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いちまい、たりない

『いちまい、たりない』
会計主任『相田しげる』の年内最終日勤務日の話。何度数えても千円札が1枚足りない。足して終わりにしようと思ったが小遣いがプリカのため自腹を切る現金がないので、意を決して他部署に「千円分働かせて下さい!」とお願いしてまわるが失敗続きで千円も得ることができない、ついには会社の外に仕事を求め出発する。

主演は会計一本で働いていた中年男性。
会計しかしていなかったために、他部署でも仕事にならない。元来真面目なため外に働き口を探すが、この時点で「1000円必要」が「ちゃんと働くことに」趣旨が刷り変わっている。「なにか働けないか?」そとの商店街でパン屋なのに折り紙で飾りを作ったり、豆腐屋なのに高所作業で電線をはったり、メガネ屋さんなのにいっぱいの綿を運んだ。何件かのお店で働いて夕方になったころ、子供たちに連れられて商店街の入口に行くと。作った飾りが散りばめられ、はった電線がイルミネーションに電気を通し、綿を雪に模した大きな木がクリスマスツリーになっていた。「これを作ったのはおじさんだよ」ぼんやりツリーを見ながら、これを作ることをできたのかと感極まっていると、商店街の代表が「これは手伝いのお礼だよ」と1000円分の商品券をくれた。

「これじゃないけど、まぁいいか」
吹けない口笛は細く白い息となって夜空に溶けた。

会社に帰ると部下から「1000円札の束に2000円札が1枚混じってましたよ」と言われる。

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