ピーターラビット

令和5年 6月9日

 午前4時に目が覚めた。眠れないので脳に散らばる思考の記録をとる。

 お気に入りの毛布がある。20年以上人生を共にしている、ボロボロにくたびれた相棒だ。名前はピロピロタオル(母命名)。
 幼児の頃から指の間に蛇腹にものを挟む癖があって(母はこれをピロピロと呼んでいる)、それは現在でも変わらないのだが、この毛布でピロピロをすると格別に心地がいい。
 なぜこの毛布だけが特別なのかはわからない。中央にピーターラビットの刺繍が入っただけの、なんの変哲もないもの。これがないと眠れないということもなく(過眠ということもあるが)、ただめちゃくちゃお気に入りだ。

 これは愛着補正なのだろうか。しかし指の間に挟んだ時の感触は、何年経っても、縫製がほつれても最高なのだ。俺が死んだ後なにかを一緒に墓にいれるなら、絶対にこのピロピロタオルにしてほしい。
 ここまで強烈な愛着があるものは他にない。というか、ものや人への執着/愛着が基本的に薄いためにピロピロタオルとぬいぐるみ以外のものはわりとなくても、生きていける気がする。

 ピロピロタオルの同列にぬいぐるみを挙げたが、彼らは俺の人生に欠かせないものだ。ぬいぐるみはいつでも物言わずそばに居てくれて、母の怒りや父に受けた理不尽を癒してくれる。
 ポケモンや動物、クソデカいサメ。大好きなクロミちゃん。気に入ったゲームのキャラクターたち。ぬいぐるみそれぞれに個性や性格があり、誰にも愛されない俺の唯一揺らがないお友達でいてくれるのだ。

 愛着障害というものがあることを、自立支援に通っている頃に学んだ。
 俺は両親にもらえなかったものを、ピロピロタオルやぬいぐるみを通して取り返そうとしているのかもしれない。この歳で愛にすがるのは惨めで悲しいことだが、救われたいという願いは確かにあって、その願いが強い時ほどピロピロをすると安心する。もうお前が居ないと生きていけないよ、ピーターラビット。

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