『鏡の冬』

あなたはだれ だれですか

鈍色の すりガラスの向こうから

わたしに言葉を 書き綴る

お返事 差し上げられないわ

プラスチックの わたしの指では

なぞることすら 叶わない

そのうち あなたは立ち消えて

のこした文字は ぼやけゆき

けれども わたしは忘れません

夏の匂いが 立ち込める

うつろう季節の 節々に

夜毎に哥う ヨタカのように

だれの心も 奪えない

囀りかけては 去るのだろう

わたしはだれ だれですか

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