君に似ている

令和5年 8月5日

 あぶくの割れる音がする。虹色が溢れて、青に溶けていく。
 世界は澄み渡るほど冷たくて、どこまでも透明。注ぐ光が揺れる。風がみなもを撫でていた。

 欲しいのは、これじゃないのだ。
 望んだのは、これじゃないのだ。
 選んだのは、これじゃないのだ。
 貝殻の中でだれかの言い訳が反響している。1万マイル先の港町の、誰かの子守唄と一緒に。

 目を瞑る。
 落ちていく。
 浮かんでいく。

 わからない。
 わからないのだ、君よ。どうして触れられないの?いい子にしているから、どうか……どうか。

 あぶくが昇る。虹色を包みながら。青にはすっかりノイズがかかって、物言わぬ電子機器になってしまった。

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