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『猫さんの決断』No.3

猫さんが、沼の前で辛抱強く待っていると、ブクブクと水の中から空気の泡が吹き出し、沼の主が現れた。チョビヒゲ猫は主のあまりの大きさに後ずさったが、猫さんは平然としている。

「ソナタが落とした枝はこの枝かな」

沼の主は、チョビヒゲ猫が爪で弾いた金の枝を見せた。チョビヒゲ猫は、警戒しながらも枝をチョイチョイすると、沼の主は、そうであろうと金の枝を手渡して、そのまま沼に還ろうとした。

「ちょっとちょっと」

猫さんが慌てて主を呼び止めると、主は沼から頭を出した状態で止まった。

「もう一個くれないんですか?」

主は訝しげな顔をして、猫さんを見た。
猫さんは、先日木の枝を落としたら、ピカピカの枝をくれたと話すと、主は笑い、そうかそうかと、銀の枝を陸に放り投げて沼へ還っていった。

チョビヒゲ猫は驚いたが、猫さんはシメシメと、その枝を拾うと、また草むらに隠した。チョビヒゲ猫は、その主と猫さんの関係をなんだか奇妙に感じたが、猫さんには何の疑問もなさそうだった。チョビヒゲ猫は気になったが、久しぶりの散歩に疲れたので、猫さんと自治会館へと戻った。

チョビヒゲ猫の感じた違和感は正しかった。

主からもらった金の枝は、夜半に鼻を突くニオイを放ちながらメタメタと溶け出した。驚いたチョビヒゲ猫が慌てて枝を裏の井戸に投げ込むと、井戸の中から年始に現れた龍が飛び出てきた。チョビヒゲ猫はまた驚かされたが、怒っている龍に事情を話すと、龍は自分をその沼に連れて行って欲しいと言いだした。




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