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Travelers②

朝は7時に起きる。
夜遅くまで起きているあなたはまだしばらく起きてこない。あなたが目覚めるまでにリビングの掃除をする。音を立てて起こすことのないよう細心の注意を払いながら。
朝食はヨーグルトとトーストとコーヒー、それに時々フルーツを添えて。苺と柑橘とメロンは好き、でもそれ以外のフルーツをあなたは食べないので。夏になると出せるものがほとんどなくなってしまうのがこまりもの。コーヒーは基本少し薄めに入れてミルクと砂糖を少し入れる。時々思いきり濃いのがほしいと言われるのでその時にはエスプレッソを。トーストは8枚切りの薄いもの、こんがりと焼いてバターとジャム。ヨーグルトはプレーン。
私も基本的には同じものを食べる。メイドだから別のテーブルで食べようとしたら、あなたがとても悲しそうな顔で頷いたのでそれ以来ずっと同席している。誰かと食べるのはとても楽しいとあなたは言った。会話はしていなくても誰かが側にいてくれるのがうれしいのだと、それはそれはとても楽しそうにおっしゃってくださって。だから私も同じものを同じときに食べる。
朝食を食べたら洗濯をする。週に一度はリネン類を全部。私とあなたの2人なので洗うものはほとんどないのですぐに終わってしまう。前はもっともっとたくさん洗って洗濯物の山に埋もれていたような気もするのですけれど、その記憶はどこから生まれたものなのでしょうか。
その後はリビング以外の掃除。庭の手入れ。窓の掃除や換気扇は週に一度を目安に考えながらも、汚れに応じて臨機応変に対応。
昼食のメニューはあなたのリクエスト次第。けれどPCの前で仕事をしながら召し上がられることが多いので、汁物はNGなことが多いのですが。それでもどうしても食べたいとおっしゃられてあなたがリビングまで出てくることもあるのですけれど。特にラーメン!あなたはラーメンがとても好きで、私はスープがつくれるようになりましたわ!中華鍋を振ってつくる炒飯はまだまだだとは思いますけれど、それでもあなたが喜んで召し上がってくださるので私は少しでもうまくできるように勉強中なのです。
昼食のあとには少しお昼寝。夕飯の準備の前に近くに買い物に出るので本当に少しだけの時間になりますが、その昼寝の時間がないと私はなぜか動けなくなってしまうのです。あなたも自分のことは気にせずに休みなさいと言ってくださるので。
目が覚めたら近くの商店街で買い出しを。店先でその季節で一番美味しいものを、そしてあなたが喜んでくれそうなものを探すのは私にとって何よりの喜びなのです。
夕飯も基本的にはあなたのリクエスト次第。それにさらに栄養面でのことも考慮しつつメニューを組み立てる。あなたが嫌いなものをどうやってメニューに組み込むかも大事なお仕事です。ずっと健康でいられるように。ずっとおそばにお仕えすることができるように。
放っておくとずっと仕事に没頭してしまうあなたのためにお風呂の準備は毎日行います。外に出掛けることはあまりないのだから入らなくてもいいじゃないかとごねられたりもしますが、それはそれ。お風呂に入ってきれいな体でお布団に入る幸せは大事です。
あなたがお風呂に入っている間に皿を洗い、あなたの寝室の準備を整えます。その間にあなたはお風呂から上がられて仕事部屋に戻られてしまうので、私もお風呂をお借りして床につきます。
それが私の日常。ほぼかわりなく繰り返されていたもの。これからもかわりなく続いていくと信じていたもの。