あたたかいあめのあとは
不思議なことに「不思議」と言えなくなってどれほど経つのだろう
説明するはおとなたち
したり顔でならべます
ならべた途端、あら不思議
不思議は不思議でなくなるの
雨はなぜ冷たいのか、温かい雨は降らないのか
幼いころ父にしつこく尋ねたことがあった
父は頑として温かい雨は降らないと答えた
もし降ったとしたら?と食い下がったけれど
もしもでも降らない、と半ば苛立ちながら父は譲らなかった
きっと知らないだけなのね
実は温かい雨は降るんだよ
温かい雨のあとは
ミミズがぐんぐん育つんだ
温かい雨のあとは
ハチミツ甘くなるんだよ
温かい雨のあとは
猫がお腹をこわすのさ
温かい雨のあとは
砂漠でラクダが死ぬらしい
もうこどもに戻れないことが分かる
限りない不思議を言いくるめようとする傲慢さを身にまとってから
世界はつまらくなった
シーラカンスやあい
きみは本当に海の底にいるのかい?
きみが五千万年前から泳いでいたって
おとなたちは言うけれど
本当にきみはいるのかい?
もし本当にいるのなら
今度ぼくの家でビールでも飲もう
温かい雨について
きみの意見が聞きたいんだ
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