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妄想と現実をうろうろする女 後編


前編はこちらです。


11月30日。最後の日。あたしは彼のメッセージを待っていた。何度も携帯を覗く。

飲み会から帰った彼から、メッセージが届いた。


「ただの男の子じゃないよ?髪サラサラ~✨って褒められる男の子だよ」

「サラサラ~?どんな子なんだろな?もう!気になるでしょ!笑」

「髪の毛さ、ガキん時から褒められてて、最近も褒められたから自慢してみた」

・・・確かに、いつも謙虚な彼から聞く、初めての自慢話だった。

「へー、褒められるくらい綺麗なんだ!それは自慢できるねー(о´∀`о)」

「そ。街中で髪の毛サラサラ男子居たら、俺かも!(ˊᗜˋ*)笑」

なんてことない、彼の無邪気なメッセージ。

これまで、お互いの見た目とか年齢の話なんてしたことはなかった。知っているのは、彼の身長くらい。そしておそらく一人暮らしの転勤族で、平成生まれだろうってこと。あたしにとっての彼は、あのかわいいアバターであって、頭がよくて一緒にいて楽しい、ちょっとやんちゃな男の子だった。

だけど、最後の日に気づいたのは、彼が現実の世界に存在する、男性だということ。


ーー街中で髪の毛サラサラ男子居たら、俺かも。

彼の言葉がぐるぐるまわる。そしてあたしは、彼が消えたその日から意識的に、そして無意識に探しまくった。

髪の毛サラサラ男子を。

街ですれ違う20代~30代の男性の頭部だけを見る。しかもガン見。そして振り返って後ろ姿まで目で追っていた。

どんな髪質?こんな感じなのかな。短髪、それとも長いの?しっとりサラサラ系だってある。髪の色は?たぶん黒だな。ああもう、サラサラっていっても、いろいろあるじゃん。

最近も褒められた?誰に?女の子?なんだか悔しい。


あたしは彼を探した。名前(本名・下の名前だけ知っていた)をつぶやきながら半泣きで。今思えば、あの時のあたしは、職務質問されてもおかしくないくらい、怪しい人物だったと思う。

近くに感じていたい。ほんの少しでいいから面影を感じたい。その一心だった。

‥‥でも結局は、わからないものを探すなんてことは無理。この街に住んでるわけがない。そもそも、どこに住んでるのさ。あたしは途方に暮れた。なぜ、彼は最後にそんなことを言ったのだろう。


ずるいよな。会えなくなった今も、追いかけさせて。

あざといっていうか、計算してるというか。きちんとしているひとなのに、ちょいちょいあたしの心を引っ掻き回す。まぁ、そーゆーとこが好きだったんだけど。

今でも、街中で風になびく髪を見かけるたびに、胸が苦しくなる。あたしは、今でも君のことを思い出すんだよ。

お願い。もっかい、あたしの前に現れてよ。あたしのこと、いつもみたいにかわいいって褒めて。あのときみたいに、笑わせてよ。あたしも君のこと、いっぱい癒してあげる。

今でも都合よく勝手に好きでいてごめんね。思いが強すぎて、自分でも引いてる。もし、あたしがnoteに君のことを書いてるのを知ったら、「なーに書いてんじゃい!笑」と優しく叱って。

でも、いいでしょう?だって君はあたしにとっての夢で、王子さまで、やんちゃなかわいい男の子で、最初からあたしのこころの中にしかいないんだから。


彼との最後の日、あたしはぼんやりとスマホを覗いていた。いたるところで飛び交うメッセージに心が追い付かないまま、時間だけが過ぎていた。

23時45分。あたしだけに向けた、とびっきりのこっそりメッセージが届く。胸が詰まる。うれしい、今までで一番近くにきてくれた。

目の前がにじんで手が震えていた。

やっとの思いで彼にメッセージを送った時は、時計の針は0時を回っていた。

彼はもう、泡になってしまっていた。


最後の日にお礼の言葉ひとつ送らない、薄情な女だと思ったでしょう。でもね、ちゃんと書いたんだよ。子どもみたいなメッセージ。これが精いっぱいだったんだ。好きって書けばよかったかな。

あたしの大切な宝物だから、ほんとは誰にも見せたくない。でも、やっぱり君にわかってほしいの。


ありがとうだよ。いつかまた、あたしを見つけて。



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書いてしまった、秘密の話。みなさん、気分を悪くさせてごめんなさい🙇‍♀️どこまで本当かって?それはご想像にお任せします。

この記事は、みなさんからの「みたよ」を確認しだい、そーっと心の中にしまいます。

今回、記事の公開方法につきまして、たくさんの方々にアドバイスをいただいたうえで、このような形にしました。貴重なご意見をありがとうございました。

最後までお読みくださり、ほんとにほんとにありがとうございました!心から感謝いたします。


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