『のっぺらなだれ』

南に帰った わたしを追って

のっぺら雪崩が つららをつり下げ

歳末の街を 覆い尽くすの


あなたの顔が 見たくなって

西へ 戻ってきたのでしょう

怯えてちぢんだ おじぎ草

摘み取り逃げてきたんだよ


北に向かった わたしを抱いた

どっかのだれかが うずらのお家で

最後の景色を 飾りあげるの

あなたの顔が 見たくなくて

東へ 戻ってゆくのでしょう

抱えきれない お土産を

あたため空へと放つのよ


のっぺら雪崩が 溶けてゆく

のっぺら雪崩が 消えてゆく

わたしきっと 出船の最中に

溺れて死んでしまうでしょう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?