夏が縋ってくる

令和5年 8月31日

 夏の終わりが近づいている。そろそろ秋の虫たちが自慢の音色を響かせ始める時期になるだろう。この晩夏という寂寥に満ちた時期は嫌いだ。あまりにもあちらとこちらが近いから、連れ去られてしまいそうな気がする。
 まあ実際何かが見えた経験があるとかではないのだが、なにか見えざるものが俺を呼んでいる気がしてしまう。季節独特の雰囲気がそう思わせているだけだろうが、とにかく昔から苦手なのだ。

 小さいころ、夏休みなどの長期休暇で祖父母の家に行くと、必ずホームシックを起こしていた。どんな時でも俺を認めてくれる祖父のことは大好きだったけれど、なんとなくここに居てはいけない気がして恐ろしくなってしまうのだ。考える力がまだ未発達だから、感情の処理と理由の探究ができず、夜に訳もわからないまま涙を流してしまうこともあった。

 そうした経験から、夏の終わりのこの時期が余計に苦手になった自覚はある(学校と塾の課題が多すぎて終わらない絶望の方が一因としてよほど大きかったが)。
 明日からは9月。このメンタルお亡くなり期間も終わっていることだろう。…おそらくは。
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?