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SSCコネタ『寝るのも仕事のひとつです』

 
 五月の末日。よく晴れた休日は、年に一度の『部活棟大掃除の日』である。明文化されている訳ではなく、日が決まっている訳でもないのだが、なんとなくそういうことになっている。それというのも、夏至の日が近いからである。夏至の日。『魔術師』たちの特別な日。新しい仲間を迎える祝祭の日。それを前にして、まあ身の回りと普段使う所と、案内するような場所は一度片付けておこっか、という意識が、なんとなく全体に伝播した結果、暗黙の了解として『部活棟大掃除の日』ということになったのだ。
 とはいえ、各人の得手不得手というものがある。掃除をするつもりがひっくりかえして悪化させる天才、というのもこの世界には存在しているので、全員の強制参加行事ではなし、なにより、頼み込まれて不参加を決め込む者も中にはいるのだった。今期の筆頭はソキである。ソキは別に、整理整頓ができない訳でも、掃除ができない訳でもないのだが、多人数が時には大荷物を持って慌ただしく動き回る場に、一緒にしておくには危険が伴う。そう判断されての不参加である。
 当然、ソキはむくれた。ソキにだってできるぅソキもおそうじするぅ、ソキもせんぱいになるんですからぁここはソキがきれいにしたんですよぉってするんですうぅういやんいやんやんやんやんやんロゼアちゃぁあああんっ、といつもの渾身の訴えをしたのだが。いつの間にか、それじゃあソキはアスルをぎゅっとしてお昼寝をする係しような、ということで決着がついていたのだった。ソキには同意した記憶が、あるようなないようなふわふわした感じであったのだが、周囲がこぞって視線をそらしつつ、同意してたよ、と言ったので、そういうことになっている。
 かくして。本日の茶会部は臨時休業に近い状態で、ぷうぷぅと、平和な寝息だけが響き渡り。廊下を行き交う者たちが戸口からそっと覗き込んでは、ほっとしたように笑う癒しを提供しているのだった。



・描写だけ書きたいなー、とふと思ったので。

・片思いの意味を問いたくなる異世界学園・世界存亡FT【セカンド・サイトのこどもたち】 SecondSightChildren 略称SSC


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