【解説】VALORANT Champions 2021: Berlin – Day12 – Finals GAMBITvsACEND MAP1 ブリーズ

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概要
GMB→マップ構造や枚数配置など、比較的理屈に沿って組み立てる戦術が多い
ACE→相手の弱みを突くためにラウンドごとに狙いを変える駆け引きが多い

GMBの理屈に沿った戦術に対しては積極的なピークや局所的枚数差が刺さるだろうというのがACEの方針

ブリーズ→理詰めで組み立てるチームほど攻撃が苦手。防衛側のポジションが多彩なため、攻撃側は絶対的に射線&情報の不利がある。逆に言えば、たとえ厳しくともそういった防衛側の敷く射線に対し勝負することで人数を削れれば、防衛側の配置に大きな穴が開くので一気にセットの起点にできる。リスク管理と勝負強さを持ったチームのブリーズは強い。強いて言うなら、A攻めなら洞窟+ミッドorホール、B攻めならBメイン+ミッドの確保がマップ構造に素直なセットの方針。

【前半GMB攻撃】
・R4
GMBは初手でミッドを制圧。サイトへのエントリールートと射線の確保&他サイトへの切り返しの選択肢という2つのメリットを押さえる意図。そのままB進攻するが枚数を削られたため切り返し、キルジョイと合流して枚数を増やしつつAを攻める方針に。GMBキルジョイがDDを押さえていた&ACEの枚数密度が低かったためGMBがAサイトで孤立していたACEヴァイパーを倒し、CTまでラインを確保してプラント。枚数有利を作れたGMBは無理にCTのラインを維持せず、ピラミッドのラインまで下がるが、GMBのピーク管理を掴んだACEケイオーのクラッチでACE勝利。

・R7
GMBはミッドで1キル取られたものの逆にGMBジェットがラインを押し上げてネストまで確保、ローテに対するロック役として機能。実際ACEサイファーを狩っている。GMB主動はA攻め、ホールを確保したGMBヴァイパーだが、クロスを組めず倒される。GMBキルジョイがサイトに対する直接的な射線でACEケイオーをキル。これはACE側として「GMBがGMBジェットを起点にBローテする」という判断でAサイトから洞窟に対しクロスを解いていたことによる。逆にGMBとしては初めからA攻めの方針。結果的にローテをするACEの選手と各所で戦うGMBの選手、という構図になっていた。

・R9
GMBのブリーズ攻め基本方針、ミッド確保。L字とDDを押さえれば防衛側の流入は防げるのでライン上げの代償が小さく、リターンも大きいのでコスパがいい戦術。一方で今回GMBはAメイン側を放棄。枚数をBに集中させた割に進行が遅れたためACEもA側からラインを上げる。BサイトACEを囲い込むGMBをさらに囲うACEという配置。ACEの囲い込み側の選手が撃ち合う前にサイト内の戦闘をGMBが制し、枚数有利&Bにプラントするためのラインを確保。情報取得を放棄したエリアへのACE進攻を読み、スピード感をもってサイト内を制圧したGMBだったが、中盤までで時間を使いすぎた影響でプラントが出来なかった。ブリーズという開けたマップでは、理詰めの進行は時間を要してしまう。

・R11
GMBは序盤のセット(初手でミッドを広く取る)。これを読んだACEジェットがL字でピークし1キル。同時刻、GMBはホールを押さえに行く。ホールは攻撃側が唯一有利な撃ち合い勝負ができる場所であり(ミッドも対等と言えば対等だが、ここは勝負を仕掛けるのではなくきちんと枚数と射線を管理してラインを上げるべき)、Aセットの起点を作るために勝負を仕掛ける価値が大きいので積極的に攻めるべき場所。取れればAサイト内へのエントリールート及び射線が増やせる。一方で防衛側もそれをわかっているのが競技シーンであるので、大会等のブリーズにおいてホールの攻防は注目ポイントの一つ。このラウンドではGMBの「ミッドを押さえ→ホール勝負を制し→それにより情報有利を得てACEの枚数を把握し→Bプラント」という美しいブリーズ攻めが見られる。ホールの攻防、ミッドの攻防の両方を制したという言い方もできる。どちらかを落とした時点で攻撃側はかなり不利になるものの、有力な勝ち筋の1つなのでリスクを背負う価値は十分ある。

・R12
GMBヴァイパーのウルトを使ってのGMBのラッシュ。過程が少ない攻めの戦術はミスを減らせるが通りにくい。このラウンドはACEが1人ずつリテイクに行って順々に狩られてしまったという様子がはっきり見える。おそらくACEとしては素早いリテイクで意表を突く狙いがあったと思われる。

【後半ACE攻撃】
・R15
ACEはミッド確保→B攻めという選択。枚数を削られた防衛側がいかにラインを保持できないか、いかに情報を取れないか、いかに一点突破されやすいか、というブリーズの特徴がよく表れたラウンド。こういった特性を踏まえても、やはりブリーズ攻撃はセットを緻密に組むよりも撃ち合いを仕掛けて起点を探す方が無難。よく「ブリーズは攻撃有利」と言われるが、厳密には違う。「マップ構造的に間違いなく攻撃が不利だが、防衛側の枚数が削れた瞬間一気に攻撃有利に転ずる傾向がある」というのが私の持論である。それをこのラウンドで実感してほしい。ちなみに、攻撃側としてはこの局所的枚数差をいかに作るかが鍵なので、セットフェイクなど本命を絞らせない戦術の重要度は高い。なおGMBが何度もやっているのだが、防衛側の一番有効な対策は「はやく寄る」である。

・R16
ACEのA攻め。ラッシュで無理やり局所的枚数差を作ったうえホールまで確保。攻めの要件(サイト内への複数射線&エントリールート、局所的枚数差、ローテ阻害など)を満たせていることが確認できる。一方興味深いのは、その攻め方を理解したGMBが残った枚数を一気に集め、局所的枚数差を可能な限り無くすことで勝ち筋をつかみに行く判断をしたこと。結果的にラウンドはACEのものとなったが、この駆け引きが面白いためピックアップ。

・R17、R20
初期配置における防衛側のポジション的有利とはどういうことか、GMBヴァイパーが見せつけた。

・R18
またしてもAを直接ラッシュするACEだが、時間を要した&ホールを確保しなかったことでGMBのローテを許し、局所的枚数差を作れなかったため攻めは通らない。このあたりからACEの駆け引きに迷いが感じられる。もう少し柔軟に動くのがACEの特徴だったが、その良さが出せなかった点が試合結果につながったと考えられる。

・R22
ACEのBラッシュだがGMBキルジョイのポジション有利もあって逆に枚数不利に。ちなみにこのようなラッシュをしてきた場合、防衛側はラインを下げることでサイト内こそ取られるもののローテしてくる味方と合流できるので、局所的枚数差を埋められ、負け筋を潰せる。このラウンドでもGMBキルジョイはキルこそしているが、下がる動きをしている。

・R23
直接攻めが通らないACEはミッドを使ってエントリールートを増やしたうえでBを攻めるが、ラッシュを警戒する意図でGMBがBに枚数を多めに配置していたためポジション有利が加わってACEとして絶望的なBサイト攻めになってしまった。

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