― 第二十六話 もどき ―
博士「うん、(プッ)できた。」
助手「ちょっと博士!屁こかないでくださいよっ!寒いから窓全部閉めてんすよっ!」
博士「うむ。まぁ、できた。」
助手「まったく・・・。で、何が出来たんすか?」
博士「これじゃ。これが『もどき』じゃ。」
助手「は?」
博士「『もどき』じゃ。」
助手「・・・あの、・・・『がんもどき』、みたいな?」
博士「・・・・・・・・ふふっ。」
助手「うっすら笑わないでくださいよ。気持ち悪いな。」
博士「まぁ、説明してやろう。あのな、世の中にはよく『~もどき』っていうものがあるな?例えば、魚じゃ。よく、雌雄が入れ替わる魚がおるじゃろう?あれなんぞも『メス(オス)もどき』、じゃな。あと、よくブランド品の名前なんか使って売られてるバッグなどあるであろう?『バッタモノ』などと呼ばれてな。あれなんかも立派な『もどき』の仲間と言えるな。これはそういったものだな。」
助手「はぁ・・・。じゃ、それ、博士の持ってるものは何『もどき』なんすか?」
博士「これはな、『チャーハンもどき』だな。」
助手「う~ん・・・。まったくチャーハンに見えないっすけど・・・。」
博士「であろうよ、であろうよ。だから‟もど”けるのじゃ。では、これも見せてやろう!」
助手「うーん・・・。それはまた、なんというか・・・。クラゲっぽいっつぅか・・・。」
博士「おぉ!当たりじゃ!!これはな『ヌルヌルもどき』じゃ。」
助手「それって、もう、名詞ですらないじゃないっすか?」
博士「そう、五感すべてが‟もど”ける!」
助手「そういったもんっすかね。」
博士「これはちょっとキタナいが、『フンもどき』じゃ。」
助手「うわっ!くさっ!」
博士「わははははっ!どうだっ!すごいであろう!五感に響く!」
助手「っていうか、これ、本物じゃないっすか?!」
博士「何を言うかっ!本物だったら‟もど”けんではないか!」
助手「いや、知らねぇっすけど、これはちょっと・・・」
博士「わはははっ!ひくほど‟もど”いてしまったか!わはははっ!」
助手「・・・俺、もう帰るっすね。」
博士「ちょっとまてぇいっ!今見せたものはあくまでもワシの研究の一部じゃ。苦節四十年!紆余曲折の果て、ワシのたどり着いた一つの結論!これが究極の‟もどき”じゃっ!」
助手「いや、マジいいっすけど・・・。」
博士「これじゃっ!‟もどき”‟もどき”っ!」
助手「はぁ?ただのタワシじゃないっすか。」
博士「ははははぁっ!そうであろう、そうであろう!これはな、一度タワシを‟もど”して、さらに‟もど”したのじゃっ!」
助手「・・・・。」
博士「ふはははっ!すごいじゃろっ!このワシのかけとるメガネも実は‟もどき”‟もどき”なんじゃぞっ!ふはははは!」
助手「あー、すごいっすね。じゃ、お先っす。」
博士「おい、ちょ、ちょっと待て・・・。あぁ、行ってしまったわい。まったく近頃の‟バカモノ”は・・・。これは世界を変える発明じゃぞぉっ!!!・・・あ、‟フンもどき”触っちゃった・・・。」
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