第64回短歌研究新人賞候補作「仮入部」
仮入部
折田日々希
坂道をのぼる幾つものローファーは四月の汗とチューニングする
手作りのポスターひしめく踊り場のセロハンテープにある必死さよ
もう一度後輩になる 高校も吹部を選ぶ僕の背すじは
英単語帳に貼られるカラフルな付箋みたいな仮入部員
サックスのタキ先輩が「血液型なに?」と聞いてくる楽器体験
ビー玉のころがる先を決めるよう 校舎はどこもト長調です
新任の顧問フータが指揮棒を振り上げるまで吸われない息
合奏を床に座って見る僕の耳の上をよぎるクレシェンド