バーチャルさんは見ていた2 ~Vtuberバブルの発生~

 前回ではVtuberを運営したり、またはVtuberが所属したりしている企業がどんな感じで分かれているかまでを説明したけれど、今回はもう少し具体的にその中身を見ていこうか。

 まず、各企業に所属するVtuberの「登録者総数」を比較すると、数の上では「upd8(Activ8)」が500万を超えるチャンネル登録者を持つ圧倒的な首位。続いて「にじさんじ」が180万人、続く「アップランド」と「エンタム」がどちらも140万人台で競り合っている。
 これだけを見ると、なかなかバランスがとれているように見えるかも知れない。
 数の上ではね。

 ところで昔少年ジャンプで連載されていた漫画で『幽遊白書』というのがあるんだけど、キミは読んだことがあるかな?
 もちろんなくても構わないんだけれど、それに「魔界トーナメント編」というストーリーがあるんだ。
 ここでは三つの大きな勢力が魔界で均衡を保っていて、長くにらみ合いを続けているという設定でね。主人公たちがそれぞれに勢力に所属する物語が最初に展開されるんだが、このそれぞれの勢力には。

 ・どこもその勢力の王が圧倒的な力を持っていて、部下たちとは大きな力の開きがある

 という共通点がある。
 この漫画を持ち出した理由もそれなんだけれど、今のVtuberが所属する各企業もこれと概ね似たような状況にあるんだ。
 まず「upd8(Activ8)」の場合、キズナアイと彼女のゲームチャンネルの合計で、チャンネル登録者数は360万人を超えている。もちろんこれはVtuberの中でも桁違いの数字だけれど「upd8」の合計チャンネル登録者数を考えると、現在もおよそ全体の7割は彼女一人の登録者ということになる。

 もちろんキズナアイはあくまで特別なケースだけれど、似たような傾向は他の企業にもある。事情が違うのは「にじさんじ」と「ホロライブ」だけれど、こちらはまた別に説明する必要があるから後に回そう。
 次に「アップランド」だけれど、ここは看板娘でもある電脳少女シロがやはり強い。
 彼女の登録者数はゲームチャンネルとの合計で概ね60万人。アップランドの総合登録者数が140万人なのを考えれば、概ね4割を彼女が支えていることになる。
 次に「エンタム」は、ここは前の2社とやや違い、トップのミライアカリに続いて二番手にいる猫宮ひなたもチャンネル登録者数がとても多い。アカリが73万人、ひなたが46万人。つまりほぼ二人でチャンネル登録者総数の9割を占めているわけだ。

 こう見るとなかなか極端なバランスになっただろう。
 ただ断っておきたいのは

 ・Vtuberの人気=チャンネル登録者数 という考え方は、現在どこまで正確な実態を反映しているかは不透明な部分もある


 ということだ。
 その理由も後で説明するつもりだけれど、今回はチャンネル登録者数にしぼってもう少し話を続けようか。
 さて、それぞれの勢力のトップがわかったところで、次に「にじさんじ」と「ホロライブ」のトップ、それにそれぞれの勢力のチャンネル登録者数がナンバー2、ナンバー3にいるVtuberのことも見てみよう。
 
 ・upd8(合計500万)
 2位  YuNi 22万人
 3位  織田信姫 14万人

 ・にじさんじ(合計180万)
 1位 月ノ美兎 31万人
 2位 静凛 17万人
 3位 樋口楓 15万人

 ・アップランド(合計140万)
 2位 ばあちゃる 9万人
 3位 もこ田めめめ 8万人

 ・エンタム(合計140万)
 2位  猫宮ひなた 46万人
 3位 もちひよこ 4万人

 ・ホロライブ(合計69万)
 1位 ときのそら 21万人
 2位 白上フブキ 9万人
 3位 ロボ子さん 7万人

 参考に他の人気Vtuberの数字も確認しておこう。

 ・輝夜月 89万人
 ・ヨメミ 34万人
 ・田中ヒメ・鈴木ヒナ 32万人
 ・ゲーム部プロジェクト 32万人
 ・アズマリム 17万人
 
 大体このあたりにしておこうか。もっと詳しく知りたい人は
 
 バーチャルYouTuberランキング
 https://virtual-youtuber.userlocal.jp/

 というのがあるので、そこを確認してくれればいい。
 こうして並べて数字を見ると、まずはっきりとわかるのが、それぞれの企業のトップVtuberと2位の間にはかなりの差があることが改めて確認できるということだ。
 そうした現象が発生している理由はもちろん色々あるんだけれど、まず重要なのはそのVtuberが「いつから活動していたのか」という部分になる。
 
 そもそもVtuberがネットで話題になったのは、去年の1月頃からだと思うけれど、当時活動していたVtuberはまだあまりいなかったからね。
 だからVtuberのブームを見るとき、まず起点になるのはおおよそこの前後。大体

 ・2017年の冬から2018年の初頭にかけて

 というのがポイントになる。
 そして、現在も圧倒的な人気のあるVtuberのほとんどはこの以前から活動していた先駆者でもあるというのは極めて重要だ。しかしそれだけに

 ・トップグループの人気は先駆者の強みによる部分が大きく、まだ競争相手が少なかったから急速に増えた

 という側面は否定できない。
 だから逆に今のようにVtuberの数が増加して、飽和状態になっている状況では、今後一部の例外(ピンキーちゃんはいいぞ)を除けばもうこんなにチャンネル登録者数が一気に上伸する現象は起こらないだろうといういい方もできる。
 そう。
 今回、すでにVtuberのバブルが終わっている、と分析している理由のひとつはそこにあるんだ。
 ようするに短期的なブームの影響があまりにも大き過ぎたんだよ。

 例えばミライアカリの場合、まあ彼女はそれ以前から引き継いだチャンネルを引き継いだこともあって、10万人からの登録者数スタートだったんだけれどね・・・活動開始からその年の12月までは緩やかに推移している。ところが12月だけでチャンネル登録者数が12万人から一気に20万人を突破し、1月31日には42万人を超えた。
 彼女の登録者数は現在およそ73万人だから、そこからさらに30万人を増やしたわけだけれど、2017年の12月から2018年の1月末までの増加量と、それからほぼ一年間の増加量がおおよそ同じだと考えると、まさにこれは「バブル」だったといえる。

 https://ytranking.net/channel/2202/chart/

 そこでこの時期に活動していた他の人気Vtuberの同時期、そして現在のチャンネル登録者数も見てみると

 ・キズナアイ (アイチャンネルのみ)
 2017.12 90万人
 2018.2 147万人
 2019.1 230万人 

 ・輝夜月
 2017.12 1万人
 2018.2 46万人
 2019.1 89万人 

 ・電脳少女シロ(チャンネルのみ)
 2017.12 5000人
 2018.2 32万人
 2019.1 59万人 
 
 ・ときのそら
 2018.1(12月不明) 4万人
 2018.2 7万人
 2019.1 21万人

 ・富士葵
 2018.1(12月不明) 1万人
 2018.2 3万人
 2019.1 18万人

  となっている。

YouTubeランキング より
https://ytranking.net/

 このうちときのそらと富士葵の伸び率がやや低いのは集計開始時期が1月からと、すでに「バブル」が発生した後だったためだね。キズナアイはミライアカリ、輝夜月、シロほど大きな影響は受けていないが、それでもかなり高い伸び率であったことがうかがえる。
 このことから現在も人気トップに君臨しているvtuberはこの時期(バブル期)に注目を集め、上手くそれを利用できた人が中心だということだね。そしてこうした「Vtuberブームが後続」企業を後押ししたことも間違いない。

 さて、長くなってしまったので今回はこのあたりまでに。
 次回はこのVtuberブームがどのような影響をもたらしたのか。また当時のVtuberの活動がどのようなものだったのかを見てみよう。

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