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【マダミス】圧倒的推理とロールプレイ、エモさの全てを兼ね揃えた完璧な作品「Why done it ~探偵たちの推理~」【ネタバレ】

※本記事にはオンラインマーダーミステリー「Why done it ~探偵たちの推理~」のネタバレがあります。作品の特性上、一度しか体験できないため現行・未通過の方は閲覧をご遠慮ください。

【作品紹介】
「Why done it ~探偵たちの推理~」 シナリオ制作:つとむな様

突然ですが、みなさんはマーダーミステリーをプレイする際、あるいはプレイする作品を選ぶ際、推理とロールプレイのどちらに重きを置いていますか? 
もちろん「どちらも」なんでしょうが、私は、実は前者の方に割と比重を置いているタイプだったりします。推理:ロールプレイ=6:4……いや、7:3くらいですかね。ロールプレイはもともと好きなので全力でやりますが、シナリオを選ぶ際は、あくまで「しっかり推理があるか否か」で選ぶことが多いです。だって「マーダーミステリー」だもの。TRPGとマダミスの境界線はけっこうセンシティブな問題というか、気にする方が多いので触れないようにしますが(個人的にここは製作者側の意図次第と思っています。プレイヤーが決めるものではない。受け取るのは自由だけどね。)、ミステリーが好き、そのうえでロールプレイが好きだからこそマダミスというものにこれだけハマっているわけです。
そしてもう一つ、いわゆる「エモさ」。
シナリオの内容として推理とエモさを比べた場合も、選ぶのはやはり前者。しっかりとした推理があって、さらにエモさがあればなおよし。エモいけど推理はイマイチだと、個人的にはそこまで響きません。あくまで、ミステリーを楽しみたい、推理小説を自分で解いてみたい、そこが自分にとって一番大事な部分なわけです。
さて、そこで本作「Why done it ~探偵たちの推理~」ですが……。
文句なし!!!圧倒的推理とロールプレイ、エモさの全てを兼ね揃えた完璧な作品でした。こんなシナリオは「雨やみ探偵」以来かも。

そこで、まずちょっとこちらの作品を紹介しましょう。
Boothの作品紹介より抜粋。

◎向いている人
・120分以上のマーダーミステリーの作品を3本以上プレイしている方
・がっつり推理をしたい方
・探偵になりたい方
・普通のマダミスに慣れてしまった方
・メリーバッドエンドが好きな方

https://booth.pm/ja/items/3145668

はい、最高ですね(^q^)
特に最後の一文。特に最後の一文。(大事なことなので2回)
ちなみにこの作品は29本目。セッションはどれも基本的に3~6時間、10時間超えのシナリオも何度か体験済み。ワーオ。私のためにあるようなシナリオじゃん!(???)
かくして集まった4人はほぼいつメンの4名。全力で挑めます。

セッション概要

11/5 14:00~21:00(感想戦含む)
PC1/神崎さおり:うしお
PC2/田無りゅうや:せと
PC3/新堂たける:ゆう
PC4/姫宮るみ:ねかま

おかしいな……キャラは男:女=2:2。プレイヤーも男女22……なのに私、りゅうや(男キャラ)だぞ……?なにかおかしい……

前半戦

あえて書こう、「前半戦」と。
プレイ済みの方ならこれがどういう意味か分かっていただけるはず。
まずはお決まり、HOの読み込み。そしてちょっと変わっている(凝っている)のは、オープニングにムービーが用意されていること。読み込みが終わって6分強のムービーを見るわけですが、まさかこのムービーに重大なヒントがあっただなんてこの時の我々は知る由もなく。
「お~、凝ってる!」拍手パチパチ。
そしていつものマダミスのように、全体会議、調査、カードの譲渡交換、密談などを経て、議論を詰めいく4人。この後は当然、投票からのエンディングが待っています。私の担当した「田無りゅうや」の目標は、シンプルに被害者を殺した犯人の特定がメインで、個人的な小さな目標が3つ。至ってシンプル。被害者の昔からの親友ポジで、普通ならいわゆる探偵役ってやつですね。完全にシロ。アリバイもほぼある。なので、探偵ポジだと思ってました、ええ。また探偵ポジか~そろそろ犯人やりたいななんて思ってました、ええ。そう、この時点では。
4人でロールプレイを楽しみながら議論を詰めていくのですが、……おかしいんです。なにかがおかしい。議論を詰めれば詰めるほど、犯人が特定できなくなっていくんです。投票の時間になると、あわれ4人とも「誰が犯人か分からない」状態に……。「マジで分からん」「え、誰なん?」「これ誰も無理くね?」「(^q^)」
誰も投票の筆が進まない(笑)私なんて、3人の名前全部書いては消し、書いては消し状態でした。
せーの、ドン!で投票し、結果を見ておのおの「(りゅうや)まっシロなんだよなぁ」「いや~、さおりもシロですよぉ」「え~(るみ)疑われてる?!」「たけるはなんもやってないよぉ」口々に呟きます。
結局、最多投票は「分からない」。
まあそれが妥当な気がしました。
ところで、実はこのシナリオ、投票の犯人記名に際して、ちょっと異常なまでに細かいルールが設けられていました。それは、

このシナリオは、「なんとなく一番怪しいからこの人」「消去法でこの人」といったあい まいな推理を推奨していません。目標達成できなくなるかもしれませんが、犯人を特定できない 場合は、“分からない”と記入して下さい。

と「分からない」を認める一方で、

ユドナリウムの盤上にない名前や曖昧な名称での指定は無効となります。

という、逆に言えば「ユドナリウム盤面上にある名前なら記載してOK」ととれる大胆な指名も認めているのです。
なんだこれ、と思いますよねフツー(笑)。特にマダミスに慣れていれば慣れているほど、この一見相反するルールは不思議に思えるわけです。
結局、さきほども言ったとおり我々4人は「分からない」という結論でゲームを終えました。終えた気でいました。この時点で4時間17分
エンディングHへ進み、各自セリフを読みあげます。そしてここでエンディングの動画を再生。エンディングにもムービーがあるなんて、本当に凝ってますね~。凝ってまs……んん?
エンディングムービーを見終えて戻ってきた我ら4人は一斉に叫びます。
「「「「は?!」」」」
ロールプレイなんてあったもんじゃない(笑)そりゃそうだ。だって我々が演じていたキャラは、過去の話の中の登場人物にすぎなかったんだから。
え、訳が分からない笑笑笑
私は誰? りゅうやじゃなかったの?笑

カオス渦巻く卓上、進行役のゆうさんが自らも混乱の半笑いのなか、エンディング記載のとおりにユドナを操作しました。
するとあら不思議!暗い館だったユドナの盤面が一転、青空にきらめく紺碧の海とクルーザーに大変身!!!
ファッ~~~~~(^q^)!?!?!?!?!?!?!?

後半戦

すっかりエンディングを迎えたと思っていた我ら4人、もう全員なにがなんだかぽっかーんです。リアルに「(^q^)」こんな顔。
「え、なにこれ?!」「どういうこと?!」「続くの?!」「8人?!」
そう、エンディングを迎えたと思った物語はなにも終わっておらず、続きがあったのです。というより、ここから始まったのです……。
ゆえに先ほどまでは「前半戦」であり、ここからはいうなれば後半戦。というより、前半戦より「前哨戦」というべきかもしれません。
どうやら、我々は「神崎さおり」でも「田無りゅうや」でも「新堂たける」でも「姫宮るみ」でもなく、「わたしたち」であったらしい……。
新の登場人物は、わたしたち4人と、それぞれその婚約者と合わせて8人。
新しく配布されたゲーム進行シート。そこに記載された「考察フェイズ」「解答フェイズ」「推理フェイズ」「トゥルーエンド」の文字。混乱を通り越して笑い転げるプレイヤーの4人。
はああああ?!トゥルーエンド?!ここにきて?!
そして追い打ちのように渡される、追加ハンドアウト笑
追加?!追加ってなに?!私は「田無りゅうや」じゃなかったの?!
そう、ここでようやく、我々は「PC」から「PL」になったのです。
ファーーーーーーーーーーーーーーー!!!(^q^)www
あまりの予想外の展開に頭パーン。しかもPLはそれぞれ自分で名前を付けろという。婚約者にまで。パードン???
「ねかまの恋人って名前なに?!w」いや知らんがな!!!もう会話も大混乱(笑)一瞬、元旦那の名前でも付けてやろうかと捻くれた考えが頭を過ったのはひみつw
いや~~~、なんですかこれ!!!こんなの初めて!!!
始まる「自分のロールプレイ」!!!なんだよ自分のロールプレイって!!!自分のロールプレイをやりながら「田無りゅうや」の無実を伝聞で訴える!それぞれが「プレイヤー自身のロールプレイ」をしながらPCとして演じたキャラの無実を証明し、真実を暴く!!!
あ、新しい~~~!!!!!!!!!
ちなみに後半戦は、ほぼ真実にたどり着いてました。ただ、動機の部分がどうしても見えてこなかった。これはひとえに、犯人(たち)の立場にたって物事を見るという推理における基本的な部分の一つを忘れていたためだと思います。マダミスは、基本的に犯人を特定することが最終目標です。そこに至るために物的証拠・時系列・動機を洗う。そしてこの場合、動機というのは一番弱いというか、それだけで犯人特定は難しく、あくまで他の証拠の補強程度であることがほとんど。
ところが今回のケースでは、時系列や物的証拠から、犯人はほとんど確からしいレベルで特定できていた。しかしその動機だけまったく分からない――というまさに逆のパターンだったのです。
どう考えても子供たち犯人以外にはありえない。しかし動機がまったく分からない。どちらにせよ他の3人は間違いなく子供で投票するだろうし、ここは外部犯の可能性を挙げてみようと思ったのはそのためでした。動機が分からないなら外部犯も可能なのではないか。島にはモーターボートがあったな。逃げた子供は4人。子供たちは「仮面の男」と不自然な呼称をした。今、クルーザーに乗っている正体不明の人物(わたしたち)も4人。「わたしたち」の過去の記憶はハンドアウトに一切ない。でも詳細に16年前の事件を知っている。おや、一応辻褄は合うじゃないか……。
投票になって、私が考えていたのはこうでした。なるほど、どこかの探偵に毒されすぎですねワハハハハ(笑)

鮮やかすぎる伏線の回収劇

犯人は推理のとおり子供たち。そしてその動機は、ストーリーにあったとおり。先にも述べたとおり、今回一番大事だったのは、犯人(たち)の立場にたって物事を見るということでした。しかしマダミスでそれはなかなか要求が高くないか~? 事件を体験したわけでもないし……ん? あれ?
そう、気づきますよね?
実はこのシナリオが本当に上手いのは、犯人たちの動機を考えさせる機会・導線が、ちゃんと用意されていたという点にあります。
ここで、ゲームの一番最初に立ち返ってみましょう。
一番最初にしたのは、オープニングムービーを見ることでした。そのムービーでは、ふうきと思しき仮面姿の男が、4人の子供たちに推理小説らしい物語を読み聞かせています。ここで注目すべきは、「ふうきと思しき男のセリフはカッコ書きで、地の文はそれ以外の誰かがしゃべっている」ということです。ふうきはあくまで4人の子供たちに向けてしゃべっている。それを、「誰か」が「わたしたち」に語っている――。そこで、いったん「それじゃあ、今日はここまでにしよう」とふうきは物語の読み聞かせを終えています。そう、ここで「ふうきによる物語の読み聞かせのシーン」は既に終わっていたのです。
ところがムービーは続き、「誰か」は語り続ける。舞台は深蒼島という孤島らしい。ふうきと思われる男と子供たちも出てきた。そこからは、その「誰か」が「わたしたち」にむけて語り始めた物語。それを「わたしたち」は見て、聞いて、知った。「誰か」からプレイヤーキャラクターとして紹介された4人のキャラを自分で選んで、「16年前の事件」の登場人物として演じたわけです。だから、演じ終えた=一度目のエンディングを終えた時点で、「誰か」の物語(言葉のとおり、話を語る行動のこと)は終わった――。そして、話は「今」あのクルーザーの上に戻るわけですね。「誰か」については話すまでもありません、犯人のひとりでありPL1の婚約者である元副部長。この卓でいえば「もも」です。
そう、ただの趣向を凝らした演出用ムービーだと思っていたオープニングから、既にヒントは出されていたのです。「これは16年前の事件の物語ではない。こうして、その事件を体験してもらい、物語として読み聞かせた『今このとき』こそが、この『Why done it ~探偵たちの推理~』の物語なんだ」と。体験したなら分かるだろう、その登場人物たち(子供たち含む)の気持ちも、行動も、そう動機も――。
いや~~~~~、上手い!!!上手すぎる!!!!!!!
このムービーの作りについても、後から見返して「巧いなあ」と返す返す唸るばかりです。
本当に、最初から最後のオチまで何一つ矛盾のない、完璧なシナリオでした。推理にしても、要求されるロールプレイにしても。
そして物語の結末、これはもう筆舌に尽くしがたいほど素晴らしかったです。いわゆるオープンエンドになっていたのも、「わたしたち」プレイヤーがPCとPLそれぞれを味わったからこそだと思います。4人が出す答えは違っていて当然。そこに正しい、ただ一つのエンディングなど存在しない。すべてを見て、知って、その上でどうしますか? わたしたちは最後、そう問いかけられます。この物語の結末は、あなたたちに任せますよ――と
はい好き。大好き。死ぬほど好きです、こういうの。ほんと一番好きなエンディングですこれ。
タイトルすら美しい。「ホワイダニット」。タイトルから教えてくれてるじゃん……大事なのは動機だよって。
完敗で乾杯。
また、このシナリオをこのメンバーで回れたのは本当に僥倖でした。
長時間の同卓、3人ともありがとう!

最後に

思わずnoteタイトルに入れてしまいましたが、本作は圧倒的推理とロールプレイ、エモさの全てを兼ね揃えた完璧な作品だと思います。
しかし、取り扱っている事件が「虐待」と「拐取」(「保護」との境界の難しさ)であるため、この作品をGMでやろうという気にはどうしてもなれません。私が犯人に子供たちを最後どうしても挙げたくなかったのも、ここが一番の理由だったりします。(このあたりは思想の問題なので、マダミスというゲームを遊ぶうえで誰かに話すことでも問題にすることでもない。そのためこうしてnoteに書いた。)

シナリオとして「雨やみ探偵」と並ぶほど好きなので、機会があれば観戦にいきたいです!誰かやってくれ!そして観戦させてくれ!

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