は下げてしまった防衛ラインを上げようとしてくる動きだ。直接的に設置エリアを取り返そうとする、主動隊と言える。プラント後に主に撃ち合う必要があるのはここへの対処だろう。このため、攻撃ラインの押し上げを設置エリアの確保までで満足してはいけないのだ。防衛の主動を足止めし、削るために有利な位置まで前線を押し上げなければいけない。
2つ目は裏取りやリテイク(この記事では「サイトではない重要ポジの取り返し」という意味)。これによって攻撃側のラインを下げたり、枚数を削ったりする狙いがある。何より厄介なのは、防衛の主動とクロスを組めてしまう点だ。だから攻撃側としては、現実的な裏取りルートに対して十分に警戒しなければならない。理想を言うなら、主動と裏取りの2者と同時に戦ってしまうような配置は避けたい。そのために攻撃ラインを上げ下げし、戦うタイミングをずらす工夫が必要だ。
こうして分析してみると、十分な枚数がいなければプラント自体は始められても、プラント中のカバー、プラント後の動きの面でかなり厳しいことが具体的によくわかる。

メインの流れを構成する2つのフェーズを説明した。本当はもっと細かく説明すべきことがあるのだが、入門ということで概要の説明にとどめる。
最後に捕捉。
戦術の多様性は、基本的にプラント前のフェーズの部分に表れる。設置エリアにアクセスするために確保しなければならないルート、潰さなければならない強ポジなどがあるので、そういった必要条件への対処が、攻めの過程やステップとして段階的に存在しているのだ。1つのステップをクリアするための解決策をいくつも持っていれば、例えば
ステップA(3通り)×ステップB(2通り)×設置エリア制圧(3通り)×プラント位置(2通り)=全体の戦術(36通り)
のように、組み合わせ次第で膨大な戦術数と化す。
こういった攻めのステップを意識することは、試合中勝つために必要な動きをリアルタイムに考えることにつながり、柔軟に立ち回ることが可能となる。これは簡単なように見えて、実はプロゲーマーでもなかなか実践が難しいらしく、競技シーンでもこの部分での失敗は多くみられる。だから実戦はまず難しいかもしれない。ただ、試合を俯瞰する意識は戦術面においてかなり重要だということをご理解いただきたい。

この解説を読んだあなたは、次の試合から戦術の何たるかを弁えて立ち回ることのできる頭脳派プレイヤーの卵だ。試合を重ね、その中で今回の解説内容を実感していただければ幸いだ。
以上で、本記事を終える。ご覧いただきありがとう。

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