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がんピアサポーターがグリーフケア

先日、ピアサポーターのフォローアップセミナーを受講する機会があった。
メインテーマは、グリーフケアについてであった。

昨年1月の最終週末、突然、母が他界したこともあり、私にとっては大変身近な
テーマであった。

どのような亡くなり方であれ、残された家族や親族の悲嘆は、誰にでも生じる正常な反応であり、時間の経過と共に受容されていくのが通常である。

しかし、この悲嘆反応が長期間に及ぶ場合、悲嘆からのリカバリーを支援するグリーフケアの意義はとても重要になることは、実体験を通して痛感している。

2018年の厚生労働省による第3期がん対策推進計画では、医療機関、医療従事者にがん患者の家族、遺族に対するグリーフケアの充実を求めている。

第3期がん対策推進基本計画JPEG


それでは、グリーフケアにあたり、ピアサポート活動をする非専門家のピアサポーターには何ができるのであろうか。

ピアサポーターには具体的な支援体制が確立されていない現状を踏まえ、本講習を通してグリーフケアにおけるピアサポーターの課題やピアサポーターの在り方を探っていきたい。

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数年前のある日のピア相談室を思い出した。
父親をがんで亡くしたお嬢さんがやってきた。
父親が生前、二人でサロンに度々参加していたという。
彼女は、サロンでお世話になった人たちへの感謝の意や父親を看取ったことの達成感を伝えるために来訪したのであろうと傾聴しているのも束の間、彼女の目には涙が溢れ出し、デスク横にあるティッシュボックスを差し出した。

その時、我々ピアサポーターは、父親を亡くしたことによる傷心、また、これまで父親に寄り添い過ごしてきた毎日の喪失と落胆を察した。

今回のセミナーで、遺族が「語ること」の効果には、
1)孤立感の軽減、
2)考える力が生まれ、
3)自分の内にある力に気づき、コントロール感を持ち直すことにつながる、
ということを学んだ。

彼女にこれらが芽生えたのであれば、彼女によりよい支援ができたのではないか、と今さらではあるが振り返った。

かつてピアであった彼女は、看取りに関する将来への不安や様々な心配ごと、父親がスムーズな療養生活を営むためのヒントなどを参加者やスタッフ達と共感、共有できることを期待してサロンに参加していたのだろう。

遺族となった彼女がわざわざピア相談室を来訪したのは、彼女がサロンでスタッフであるピアサポーターと温かみのある良好な関係を構築していたからだ、と推測した。

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一方で、グリーフケアはピアサポートとは領域が異なるので、遺族の話を傾聴するよりも先に、然るべきグリーフケアを扱うサポートセンター等を案内するべきではないか、と考えるピアサポーターも存在する。

しかし、今後、ピア相談やサロンを経験したかつてのピア、すなわち、遺族が、グリーフケアを求めてピア相談に訪れるケースも少なくないと予測する。

このようなケースを鑑み、自らの活動経験を加味して本講習で学んだことからピアサポート活動におけるグリーフケアの課題を4点示したい。

① 現時点で、ピアサポート活動においてグリーフケアの位置づけが確立されていない
② グリーフケアを行うピアサポーターへのサポート体制が充実していない
③ 遺族となったピアの死別後についての傾聴はピアサポーターには負担が大きい
④ 双方で良好な関係が構築されていたとしても個人情報保護によりグリーフケアには限界がある

セミナー資料に遺族の「聴き役」として選ばれたことは光栄である、とある。

言い換えれば、ピアサポーターとしての大きな誇りである。

ピアサポーターが死別後の物語りを傾聴することで遺族は悲嘆が和らぎ、遺族の新たな生活や人生の一歩を後押しする一助になることを考慮すると、ピアサポーターという非専門家ならではのグリーフケアも自負したいものだ。

グリーフケアは誰が施すにせよ、全人的理解が可能な感性が求められていることを念頭におき、今回抽出された課題をピアサポーターと共に学びや議論を重ねながら今後の活動に活かしていきたい。

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