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企業価値評価

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株式投資などで馴染み深い企業価値評価やファンダメンタルズ分析に関する歴史や実践的な技法を振り返り、企業の本源的価値に関する洞察を深める。ミクロ経済学、金融経済学、会計学の学際領域…
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2023年10月の記事一覧

残余利益モデルの理論と実務

残余利益モデル(RIM)による企業価値評価の考え方は、強固な理論的バックグラウンドと数々の実務的な優位性を兼ね備えており、近年理論・実務の両面から注目が集まっている。今回はこれらRIMの優位性を概観し、更なる発展的モデルを理解する上での基礎固めを行う。前回はこちら。 RIMの理論的含意前回、配当割引モデル(DDM)にクリーン・サープラス関係(CSR)を適用することで、残余利益モデル(RIM)を導出した。残余利益は、資本$${b_t}$$から生み出されるべき利益(=$${rb

企業価値評価:Ohlson[1995]モデル(1)

前回は残余利益モデル(RIM)の理論的バックグラウンドと実務的な優位性についてまとめた。今回と次回でOhlson[1995]が導いたRIMの発展的なモデルを取り上げ、MM命題との関係、更にOhlson[1995]モデルが想定する経済学的な世界観や企業「価値観」に対する理解を深める。前回はこちら。 残余利益モデル(RIM)は、1961年にEdgar EdwardsとPhilip Bellによって提案されたが、発表された1960年代では、まだ会計に資本コストの概念を持ち込むには

企業価値評価:Ohlson[1995]モデル(2)

前回は残余利益モデル(RIM)に線形情報ダイナミクス(LID)を仮定したOhlson[1995]モデルを導出し、MM命題との整合性やDCFモデルとの等価性を議論した。今回は前回議論しきれなかったNPVが正となる投資機会の存在が株価に与える影響、またOhlson[1995]モデルの中核となるLIDの経済的意味について議論する。前回はこちら。 NPV>0の投資機会の存在前回導出したOhlson[1995]モデル、 において仮定されていた、線形情報ダイナミクス(LID)、 と

企業価値評価:Ohlson[2001]モデル

前回まで議論したOhlson[1995]モデルは、理想的な仮定の下で形成される理論株価として重要な経済的含意を多く有する一方、特定の難しい「その他の情報」を含むという課題も抱えていた。今回は、「その他の情報」に具体的な意味を与え、モデルの実務的な完成度を高めたOhlson[2001]モデルを導出し、その経済的含意を議論する。前回はこちら。 Ohlson[2001]モデルOhlson[1995]モデルは、配当割引モデル(DDM)にクリーン・サープラス関係(CSR)と線形情報ダ

企業価値評価:Feltham-Ohlson[1995]モデル

前回は、Ohlson[1995]モデルに付随する「その他の情報」の観測不能問題を解消し、実務的な完成度を高めたOhlson[2001]モデルについて議論した。今回は、Ohlson[1995]モデルの別の発展モデルであるFeltham-Ohlson[1995]モデルを取り上げる。このモデルは企業活動を営業活動と財務活動に分類する点が特徴的だが、そのような問題提起の背景に触れ、Feltham-Ohlson[1995]モデルを導出し、背後の仮定に関する理解を深める。前回はこちら。

企業価値評価:Ohlson[1999]モデル

ここまでOhlson[1995]モデル及びその様々な派生形を学んできたが、今回はこの企業価値評価モデルを組織の経済学に応用し、残余利益連動型の報酬制度の採用に一定の示唆を与えるOhlson[1999]モデルを導入する。本モデルにより、なぜ残余利益が会計利益と比較して経営努力をより良く反映し、業績評価のメルクマールとなり得るかが示される。前回はこちら。 Ohlson[1995]モデルは、投資家による企業価値評価に焦点を当て、会計数値が企業価値にどのように関連するのかを分析する

企業価値評価:Biddle[2001]モデル

前回までのOhlson[1995/2001/1999]モデルやFeltham-Ohlson[1995]モデルでは、残余利益の推移に線形の自己回帰モデルが仮定されていた。今回議論するBiddle[2001]モデルでは、企業の投資決定メカニズムを残余利益の減少過程に導入することで、合理的な企業行動によって残余利益の推移が非線形に変化するケースを扱う。前回はこちら。 Biddle[2001]は、投資プロジェクトが株主資本残余利益率$${\dfrac{x_t^a}{b_{t-1}}