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【日記】スーツケースと散歩する 2024.03.14

 とても長いこと使っているスーツケースを、修理に出そうと思い至ったのは昨日のこと。正確に言うとずっと修理に出したいとは思っていて、よし、と行動に移せたのが単純に昨日のことだった。なんとなく、ホワイトデー前にきれいにしてあげたいな、という気持ちがあったのかも知れない。そういうことなので、雨の上がった昨日のこと、スーツケースをがらがら引っ張って修理へ持っていくことにした。

 スーツケースの寿命は(ものによるけど) だいたい5年、という所らしい。それを考えると、このスーツケースは寿命の5倍くらいは頑張っている。ちょっと頑張らせすぎではないかな、と思ってもいるのだけれど、幸いなことに大きな破損もなく今日まで至っているものだから、何回も何回も悩んで、もうちょっと一緒にいてもらうことにした。そういう修理希望なのである。車輪を交換してもらいたいと思っていたので。

 世の中にはたくさんのスーツケースがある。もっとおしゃれなのも、かわいいのも、軽いのも、たくさんある。でも中学生だった私のところに、荷物をいっぱい詰めても自分でちゃんと持ち歩ける重さで、当時の飛行機の機内持ち込みができるギリギリのサイズで(今はちょっとサイズオーバーなのではないかな?)

 持ち手とキャリーバーの作りがしっかりしていて、二輪ではなく四輪で……なんて、ぎゅうぎゅうに詰め込んだ条件をクリアして迎えられて、それから外国も国内も、陸も空も海も一緒に行ったスーツケースなんで、この一個だけなので。寿命とかそういうものには諦めてもらうことにしたのだった。

 わたしと旅行に行ったことがあるひとは、もう確実に見たことがあると思う。このスーツケース。いつもお土産をぎゅうぎゅうに詰め込まれて家まで帰ってくるこのこは、実家から出てくる時には数日分の着替えと、だいじなぬいぐるみをひとつだけ抱えて新幹線でことことと移動してくれた。スーツケースをもって電車で移動していると、いつもそんなことを思い出す。一緒にサハラ砂漠を横断したり、古代の遺跡をかけぬけたり、転覆しそうに荒れる船で転がったりもしたね。盛ってないよ……。

 そろそろ付喪神とかになりかけてないかな……。スーツケース界のなかでもわりと波乱万丈な方じゃない……? 名前とかいる……? 緑色だから「みどりちゃん」ってたまに呼んでるんだけど、希望があったら夢枕に立つとかしてちゃんと教えてね……???

 じっくり見ても傷んではいるけど、決定的に布地が破けたり、ほつれたり、壊れたりはしてないな。うん、と思いながら車輪の交換をお願いします、と受付で差し出した所、車輪の大きさや形状などを図った受付のひとが、しみじみと困った顔で「これなんで交換するの?」と言ってきた。なんで とは????

 聞けば、そこそこ傷んではいるものの、交換を要す程ではないらしい。緊急性はまったくないし、壊れそうでもない。全然大丈夫。交換するとね、新品になるから綺麗にはなるよ、とあれこれ説明してもらって、とても長く使っているので、ということも聞いてもらったあと、結局そのまま引き返すことにした。ながく大事にしたいから交換してもらいたかっただけであって、ちょっと音がするものの、車輪の傷はいろんなトコに行ったからだし、それならばいいかな、と思ったのだった。

 すっきりしたような、拍子抜けしたような気分で、空のスーツケースをがらがら引っ張って道を歩く。観光地だから全然目立たない。それはいいんだけど、と思わずスーツケースを見つめると、なんだか誇らしげな感じがしてちょっと笑ってしまった。古くても、丈夫で立派で元気です。ふんす。としている。それじゃあもうちょっとよろしくね。もうちょっとがダメになって、壊れちゃったら、修理に出すからよろしくね。今日は一緒にお散歩して帰ろっか。なんかかさばるもの買ったりしようかな~、特に思い浮かばないな~、という気持ちで連れて帰ってきました。

 そんな日記でした! この修理も、数年なんとなく思い続けてできなかったことなので、結果はどうあれとてもスッキリした……(笑) またどこか旅行に行きたいな。


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