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“隻腕”クライマーのパラクライミングTALK⑧

片腕のクライマー・大沼和彦が主催する、パラクライマーたちによるインスタライブ。日曜日の夜に不定期でゆる~く開催。悪ふざけだったり、パラクライミングへの熱い思いだったりが繰り広げられています。

パラクライミング普及のために、地元でのイベントの立ち上げを模索する大沼選手。パラクライミングはいまだ、世界大会への渡航費は選手の自腹というマイナースポーツ…まずは知ってもらわないと始まらない!


▼今夜のお相手は…

高野正 選手(RP3)

▼4 kgの重りを背負って、500手登り続ける

大沼和彦(AU1):今日はビーチさん(濱ノ上文哉選手・B1)と地元・笠間市のスケボーパークに行って。そのあと、お世話になっているクライミングジムのボルテックスで登ってきました。

10月にはジャパンシリーズがあるから、それに向けてもトレーニングしなきゃ。ビーチさんは既にグルテンフリーを始めていました。

高野正(RP3):早えーよ。

大沼:高野さんは調整はどれくらい前からやります?

高野:2~3か月前。もう始めてるよ。指の皮が破けちゃって、それが治り始めた。

大沼:自分も1か月前くらいから始める。

高野:1か月でなんとかなる?

大沼:自分の場合はスタミナと体重を軽く絞って、いつも通りジムで登る。あとはお酒を我慢するとだいぶ体重が落ちる(笑)

高野:俺は持久力トレーニングをする。指の皮がむけたのも、4 kgの重りを背負って、オープンハンド、3本って決めて、500手登り続けたから。

大沼:すげー!

高野:それが終わってボルダーを始めたら、ちぎれた。500~600手は全然行ける。ふつうに登っていてもあんまり負荷がかからない。ガバホールドを3本で、しかも第二関節しかかけていないっていう風にして。低いグレートから始める。10aから始めて500手。

大沼:スタミナが半端ない!?自分は高校生のときに長物トレーニングをしていたが続かなかった。

高野:それをやると持久力がめちゃくちゃ上がる。2か月前からそれを続けると、感覚に慣れてくる。1か月はスタミナをつけて、残り1か月で調整。

大沼:自分はジムではルートを2本トライして、そのあとボルダー。登れないときは、家でハンドグリップで負荷を与える。オートビレイがあるといいんだけれど、県内にはなくて栃木県まで行かないと。

▼見た目に分かりやすい障害と、分かりづらい障害

大沼:何年か前に、健常の人と障害の人が一緒にやるコンペに参加した。あんまりレベルがバラけないように工夫していた。

高野:インスタのフォロワー数が多い人とコラボしたい。荻窪のコンペでは、パラクライミングの目隠しで登るブースが設けられていて、緒方良行選手とか藤井快選手とかが体験していた。コンペにバンバン出るのも手かな。勝つとかそういうのを求めているわけではなくて、いろいろな人に知ってもらいたい。大沼くんは手が使えないとか、結城周平くん(AL2)は足が使えないとか、分かりやすいけど、俺の障害は分かりにくい(手術の影響で左足首が曲がらない・力が入りにくい)

大沼:高野さんはそれでも強いからオープンクラスでもイケちゃうのでは?

高野:オープンクラスは難しい。課題によっては何もできなくて終わっちゃう。パラクライマーって分かる何かがあればいいのに、Tシャツとか。日本代表ユニフォームを着て行くのはちょっと気が引けるし、JPCA(日本パラクライミング協会)って書いてあるだけで、パラクライミングっていうのが分かりにくい。この人、パラクライマーなんだっていうのが分かるものがあるといい。

大沼:そういう目印みたいなものがあるといい。自分はボルテックスの店長さんが“片腕登坂”って書いてあるTシャツを作ってくれた。

高野:そういうのすごくいいよね。

大沼:自分の登り方が一発でわかるように、人形のマークに障害のある部分に色をつけるとか。店長さんと考えていこうかな。

▼みんなが同じ土俵に立てる仕組みを

大沼:笠間でパラスポーツのイベントができないかな。10月か11月に、笠間の「芸術の森公園」でボルテックスが仮設の壁を出店する予定になっていて、そのイベントに、ゲストとして参加して、笠間にこういう人がいるんだということを知ってもらうとか。認知度を上げていくことにつながればなと思っています。笠間市でイベントを開催するにあたって、クライミングのイベントを単体でやるのではなくて、芸術の森公園でイベントを開いている時に、一緒に場所を借りてやった方が人が集まるんじゃないかなとか。イベントの企画と予算をまとめて文章にして笠間市に提案を出したい。
あとボルテックスで「クライミング道場」みたいなものを開いて、毎月開催したい。9月に、その道場をやろうと考えていてビーチさんが来てくれるという話もあるので、アイマスクをして課題を登ってもらってもいいかな。

高野:
俺も全然行くよ!

大沼:
毎月開催して、良かった点・悪かった点を振り返って、次の開催に向けて修正して、それを繰り返して。人数が増えてきたらチーム戦をやりたい。勝ったチームには賞品を出したいな。ジムで片手で登るような課題を考えて常連さんとセッションすることはたまにあって、その延長で、少しずつパラクライミングの認知度が上がっていけば。親子で参加してもらって、その中で「知り合いに障害のある人がいますよー」って話が広がって、パラクライミングが広がっていったら。1回だけポンとやるのではなくて、継続的に月1回くらいやった方が人が離れないのでは

パラクライミングを広めるにあたって、ほかのパラスポーツも同じように苦労している。ビーチさんも、ほかのパラスポーツを体験して、そうやってコミュニティを広げていけたらいいなって話していた。どのスポーツも同じこと思ってるんじゃないか。

高野:テレビでパラ陸上の選手が国際大会に出るために資金集めに苦労しているっていうのを見た。

大沼:
健常のスポーツクライミングの選手ですら、海外への渡航費は自腹だったりする。

高野:実績がある選手はスポンサーがついて、そこからお金が出たりするけど、そうでない人は自腹。海外の人はいいよな。

大沼:自分と同じクラスだったスペインの選手とかは、国際大会3戦全部に出ていたけど、お金どうしてるかな?今度、SNSで聞いてみようかな。

高野:RP3の人に話を聞いたことがあって、向こうは国を挙げてバックアップしてくれているみたい。コロナになってから少し難しくなったみたいだけど、国がバックアップしているところはヨーロッパでは多いんじゃないか。

大沼:ワールドカップと世界選手権、全部に参加しようとすると、渡航費だけで百数十万かかる

高野:助成金とか、自治体によって制度があったりなかったり。金額も違うし、オリンピック・パラリンピック種目になっているかどうかにもよる。

大沼:自分もワールドカップ・インスブルック大会(オーストリア)のときには、笠間市からスポーツ奨励金という名目で少し援助してもらった。みんなが同じ土俵に立てる仕組みができるといいですね。

(了)

▼障害別クラス分けについてはこちらの記事を↓

▼“パラクライマー”大沼和彦【日曜日のインスタライブ】22年8/7


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