ドラフト会議雑感①ヤクルトのドラ1指名
ヤクルトのドラフト1位指名はチーム最大の弱点である左腕を埋めるために当然競合覚悟で大学NO1左腕・金丸夢斗に行くと思っていた。しかし、高津監督がドラフト直前に「いいバッティングしているんで」と言ったことによって、状況が大きく変わった。この発言によってスポーツ報知とサンスポはドラ1予想を金丸から大学NO1ショート・宗山塁に変えていたが、球団が公表していない選手の手術情報を勝手に暴露する高津監督の自己顕示欲の強さを考えたら野手に対していいバッティングをしているという当然のことは絶対に言わないから打撃のいい投手を指名すると思った。その瞬間に大学通算打率.174だった金丸指名の可能性は低くなった。ドラ1候補で打撃がよかったのは今秋のリーグ戦で打率.294(ドラフト前)だった篠木健太郎と、投打二刀流の柴田獅子の2人だが、現実的に金丸を指名しないことは考えられなかったし、高津監督なら打率.174でも打撃がいいと言いそうだったから筆者はやっぱり金丸をドラ1予想することにした。
ドラフト当日、1回目の入札で指名したのが金丸でも篠木でも柴田でもなく、まさかの中村優斗だった。大学NO1右腕の中村を指名すること自体に驚きはないが、投手が打席に立たない愛知大学野球連盟の投手に対していいバッティングしていると言った高津監督に驚いた。無名高校出身でDH制のリーグ戦でプレーする中村の打撃は素人に分かるわけはないし、到底あの発言から中村と予想することはできない。高津監督の自己顕示欲の強さを改めて思い知らされた瞬間だった。
なぜ金丸ではなく中村だったのか
球団が補強ポイントにぴったりハマる金丸より中村を高く評価して指名したのなら構わないし、金丸を獲れなくても中村を獲れたのはいいことではあるが、去年のドラ1西舘昂汰同様に体の丈夫さを決め手に指名したのなら到底評価することはできない。なぜなら体の丈夫さというのは不確定要素だからだ。その証拠に西舘は高校大学と大きな故障なく西舘本人も体が丈夫なことを自分の強みと言うほどだったが、プロ入り後すぐ肘痛に悩まされ結局トミージョン手術を受けるに至った。本当に体が丈夫かは本人には分からないし、プロのスカウトもメディカルチェックをおこなわない限り正確な状態は把握できない。あくまでも今まで大きな故障がなかっただけで、今後の健康を保証するものではない。故障歴で獲得を見送ることはあっても体の丈夫さという不確定要素を過信してはいけない。それがドラ1なら尚更だし、西舘の故障がなくてもその考えに変わりはない。投手には故障が付き物だし、以前より野球界全体の平均球速が上がったことで故障リスクも高まっている。西舘を含めた去年の東都ドラ1セブンのうち3人がトミージョン手術を受け、その3人とは別に2人がコンディション不良に悩まされたことも偶然ではないだろう。
高津監督が中村の指名理由について「そして何よりタフなところ」と言っていることから中村についても体の丈夫さが金丸を上回る決め手になったのは間違いないだろう。世間では金丸の競合を巧妙に回避して中村の一本釣りに成功したと言われているが、筆者は金丸の故障歴を危惧して大学で故障歴のなかった中村の指名に切り替えただけだと見ている。去年は競合覚悟で武内夏暉を指名しているし、金丸と違って武内に故障歴がなかったことから競合覚悟で指名しようとすんなり決まったのだろう。金丸が去年の武内以上の逸材と言われているにもかかわらず指名回避する理由は直近の故障以外に考えにくい。ドラフト前の予想では中村の1位指名はDeNAくらいで十分に一本釣りの可能性があったし、DeNAが金丸を指名したため、たまたま中村の一本釣りに成功したにすぎない。
筆者は西舘や中村を指名したことが不満なのではなく、体が丈夫という不確定要素を指名の決め手にするなと言いたいのだ。不確定要素を理由に指名方針を変えたり、本来獲得できる選手を逃したりすることはとても残念だ。去年のドラフトでも本来の補強ポイントだった即戦力左腕の古謝樹と細野晴希が残っていたにもかかわらず右腕の西舘を指名した。高校時代に活躍した奥川が故障に苦しんでいる一方で、高校大学と故障に苦しんでいた木澤や、来日前にトミージョン手術経験のあったマクガフのように故障歴がありながら投げ続けている投手もいるからドラフト時点での故障歴の有無は当てにならないし、少なくとも決め手にするのは間違っている。それに悲しいことに今のヤクルトでは故障歴の有無にかかわらず高確率でプロ入り後すぐ故障するから故障歴の有無は関係ない。ドラフトで投手を指名する時には故障歴の有無ではなく純粋に能力を評価して指名してもらいたい。
拙い文章を最後までお読みいただき、ありがとうございました。