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企業価値評価

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株式投資などで馴染み深い企業価値評価やファンダメンタルズ分析に関する歴史や実践的な技法を振り返り、企業の本源的価値に関する洞察を深める。ミクロ経済学、金融経済学、会計学の学際領域…
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#note

企業の「本源的価値」を巡る三大革命(1)

企業の本源的価値とは何か。我々はそこにあると信じた価値を、いかに「発見」し、「形作って」きたのか。今日の投資・経営実務でなじみ深い数々の分析手法が編み出されてきた歴史を紐解くことで、我々の企業「価値観」がいかに形成されてきたのかを探訪したい。 革命前夜:その価値は、砂上の楼閣か?今日「ファンダメンタルズ投資」として知られる企業価値評価法の最も根本的な思想は、上記のようなものだろう。これ自体は株式に限らず広い意味での資産価値評価に通ずる伝統的な価値観ではあるものの、この思想に

企業の「本源的価値」を巡る三大革命(2)

前回のあらすじ 企業に本源的価値という「絶対的な真実」は存在するかー。歴史上初めて株式の本源的価値の公式を明らかにしたWilliamsは「株式価値とは企業が将来生み出す配当の期待値を、投資家の期待収益率によって割り引いた現在価値である」と主張した。それにより配当の源泉となる損益会計が、企業価値評価に決定的意味を持つに至ったが、それは同時に、歴史的文脈や作成者の意図と本質的に不可分な会計によって映し出される企業価値もまた絶対的ではなく「相対的な真実」だということを意味していた。

企業の「本源的価値」を巡る三大革命(3)

前回のあらすじ 配当割引モデル(DDM)をベースとしつつ、会計の人間的・総合的側面を重視したフロー型アプローチで企業の「相対的な真実」を描き出すそれまでの企業「価値観」に対し、20世紀に急速に発展したファイナンス理論が描こうとした価値観は、科学的・客観的側面を重視したストック型アプローチに基づく公正価値評価という「絶対的な真実」であった。会計の恣意性を排除しDDMの根底を揺さぶるファイナンス理論は、非現実的な仮定がもたらす脆弱性を抱えており、論争は混迷を極める。企業の「本源的

残余利益モデルの理論と実務

残余利益モデル(RIM)による企業価値評価の考え方は、強固な理論的バックグラウンドと数々の実務的な優位性を兼ね備えており、近年理論・実務の両面から注目が集まっている。今回はこれらRIMの優位性を概観し、更なる発展的モデルを理解する上での基礎固めを行う。前回はこちら。 RIMの理論的含意前回、配当割引モデル(DDM)にクリーン・サープラス関係(CSR)を適用することで、残余利益モデル(RIM)を導出した。残余利益は、資本$${b_t}$$から生み出されるべき利益(=$${rb

企業価値評価:Ohlson[1995]モデル(1)

前回は残余利益モデル(RIM)の理論的バックグラウンドと実務的な優位性についてまとめた。今回と次回でOhlson[1995]が導いたRIMの発展的なモデルを取り上げ、MM命題との関係、更にOhlson[1995]モデルが想定する経済学的な世界観や企業「価値観」に対する理解を深める。前回はこちら。 残余利益モデル(RIM)は、1961年にEdgar EdwardsとPhilip Bellによって提案されたが、発表された1960年代では、まだ会計に資本コストの概念を持ち込むには

企業価値評価:Ohlson[1995]モデル(2)

前回は残余利益モデル(RIM)に線形情報ダイナミクス(LID)を仮定したOhlson[1995]モデルを導出し、MM命題との整合性やDCFモデルとの等価性を議論した。今回は前回議論しきれなかったNPVが正となる投資機会の存在が株価に与える影響、またOhlson[1995]モデルの中核となるLIDの経済的意味について議論する。前回はこちら。 NPV>0の投資機会の存在前回導出したOhlson[1995]モデル、 において仮定されていた、線形情報ダイナミクス(LID)、 と

企業価値評価:Ohlson[2001]モデル

前回まで議論したOhlson[1995]モデルは、理想的な仮定の下で形成される理論株価として重要な経済的含意を多く有する一方、特定の難しい「その他の情報」を含むという課題も抱えていた。今回は、「その他の情報」に具体的な意味を与え、モデルの実務的な完成度を高めたOhlson[2001]モデルを導出し、その経済的含意を議論する。前回はこちら。 Ohlson[2001]モデルOhlson[1995]モデルは、配当割引モデル(DDM)にクリーン・サープラス関係(CSR)と線形情報ダ

企業価値評価:Feltham-Ohlson[1995]モデル

前回は、Ohlson[1995]モデルに付随する「その他の情報」の観測不能問題を解消し、実務的な完成度を高めたOhlson[2001]モデルについて議論した。今回は、Ohlson[1995]モデルの別の発展モデルであるFeltham-Ohlson[1995]モデルを取り上げる。このモデルは企業活動を営業活動と財務活動に分類する点が特徴的だが、そのような問題提起の背景に触れ、Feltham-Ohlson[1995]モデルを導出し、背後の仮定に関する理解を深める。前回はこちら。

企業価値評価:Ohlson[1999]モデル

ここまでOhlson[1995]モデル及びその様々な派生形を学んできたが、今回はこの企業価値評価モデルを組織の経済学に応用し、残余利益連動型の報酬制度の採用に一定の示唆を与えるOhlson[1999]モデルを導入する。本モデルにより、なぜ残余利益が会計利益と比較して経営努力をより良く反映し、業績評価のメルクマールとなり得るかが示される。前回はこちら。 Ohlson[1995]モデルは、投資家による企業価値評価に焦点を当て、会計数値が企業価値にどのように関連するのかを分析する

企業価値評価:Biddle[2001]モデル

前回までのOhlson[1995/2001/1999]モデルやFeltham-Ohlson[1995]モデルでは、残余利益の推移に線形の自己回帰モデルが仮定されていた。今回議論するBiddle[2001]モデルでは、企業の投資決定メカニズムを残余利益の減少過程に導入することで、合理的な企業行動によって残余利益の推移が非線形に変化するケースを扱う。前回はこちら。 Biddle[2001]は、投資プロジェクトが株主資本残余利益率$${\dfrac{x_t^a}{b_{t-1}}

Zero-sum equalityと企業価値評価モデル(1)

前回までは、残余利益モデル(RIM)をベースにしたOhlson[1995]モデルとその種々の発展モデルに関する議論を重ねてきた。今回は、RIMで前提とされてきたクリーン・サープラス関係(CSR)を必ずしも仮定しない形での種々の株式価値評価モデルを取り扱う。前回はこちら。 Zero-sum equality$${y_t}$$が確率変数である時、すなわち$${\{y_t \}_{t=0}^∞}$$が確率過程である時、かつ時間$${t}$$が進むにつれて情報が増大していく時、繰り

Zero-sum equalityと企業価値評価モデル(2)

結論から示せば、今回議論する4つのモデルの位置付けは、下記図の黄色ハイライトに相当する。 今回は、前回に続きZero-sum equalityから導かれる種々のモデル、特にAEGに時系列的仮定やCSRを導入したモデルについて議論する。前回はこちら。 Ohlson and Juettner-Nauroth[2005]モデルAEGモデル式は、2期先以降の将来異常利益成長$${\tilde {AEG}_{t+\tau}(\tau ≥2)}$$が毎期一定成長(成長率:$${g}$