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今回は、ランニングや各種スポーツ動作時に生じる、膝関節内側部痛の1つである【鵞足炎】について投稿します。

スポーツだけでなく、日常生活で歩くことが多い人などにも多いのが特徴で、変形性膝関節症の患者さんにおいてもこの鵞足炎の症状が併発していることが多い印象があります。

臨床において膝内側部痛は多く経験していると思いますが、鵞足炎に対する正しい知識や技術がないと悪化させたり、長引いたりする可能性があると思っています。

その為、

①鵞足炎の病態と解剖学
②鵞足炎の評価と治療

に分けて投稿していきたいと思います。

知識の整理や確認のために参考になればと思います。


1.鵞足炎とは?

​鵞足炎は「鵞足(がそく)」と呼ばれる膝の内側下方の脛骨の周囲に炎症が生じる病態です。
英語ではPes Anserine Bursitisと呼ばれます。

「鵞足」とは、脛骨の内側(膝から5-7㎝ほど下)に位置し、縫工筋、半腱様筋、薄筋の3つの筋肉の腱の付着部です。

そもそも鵞足という言葉は、縫工筋、薄筋、半腱様筋の 3つの腱が脛骨粗面の内側に停止してくる様子が、ガチョウの足に似ていることに由来していると言われています。

ガチョウ

2.鵞足炎の症状

鵞足炎では膝の内側下方5-7㎝ほどの場所に痛みが生じ、その部位に腫れや圧痛、熱感などが生じます。

膝の内側、やや後方の疼痛、突っ張り、腫れが主な症状です。

接地時につんと来るような痛みを自覚することが多いですが、膝屈伸時に引っかかるような違和感も出ます。
※このなんとも言えない痛みは僕も経験があります…


初期は動かし始めに違和感があっても、ウォーミングアップなどで体が温まると楽になり、繰り返しの動作でまた徐々に違和感が出てきます。

症状が進行すると、温まっても違和感が消えず、練習の後半や長時間歩行時に痛みが再発するケースが多いです。

さらに進行すると、ウォーミングアップ後も痛みや引っ掛かりがなくならず、練習ができない、痛くて歩けないという状態になります。

運動時や階段昇降時、歩行時に疼痛が増す場合もあり、重症になると何もしていなくてもうずくように痛くなることがあります。

3.鵞足炎の原因

発生の要因はオーバーユースがメインですが、特に鵞足を構成する3つの筋群の疲労が蓄積し、柔軟性が低下しているとリスクが高くなります。

同時に、鵞足を構成する腱が膝内側の骨とこすれやすい状況(例えば膝が内側にぶれる動きや、もともと膝がX脚気味など)にあると、さらにリスクが高まります。

また、鵞足は縫工筋、薄筋、半腱様筋という3つの筋肉がまとまってくっついている場所であるため、動作負荷が集中しやすい構造となっています。

これら3つの筋肉は、膝関節屈伸や膝から下を外側に捻る動作で働きます。

よって鵞足炎は、膝関節屈伸を頻繁に行ったり、膝から下を外側に捻る動作のある運動を継続的に行ったりするアスリートの方に多く見られる疾患です。
※knee-in.tou-outなどの人が起きやすい

特に縫工筋、半腱様筋、薄筋と呼ばれる筋肉に硬さが強い場合に頻繁に生じます。

また、アスリートだけでなく変形性膝関節症の人にもよく見られます。

さらには、直接的な打撲のような外傷も鵞足炎の発症の原因になります。

原因となるスポーツは多岐にわたりますが、中でも多いのがランニング、バスケットボール、サッカー、水泳の平泳ぎといった、膝に繰り返しの負担のかかるスポーツです。

特に下記のような要因が重なることで鵞足炎へと発展します。

サイズや形が合っていないシューズの使用
運動する際のフォームや方法が不適切
準備運動やストレッチ不足
運動不足解消のため急に運動を始める
体や筋肉が硬い
もともと膝に痛みや変形などがある など

4.鵞足炎の病態

鵞足の痛みの多くは外傷がなく発症しますが、手術や外傷により起こる場合もあります。
多いのは、ACL(前十字靭帯)再建後などです。

痛みは局所的に表れ、スポーツではランニングなどの走るとき、それ以外では長距離歩行や階段の下りで生じることが多いのが特徴です。

鵞足炎の病態として知っておいた方が良いことは、

・停止腱に加わる牽引力が原因となる腱症
・停止腱間の摩擦が原因でなる鵞足包炎

の2つがあるということです。
※ここはめちゃくちゃ重要です。
単純に筋肉が引っ張られて痛くなっていると思っている方が多い印象です。

つまり、引っ張られて痛みが出るだけでなく、緊張した鵞足構成筋と脛骨内側部が膝の屈曲伸展の際に摩擦が起きて生じることもあると理解していないといけません。

どちらにしても停止腱の緊張が、疼痛を誘発する要因になるため、3本の停止腱のうちどの腱が疼痛と強く関連するかが分かれば、理学療法の方針が立てやすくなります。

因みにこの摩擦で起きている場合、圧痛が鵞足部だけでなく、膝関節内側裂隙や脛骨・大腿骨の内側にも認められるケースがあります。

👇ポイント
ここで重要となることは、触診のスキルです。
圧痛所見を正確に行うことが出来なければ、なんとなく脛骨の内側に圧痛があるから鵞足炎ですねって判断してしまう可能性があります。
膝の内側部には内側半月板、内側側副靭帯、内側膝蓋下脂肪体、内側裂隙、大腿骨内側上顆、脛骨内側顆また各筋肉の起始停止部など様々な圧痛好発部位があります。
その為、膝関節の解剖学と触診のスキルがとても重要になります。

5.鵞足構成筋の機能解剖

縫工筋 (sartrius)
薄筋 (glasilis)
半腱様筋 (semitendinosus)

最低でもこの3つの筋肉の解剖は頭に入れておきましょう!

鵞足を構成する筋肉の解剖学

【縫工筋】
解剖学的特徴
・スカルパ三角を構成する組織の一つ。

筋機能の特徴
・股関節に及ぼす運動は、屈曲、外転、外旋
・膝関節に及ぼす運動は、屈曲と下腿の内旋
・あぐらをとる動作は縫工筋固有の作用

臨床との接点
・過度なknee-inアライメントが要求される場合、膝関節の動的安定には、
 縫工筋をはじめとする鵞足構成筋による制動が不可欠
・全力疾走時において時々生じる上前腸骨棘剥離骨折には、縫工筋の過剰な 
 収縮が原因の場合が多い。
・水泳の平泳ぎでの膝内側部痛には、原因が鵞足構成筋なのか、内側側副靭
 帯なのかを十分に鑑別する必要がある。

【薄筋】
解剖学的特徴
・長い帯状の筋で大腿の最も内側を走行する。
・膝関節近位で縫工筋の後縁に沿うように走行し、その後鵞足を形成する。
・股関節内転筋群の中で唯一の2関節筋。

筋機能の特徴
・股関節内転及び屈曲に作用し、膝関節には屈曲に作用する
・下腿の内旋に作用する
・下肢が固定された場合には、骨盤を前傾させる。

臨床との接点
・鵞足部に疼痛を訴えるほとんどのケースで、薄筋の圧痛所見を認める。
・股関節外転位における膝関節伸展矯正にて鵞足部に疼痛が誘発される場合        
 には、薄筋が影響している。

【半腱様筋】
解剖学的特徴
・半膜様筋の上を走行する。
・停止腱は鵞足を形成する。

筋機能の特徴
・股関節伸展、膝関節屈曲に強力に作用する。
・股関節内転にも補助的に作用する。
・下腿の内旋の作用は、半膜様筋より半腱様筋の方が強い。
・下肢を固定すると骨盤を後傾する。

臨床との接点
・走行中の急制動では、膝関節伸展位で股関節の過屈曲が強要されるため、
 肉離れを起こしやすい。
・立位体前屈において骨盤前傾の制限因子になりやすい。
・ACL再建術に半腱様筋を利用した場合には、筋出力バランスが外側優位と
 なる。



①superficial longitudinal fibrous bundle:縫工筋腱の表層を斜走する線維
②deep  longitudinal fibrous bundle:縫工筋の真相で斜走する線維
③薄筋腱
④半腱様筋腱
※工藤慎太郎(編著):変形性膝関節症.運動療法のなぜ?がわかる超音波解剖.P159.医学書院.2014

鵞足を構成する筋のうち、最も表層に位置するのが縫工筋で、その深層に薄筋と半腱様筋があります。

これらの間は互いに脂肪性結合組織で結合されています。

👇ポイント
何らかの原因で鵞足部に炎症が生じると、同部分の脂肪性結合組織に瘢痕化が生じ、鵞足部に生じるストレスが強くなります。

ちなみに
縫工筋、薄筋、半腱様筋は浅鵞足と言われ、浅鵞足の深部には半膜様筋腱があり、深鵞足とも呼ばれています。

右下肢内側面における鵞足の走行
※北村清一郎.馬場麻人(監修)工藤慎太郎(編集):運動療法その前に運動器の臨床解剖アトラス.P375.医学書院.2021

👇ポイント
半膜様筋の停止部の一部は、鵞足の深層で脛骨内側面に扇状に付着する。

半膜様筋の停止部を考えると、鵞足部痛の原因筋として半膜様筋も考慮する必要があるのでは?と思いますよね。

臨床においては、薄筋腱による原因が多いとされていますが、他の筋や腱による症状が全くないということはありえないので、可能性の一つとして頭に入れておきましょう。


今回の記事は以上となります。
今回は鵞足炎の病態と解剖学についてまとめました。

まだまだ知らなきゃいけないことはたくさんありますが、臨床を行う上では今回の内容は最低でも頭に入れておいた方が良いですね。


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