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雑談に時給は発生しないので

 ひとり娘もこの春から小学生になる。子供を産んで6年。この期間は本格的にアルバイトを雇って、現場を彼らに任せることがほとんどになった。アルバイトスタッフはおおよそ1年〜1年半で入れ替わる(この期間は私が望んだところであり、それをイメージしてみんな働きにきてくれている)。

 どんな人たちが働いているかというと、これまで高校中退の17歳で働き始めたスタッフもいれば、私と同じ(当時40歳)くらいで働き始めたスタッフもいた。将来ゲストハウスを開業したいひともいれば、次の道を考える時間を取りたいとやってくる人もいる。男女の比率でいうと、少し女性の方が多い。9割以上が県外から渡鳥のように一定期間のすみかを目指してやってくる。

 出産前もアルバイトスタッフは数名いたけれど、その際は私自身もポストインしていたのでいわば寝食を共にしていたような感じで、まぁ、ぶつかったりすることもあったけれど、よくいえばしっかりぶつかれる状況だった。

 しかしながらこの6年は前述の通り、現場を任せることが多くなった関係で、スタッフと「一緒に」働く時間はほとんどなくなった。毎月のミーティングはすれど、基本的には私がポストインできない日にスタッフに入ってもらい、私がポストインする日はスタッフに休んでもらう。そういう体制なので、すれ違いが多く、うまくぶつかれるタイミングがない。毎度、各スタッフが働き出して半年したくらいに、コミュニケーションがうまくいかないなと思うことが多くなってきた。特定のスタッフとコミュニケーションができないということではなく、全体的にそういうことが多くなってきたわけなので、原因はつまるところ私、または私が作っているこの体制にあるのだと思う。

 私は自分の性格として、コミュニケーションが取れないということに(ネガティブな意味で)敏感だということに、数年前に気がついた。例えば、日本語を母語としないゲストがいるとして、英語でのコミュニケーションが可能であればストレスはないのだけれど、英語も漢字もジェスチャーもダメ、加えて相手がコミュニケーションをのぞんでいないそぶりを見せようなものなら、ズーンっと胃が重くなる(それがゆえに、これまで語学や点字などを学び、コミュニケーションに人一倍興味があるのかもしれない)。

 子供が1歳足らずで、まだまだ言葉を発することができなかったとき、「ヴーヴー!」と1日中うなっているような時期があった。思い返すと、あの頃も精神的にきつかった。目の前の生き物とコミュニケーションが取れればいかに心が晴れるだろう…と毎日その小さな生き物を見ていた。

 何気ない会話をどうとるか。その雑談に時給が発生しない以上、雑談を強要することはできない。いや、そもそも雑談は強要したりされたりするものではない。こいつと雑談したいな、と思ってもらえる人徳が必要なのだ。


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