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東京大学の先生から学ぶ「紅葉のしくみ」 日光植物園紅葉ガイドツアー

文化の日に、日光植物園の「紅葉ガイドツアー」に参加してきました。

「日光植物園」は、東京大学大学院理学系研究科附属植物園(小石川植物園)の分園で、おもに高山植物や寒冷地の植物の研究と教育を目的とした施設です。

毎年春と秋に、園長の舘野正樹先生による園内ガイドツアーが開催されています。東京大学の先生のお話を間近で(しかも無料!)聞ける、贅沢なイベント。このガイドツアーが大好きで、心待ちにしていました。

集合場所まで、てくてく歩きます。
園内は黄色く色づき、歩道にはカサカサの落ち葉がいっぱい。

ツアーの参加者は40名ほど。なかには日光植物園がはじめてという方もいらしたので、植物園の紹介がありました。そしていよいよ、ガイドスタートです。

花のしくみ

日光植物園に咲く花はよく「地味だ」と言われるのだそうです。たしかに、園内に咲く花は白やクリーム色、ピンクだったり、紫や水色が多いイメージ。色鮮やかな花はあまり見かけません。

ですが、そもそも赤い色の花は自然でなく、人間が作ったお花なんですって。
もとからある赤い花は椿やハイビスカスくらいで、これらの花々は鳥に花粉を運んでもらうために赤いのだとか。また、花に香りがあるのは、夜の虫たち(蛾)を呼ぶため。

鳥たちも、赤い実が大好きなのだそうです。

ウメモドキ


赤い建物は実験室。
カラマツもクロマツも、黄色に紅葉していました。

園内をゆっくり歩きながら、先生のガイドが続きます。
この日は気温17℃くらい。日なたはポカポカあたたかく、ダウンジャケットなしでも歩ける散歩日和でした。

紅葉のしくみ

先生から紅葉のしくみについてお話がありました。

葉っぱには光合成をするのに必要な葉緑素(クロロフィル)という色素が含まれるため、緑色をしています。

しかしながら秋になると、木々は葉っぱからたんぱく質を回収し、冬じたくを始めます。そのタンパク質の回収の過程で、葉っぱが赤や黄色になってゆくのが「紅葉」なのだそうです。

葉が赤くなるのは、アントシアニンという色素が多く含まれているから。
葉が黄色くなるのは、なんの色素なのか不明なのだそうです。
(カロチノイドと言われますが、カロチノイドは水に溶けないのに、葉っぱの黄色はよく水に溶けるから間違いなのだとか。カテキンかもしれないとのこと)


やがて、ゴーゴーと川の音が聞こえる憾満ヶ淵近くに到着しました。

植物園は京都のように作られた庭園ではないので、木々の種類も色づきもさまざま。森ならではの紅葉を楽しむことができます。

黄緑、黄色、オレンジ、赤。
空のキャンバスに描かれた、カラフルな葉っぱたちにうっとり。

むらさき色のナゾ

園内で一番濃く色づいていたのは、ドウダンツツジです。
しかしながら、赤というよりくすんだ紫色に近い。ときどき見かける、くすんだ紅葉をちょっと残念にかんじること、ありませんか?

でも安心してください、赤くなりますよ。

というのも、紅葉はまず葉の表側からはじまります。
葉の表側のたんぱく質が先に回収され、赤や黄色の色素を作ります。なので葉の裏面は、まだ緑色。この状態がむらさきに見えるのです。

これから数日すると、ドウダンツツジの葉の裏側も黄色から赤になり、うつくしい紅葉になるそうです。

ちなみに、日が当たるところから紅葉がすすむのは、葉っぱに残った色素(アントシアニンなど)が光を吸収して増えるからなのだそうです。

学名について

植物の学名の付け方についてのお話もありました。カエデの木には、よくアーケル(Acer)という名前がついているそうです。このAcerとはラテン語で「裂けてる」という意味で、葉の形から付けられたのだそう。
また、イロハモミジ(以呂波紅葉・ムクロジ科)の学名はAcer palmatum Thunbで、ラテン語では「てのひらの形に裂けてる」という意味なんですって。

日光植物園は小石川植物園の分園。朝ドラ「らんまん」の主人公・牧野富太郎先生は、日光の植物にも名前をつけたそうです。そのほか、らんまんエピソードなどもお話いただきました。


最後に、大正天皇がお好きだった高台で質疑応答がありました。

興味深かったのは、サルノコシカケがびっしり生えたブナの木について。
サルノコシカケがたくさん生えていることから、このブナの幹の中は腐ってほぼ空洞で、あとは枯れてゆくだけ。木の一生を終えるのだそうです。寂しいけれど、木々も生きているのです。

サルノコシカケがびっしり生えたブナの木


ガイドツアーが終わったあとも、世界の植物の調査の現状や、遺伝子検査のことなど、先生のお話をたくさん聞くことができ、とても有意義な時間を過ごすことができました。

日光植物園にはいつもたくさんの発見と学びがあります。
何度でも訪れたい、大好きな場所です。

利用案内

開園期間 4月1日〜11月30日
休園日 月曜
(月曜が祝日の場合はその翌日、月曜から連休の場合は最後の祝日の翌日が休園日)
開園時間 午前9時〜午後4時30分
(但し入園は午後4時まで)
所在地
〒321-1435 栃木県日光市花石町1842
電話0288-54-0206
FAX0288-54-3178

入園料(1人につき)
個人大人(高校生以上)500円/年間利用料 2,500円
小人(中学生、小学生)150円


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