【創作】しがないOLの独り言

 疲れた。
 そんな言葉では表現できない位の疲労感にふらふらになりながら、
乱暴に部屋の鍵を開けた。
 面倒だけど物騒な昨今、ドアをくぐった後は、がちゃりときちんと鍵をかけて、その代わりに履いていたパンプスは足を振った勢いだけで脱ぎ飛ばす。

 OLと言えば聞こえはいいが、その他大勢の一人。今日も一日中電話の取次ぎだった。
 やり甲斐がどうのという話ではない。ただ単に、電話が嫌いなだけだ。出来たら電話を取りたくない。そんな事は出来ないけれど。

 化粧品と筆記用具とが散乱したごちゃっとした小さなテーブルに、何とかスペースを作って、スーパーで買ってきた半額の鶏そぼろ丼と、サラダスパゲティをそこに置く。ついでに買ってきたノンアルコールビール。気分だけでも愉快になりたかった。…ノンアルコールじゃ酔えない事に、今気づく。

「しんどいなぁ」
 もう、漠然と何もかもが。
 死ぬ勇気はないが生きる気力もない。
 最近、返信もしないせいで通知が鳴る事も減った携帯電話に視線をやると、金曜日の文字が偉そうな顔をしていた。

「…日曜日、仮面ライダー観なきゃ…」
 それは、私の今現在の唯一の楽しみ。
 それだけで、少し心が浮上するから、人間って不思議だ。


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